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人生は後始末「生きることが動機だ」 Posted on 2018/03/17 辻 仁成 作家 パリ

 
「辻さんはよく働くね、頑張るよね」と言われます。
小生、とくに何かがほしくてよく働いてるつもりはありません。
でも、なぜか周囲には「がむしゃらに仕事をこなす人」と思われている。
ただ、頑張る根本にはモチベーションがあります。
むしろ、小生はモチベーションの塊かもしれない。たしかにモチベーションだけはなくなったことがない。

モチベーションとは人が行動を起こす時の原因、つまり「動機」のこと。
意欲を持つことやそれを引き出すことを「動機づけ」と呼びます。
モチベーションが高い、という言い方をしますが、たぶん、小生の場合、仕事とか勉強で結果を出すためにつかう動機づけではなく、そもそも生きることそのものがモチベーションなのかもしれません。
もちろん、作品が評価されたい、とか、ヒット作になればいいなぁ、とか思うこともありますが、出世したいとか、金持ちになりたい、とか明確なイメージではなく、別に人に理解されなくても、無理して受けなくても構わない、
というのが根底にあったうえでの、それでも、やり尽くしたい、究めたい、というモチベーションです。

仮にですけど、この世が、戦争の時代で、独裁者がいて、思想統制されていても、
小生は地下に潜って創作を密かに続けていることでしょう。
誰も読みはしない、日の目を見ることもない小説を書き続けているはずです。
何度もそのことを自分に言い聞かせてきました。
地下活動をしてまでも、秘密警察に殺されるかもしれないと危険を感じながらも、
絶対、何かを創り続けてると思う。
ですから、依頼がなくてもこうやってどんどん書いています。笑。
ツイッターも、インスタも、ブログ「愛情路線」も、この「人生は後始末」も、ばんばん書いています。
原稿料を頂いて書く仕事に負けない勢いで書き続けている。
いや、ウェブマガジンの「デザインストーリーズ」自体、依頼されてやってることじゃありません。
直観で、これは中途半端にやってはならない、と気がつき、続けています。
一銭にもならないばかりか、デザインストーリーズに関しては毎月ひっくり返るような金額(製作費)が懐から飛び出していきます。
考えてみてください。海外取材費も、構築費も、交際費も、ありとあらゆる経費、スタッフの給料さえ、小生ひとりが払っているんですから。
底の抜けたバケツに水を入れるような勢いで……。
馬鹿でしょうか? 笑。

それでも自由に書ける場所や環境を持ちたいと思ってのめり込みました。
そうです。のめり込むことが小生らしさかもしれない。笑。
お金はあとからついてくる、と自分に言い聞かせてはいますが、息子の学費や生活費は必要です。老後の貯えも必要ですね。
どうする?
ですよね、う~む。
でも、それでも一生懸命続けていたら、ある日、ツイートを本にしませんか、と出版社から話が舞い込みました。そして、新書「立ち直る力」が出版されることになります。

でも、話を頭に戻しますけど、ヒット作を作りたくて書いてきたわけじゃない。
ただ、書きたい、伝えたい、というモチベーションだけでやってきた。これは純粋な動機力です。
モチベーションを持つということに「高いも低いもない」と小生は思っています。
「高いモチベーションを持て」と会社で教えられたからと言って、人はそう簡単にそれを行動には移せません。
むしろ、自分の内面の底にある、そこへ行ってみたいという意欲に忠実になる時、ほんとうのモチベーションが生まれるのではないでしょうか。

生きている限り人間には大なり小なりモチベーションがあります。
それは本来、上からの力や誰かの命令で、アップさせることのできるようなものじゃない。
小生は、生き切りたい、と思っています。自分に与えられた生に浸り、その一生を全うしたいと思っている。
そうこうしているうちに、デザインストーリーズから若いアーティストを応援する「新世代賞」が生まれました。
グッドアイデアだな、と思いついた時には興奮したものです。
それは素晴らしいことだってね。
この賞を続けたいから今はもう少し頑張っています。世界のどこかに同じような思いの若い人がいるならそれがどんな形であれ応援しなきゃ、と思いついた時の自分の素直なモチベーションに真摯であり続けたいと思っているから。
馬鹿でしょうか?
ええ、大バカ者かもしれませんが、それでいいと自分で納得しています。

人は納得するために頑張るんです。
それが生きることのモチベーションだからです。
いつかもっと大勢の同じ志の仲間が集まるはずです。
 

人生は後始末「生きることが動機だ」

 
今日の後始末。

「動機づけなんか必要ない。生きることが動機だ」