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坂道の都市、リスボンPosted on 2017/01/08  Posted by 辻 仁成

ポルトガルのこと何かご存じでしょうか? 
1543年に種子島にポルトガル商人が漂着しましたね、そう、歴史で学んだ「鉄砲伝来」です(笑)。
日本には数多くのポルトガル語が今も根付いています。
ちょっとご紹介しますと、ビスケット、ブランコ、カルタ、ボタン、カステラ、コンペイトー、テンプラ、パン、
といろいろあります。しかし、この程度の知識しかポルトガルについて私たちは知りません。

実は私も今回がはじめてのポルトガルだったのです。
リスボン周辺しか今回はいけませんでしたが、しかし、答えから申しますと、たぶん、これまで訪れたどの欧州の街よりも素敵でした。とくに坂道の街、リスボンは本当に美しい街で、老後はここで暮らしたいと思ったほどです。

坂道の都市、リスボン

坂道の都市、リスボン

パリでもよく見かけるようになりましたが、市内にはトゥクトゥクが走り回っています。まずポルトガルを知るためにこれに乗って手っ取り早く市内観光を・・・。女性のドライバーで美人でしたから即決定。
息子に、何ニヤニヤしてんの、と足を蹴飛ばされてしまいましたけれど。

でも、観光だけでは行けないような庶民的な路地なんかも案内してくれましたし、1時間という約束なのに2時間近くリスボン観光をやってくれたのです。
マリアという名前でした。ポルトガルでもっとも有名な女性の名前なんだとか。
息子がいなければもっと楽しかったのですけど、仕方ありませんね(笑)。

坂道の都市、リスボン

坂道の都市、リスボン

リスボンには7つの丘があります。
その狭い石畳の坂道を車とトゥクトゥクと路面電車(トラム)が行き交います。そうだ、ケーブルカーも。
なかなかダイナミックでまるで映画のような迫力。
そして目まぐるしく景色が変わります。
丘の上に登ったかと思うと、川沿いの低地の路地をくねくねと蛇行するのです。

マリアが2か所、見晴らしのいい丘に連れて行ってくれました。
まずはもっとも高い場所に位置する、セニョーラ・ド・モンテ展望台です。リスボンの絶景が広がります。

息子は走り回り、マリアは運転席で煙草を吸っていました。

坂道の都市、リスボン

坂道の都市、リスボン

次に連れて行かれたのが、ちょうどその対面に位置するサン・ペドロ・デ・アルカンタラ展望台です。
こちらはとってもムーディな大人の雰囲気のある場所でした。
サクソフォン奏者が演奏をし、人々はベンチに座って夕陽を眺めていたのです。

マリアは運転席でニコニコ微笑みながら煙草を吸っていました。
私は煙草を吸わないので、少し離れたところからリスボンの景色を眺めていたのです。

坂道の都市、リスボン

坂道の都市、リスボン

可愛らしい建物、壁のタイル張りがなんともポルトガル。
歩道もほとんどが石畳で、どこも手作業による改修工事が続けられています。
愛すべきリスボン、本当に大好きになりました。

誰もが詩人になり、誰もが映画俳優になることのできる街・・・。

坂道の都市、リスボン

日が暮れる頃にマリアがホテルまで私と息子を送ってくれたのです。これは料金に関係なく、と言ってくれました。
もちろん、私はちょっと多めのチップを渡しましたが、受け取ろうとしません。
1時間の約束を2時間も費やしてくれたのに。
ま、いいんじゃないの、と息子が呟き、さっさとホテルの中へと入っていきました。

欧州最西端の都市にロマンティックな夕陽が沈んでいきます。

運転席でマリアは煙草を吸っていました。ポルトガルの人は煙草が好きなようです。
そういえば、タバコもポルトガル語でしたね。
1本すすめられましたが、すいません、と冗談を言っておきましたよ、日本語で。
肩を竦めて言ったので通じたようです。マリアとのいい思い出だけ持って帰ることにいたします。
もう一度、近々、必ず訪れたいリスボンでした。いいえ、マリアに会うためじゃなく・・・(笑)。

Photography by Hitonari Tsuji