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人生は後始末 「涙の理由」 Posted on 2017/03/11 辻 仁成 作家 パリ

人間は泣いて生まれてきます。赤ん坊は一日中泣いています。
子供は叱られると大泣きします。
そして、成長するに従いだんだん泣かなくなります。
大人になると滅多に泣きません。泣きたくても泣けなくなるのです。
 

人生は後始末 「涙の理由」

お涙頂戴映画はだから流行るのです。
「思い切って泣きたいあなたに」こういう宣伝文をよく目にします。
大人は映画館でしか泣けないの? 何故なんでしょう?
泣いたっていいじゃないか、と思うのだけど泣きません。いちいち泣いていたらきりがないからです。
泣きたい時には歯を食いしばれ、と先輩に言われました。それが大人の世界なのです。
号泣する政治家が少し前に話題になりましたね。
あの人の涙はちょっと信用できない(笑)。

赤ん坊は泣いて訴えているのです。
おなかすいた、とか、機嫌が悪い、とか、かまって、とか。泣くことを恥ずかしがりません。
大人が泣くのはその名残り。
恋人にふられたら泣きます。訴えているんです。
親しい人が死んだら泣きます。訴えているんです。
悔しい思いをしたら泣きます。訴えているんです。
泣くことは悪いことじゃありませんよ。
第一、泣いた子はすぐに笑います。
泣いて心を浄化して、気持ちを入れ替えるからです。
流す涙で心を洗っている。
 

人生は後始末 「涙の理由」

泣きなさい、笑いなさい、という歌がありますね。
辛い時は、泣けばいいんです。我慢する必要なんかないですよ。
涙を流しましょう。
人間は涙を流すことが出来る動物です。
きっと神様が気を使い過ぎる人間のために考えてくれた特技。
涙がしょっぱいのは海の味です。
だから、海に行って、ばかやろう、と泣きながら叫ぶ。
ああ、すっきりした、と泣きやんだ後、鼻をすするわけです。
そして、ふっと笑います。
あんな奴のこと、忘れてしまえ。さようなら、ありがとう、と自分を肯定できる。
涙のおかげなんですね。

涙がしょっぱいのは人生の味だから。
流した涙を舐めてみてください、海の遺伝子の名残りです。
大人になって、何回泣きました? 号泣したことありますか?
たまには思い切って憚ることなく泣いてくださいよ。
そんなに頑張る必要なんかないんです。
男だから泣かない、とか言わないで。みんな一生に何度か号泣しましょう。
血の通った人間であることを思い出せます。
こういう社会ですけど、あなたは生きています。
 

人生は後始末 「涙の理由」

小生は泣きます。
でも、息子の前では泣きません。
だって、パパが泣いたら、息子がびっくりするから。
泣きたい時は息子が学校に行っている間に泣きます。
息子が帰ってきたら、笑顔で、おかえり、と言います。
パパだからね(笑)。
でも、最期は笑って死にたいなぁ。
 

人生は後始末 「涙の理由」

今日の後始末。

「人間、泣いて生まれて、笑って死ねれば本望です。」