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人生は後始末「道を拓き続ける6人組が描いた東京の青写真」 Posted on 2017/08/06 辻 仁成 作家 パリ

 
ECHOESの歌に「スクラップ&ビルド」という曲がある。
そのナンバーは80年代の中ごろに生まれた。
日本はバブル期ど真ん中、次々に古いビルが取り壊され、高層ビルに建て替えられていくような、
「壊しては作る」、まさにスクラップ&ビルド時代であった。
そして、時は流れ、東京は2020年オリンピック開催を前に再び、スクラップ&ビルドの状態となった。
思えば、1964年の東京オリンピック頃に、「壊しては作る」がはじまり、東京の拡大膨張が加速しはじめた。

そして、2020年の東京オリンピックへ向けて、
今東京は再び、壊しては作り替える時代へと再突入したのである。

このことに、アートの世界で常に面白い取り組みと投げかけをし続けてきた集団、Chim↑Pom(卯城竜太・林靖高・エリイ・岡田将孝・稲岡求・水野俊紀が、2005年に東京で結成したアーティスト集団)が反応を示した。
 

人生は後始末「道を拓き続ける6人組が描いた東京の青写真」

 
昨年、彼らは歌舞伎町の解体予定ビルに、若い人々の熱狂(ライブやパフォーマンスや興奮)を閉じ込め、そのエネルギーごと解体されてしまう宿命を結晶化させ、一つの作品として発表した。
解体が終わるまでの期間とすべての出来事が作品である。(「また明日も観てくれるかな? So see you again tomorrow, too?」2016年10月15日~2016年10月31日)

解体によって壊された作品の残骸を彼らは廃棄せず、高円寺の彼らのアトリエスペースに運び移し、今度はその廃材を使って、かつて存在していたかもしれない古い路地を再現させてしまったのが、現在高円寺で開催されている「道が拓ける」展である。
作って建て替えるだけではなく、彼らはそれを再生させることで、もう一度、歩んだ道を人々に咀嚼させるという、風変わりなアートを展示している。
 

人生は後始末「道を拓き続ける6人組が描いた東京の青写真」

 
そもそもこの芸術集団、ものとして残り続ける絵画や彫刻のような作品は少ない。
パフォーマンスに近い、次には消えてしまい残らないようなものばかりをアートとして提示してきた。
小生が出会った10年ほど前からその姿勢は変わらない。その熱量もかわらない。とっても稀有な日本を代表するアート集団である。

歌舞伎町と今回の高円寺の個展は、スクラップ&ビルドを繰り返してきた日本へ、オリンピック景気のどさくさの中で、「その青写真の描き方」は本当に正しかったのか、と問い質す批評精神に満ちている。
彼らは、東京電力福島第一原発事故による帰還困難区域内で、封鎖が解除されるまで「観に行くことができない」国際展「Don’t Follow the Wind」の発案とたちあげなども行っている。

解体された渋谷パルコの巨大なネオンも、PとCの部分だけ、そこで生きながらえ、展示されている。この抗うことのできない解体と建築という人類の時間運動への皮肉が、実に彼ららしい手法で作品の端々に散りばめられている。しかも、高円寺で!
 

人生は後始末「道を拓き続ける6人組が描いた東京の青写真」

 
「道が拓ける」展は歌舞伎町で行われた「また明日も観に来てくれるかな?」展の残骸たちで作品が再構成され、展示された。いわば、記憶を再構成するような面白い試みである。会場(作品)の一角の画面に、歌舞伎町で行われた解体作品の映像が黙々と映し出されている。あれを経験できなかったものたちへ、あれを再び提示することこそ、解体建築というお祭り騒ぎに対する、痛切なメッセージに思える。

オリンピック景気に沸く日本の中で、この集団が提示する東京のもう一つの青写真をこの期間にぜひ、ご体験いただきたい。(次週、この集団の紅一点、エリイへのインタビューを掲載予定)
 
 
今日の後始末。

「アートは未来を予言し、過去を記憶させる」
 
 

人生は後始末「道を拓き続ける6人組が描いた東京の青写真」

Sukurappu ando Birudo プロジェクト 道が拓ける 
会期:2017年7月29日(土)〜8月27日(日)*毎週水曜日休み
 営業時間:14:00〜20:00(道の通行は24時間解放) 
会場:キタコレビル 東京都杉並区高円寺北3-4-11 
料金:道の通行 無料、展覧会鑑賞 500円