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人生は後始末「もてなし」 Posted on 2017/08/10 辻 仁成 作家 パリ

 
家に招かれることがフランスではとっても光栄なことだったりします。
全部を見せてもいい関係というのか……。
招き招かれる関係によってフランス人は友情関係や親密度を確認し合っているようなところがあります。
逆を言うと、長いお付き合いをしていても招かれない場合もあるんです。

⚪︎⚪︎君の家に「アンビテ」されたんだ、と息子が嬉しそうにいいます。
招待されたということですね。
我が家もよく友人を招きますが、だいたい同じメンバーです。
確かに、誰でも彼でもとはなりません。
招かれるというのは真の仲間になったということでしょうか。
在仏歴30年の友人が「ぼくは、いまだフランス人から招かれたことがない」と嘆いておりました。
きっと、それは別の原因があるような……(笑)。
 

人生は後始末「もてなし」

 
ところで日本には「おもてなし」という日本ならではの言葉があります。
フランスにはこの「おもてなし」みたいな言葉はありません。
招き招かれ方がそもそも日本とはずいぶんと違う気がします。
びっくりするくらいどこの家もシンプルなのです。
まず、アペロ(アペリティフ)がやたら長い。
夕食(ア・ターブル)まで1時間半とか、へたすると2時間以上。
ひたすら、ワインと簡単なおつまみとトークで時間を潰します。
フランス人はおしゃべりが大好き。
テレビもほとんどが議論の番組です。
おつまみも家によって様々ですけど、ピーナッツとか、中国の米せんべいのようなもの。
なんとなく、それでお腹がいっぱいになるような感じです。

20時を過ぎると、「ア・ターブル!(食卓について!)」となりますが、サラダ、メイン、デザート、という感じで、量も多くはありません。
クスクスだったり、鶏の丸焼き(肉屋さんで売ってます)だったり、魚のグリル焼きだったり、どちらかというと簡単な料理ばかり。
美味しいですが、正直、日本人の感覚からすると、ご招待、からはちょっと遠い気も。
食後酒を飲んで、お別れになります。
あ、招かれたら、ワインを1本持っていきます。
時々、お菓子や、お花とかを添えて。

日本のお招きはこれでもかと心も時間も割いてくれるところが多いですね。
どちらかというと招かれた方も構える感じですが、フランスのお招きは実に質素で和気あいあい、気はつかいません。
彼らの家に入り、彼らが食べるものを一緒に食べることが重要なのでしょう。

ナポレオンの末裔の大金持ちさんの邸宅に招かれた時も全く一緒でした。
ピーナッツを頬張りながら、庭園を眺め、持参したワインを飲んだのです。
それでも、フランス人にとって「アンビテ」されるということは名誉なこと。
こちらが招く場合、ついつい頑張り過ぎてしまう日本人ですから、相手にはとっても喜ばれるのですけど、そういう気苦労はフランスでは必要ないということです。
むしろ、会話の方が大事なんでしょうね。
小生は日本人ですから、おもてなし、をやります。
招いた人に料理を褒められることが小生の愉しみなのですから・・・。
 

人生は後始末「もてなし」

 
今日の後始末。

「おもてなし、よりも、もてなし、くらいがちょうどよかったりして」