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パリのクリスマス Posted on 2017/12/24 辻 仁成 作家 パリ

 
クリスマスのこの時期、シャンゼリゼ大通りなどパリの中心部はさすがにゴージャスなライティングや飾りつけで目にも美しい光景が広がっています。
ところがパリ市内の住宅地はどちらかというと地味な感じ。
フランス人はカトリックを信仰する方々が多いので、彼らにとってのクリスマスは、なんていうのかな、日本でいう正月のような感じに似ていますね。
 

パリのクリスマス

 
この感覚に慣れるまでに何年かかかりました。
ああ、日本とは違う。クリスマスというものはもっと厳かなものなんだな、とある日、気が付いたのです。
商業主義のクリスマスじゃなく、小生はこのカトリック的なフランスの静かなクリスマスが好きです。
 

パリのクリスマス

 
小生が暮らすカルチエ(地区)はこの時期、本当に静かで、バカ騒ぎをする人なんていません。
25日はしーんと静まりかえります。そう、この日は家族で過ごす日。
個人主義の確立したフランスですが、クリスマスには家族が集まり、みんなで静かに家で過ごすのです。
日本の正月三が日に似ているというか、ここを過ぎるとすべてが次の新しい1年へと移行していく気もします。
もちろん、31日から1日に変わる瞬間は全世界共通、花火があがり盛大に新年を祝います。しかし、驚くことに2日からは会社も役所も通常営業。
 

パリのクリスマス

 
小生の家の近くの建物を覗いてみましょう。
各建物の管理人さんらが工夫をして、玄関入ってすぐのところにクリスマスツリーを飾るのですが、これ、日本の門松みたいな感じがしてなりません。
どこの建物も12月初旬から、そうですね、遅いところでは、1月半頃までツリーを飾っています。
12月になると、フランス門松の季節がまた来たな、と小生なんかはクスクスしちゃうのです。
日本の門松は年神を家にお招きするための寄り台という意味合いがあるようですね。
じゃあ、クリスマスツリーにはどのような意味があるのでしょう。
 

パリのクリスマス

 
クリスマスツリーは8世紀にドイツで始まったと言われていますが、クリスマスツリーの飾り(オーナメント)の由来をご存知ですか?
ベルは、キリストの生誕を知らせた鐘であり、魔物を寄せ付けないという意味があります。
頂上の星(トップスター)はベツレヘムの星、希望の星という意味。星のかわりに天使が飾られることもありますね。
ヒイラギの葉はキリストがかぶったいばらの冠、そして赤い実はキリストの血です。
靴下はサンタクロースに繋がり、杖の恰好をしたキャンディは、羊飼いの杖なのだそうです。迷った羊をあのくるっと曲がった握るところで引っかけて連れ戻すためのもの。人間は羊なんですね。小生はひ弱な辻、ひ辻ですかね(笑)。
もみの木は針葉樹で冬でも葉を落とさないことから永遠の命を象徴しているのだそうです。そこに、家族みんなの平和を込めたのでしょう。
 

パリのクリスマス

 
これは小生の母が異国で生きる小生と息子のために作ってくれたオーナメントです。
この季節になると地下室からこれを持ってあがり、サロンに飾るのが2人の大切な仕事となっております。
クリスチャンではありませんが、周囲が静かに祈って過ごしているわけですし、フランスで生きる者として、小さなツリーに母親の願いを飾って1年に感謝をしています。
 

パリのクリスマス

 
もちろん、小生らはちゃんと正月も祝います。
クリスマスでフランス式に1年に感謝をし、元旦は日本式に新しい1年を祝っているのです。

我が家のサロンの飾りつけはこんな感じです。中心にキリストの生誕の舞台となった馬小屋をイメージした額縁があり、クリスマスに、光りに包まれたキリストが生まれるという演出を毎年やります。なかなか、ドラマチックですよ。
1月6日になると、東方の三博士がここに加わるのです。今、彼らは家のあちこちを移動中でして、息子がその担当。三博士は今日現在、まだソファベッドの沙漠で星を見上げたりしております。
 

パリのクリスマス

パリのクリスマス

メリークリスマス! 世界が平和でありますように。