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人生は後始末「なぜなぜ父ちゃんのナポリタン」 Posted on 2018/04/08 辻 仁成 作家 パリ

 
息子が一番喜んでくれるのは手の込んだ料理よりもシンプルな家庭の味。ま、そうでしょうな。老若男女問わず、日本人はカレーライスやチャーハン、ハンバーグなど家庭の味が大好きですからね。小生の家庭料理の中でも、手っ取り早く作ることができて、もっとも息子受けするのが、ナポリタンです。今日はナポリタンに関する考察。

そもそも、ナポリで「ナポリタン」といえばピザですからね。ナポリに行って、「ナポリタンください」というと笑われます。確かに、トマトソースをかけたスパゲッティはナポリが発祥。17世紀くらいでしょうか。ナポリ人はトマトソースをパスタにかけて食べ始めました。他所の土地の人たちがそれを「ナポリ風」と呼んだわけです。フランスあたりに渡ってトマトソースをかけるパスタがスパゲッティ・ア・ラ・ナポリテーヌとなるんですね。でも、現在のナポリタンとは違いますな。時が流れ、戦後、進駐軍がトマトケチャップでパスタを作っていたのを日本人のシェフがこれじゃつまらんと生トマトとトマトペーストを使って編み出したのが日本におけるナポリタンの起源とされていますね。7割がた茹でたパスタを5時間放置することでもっちりとした食感を作っていたのだとか、やるな日本人。
 

人生は後始末「なぜなぜ父ちゃんのナポリタン」

 
蘊蓄はさておき、小生は5時間も放置はしません。なぜなら、辻家のナポリタンは今すぐ食べたい息子の胃袋を速攻で大満足させる使命があるからです。麺は太めの麺が合うと思いますが、今日はフェデリーニを使います。単に茹で時間が短くてすむから。うちは3分45秒ジャストで茹でます。芯が奥の方に感じられるバリ硬状態すね。お湯はたっぷりめ、塩をかなりぶっこみます。

あ、その前に、材料を揃えましょ。もちろん、和製ナポリタンには、玉ねぎは欠かせない。ハム、ソーセージ(もしくはシーチキン)、ピーマン、マッシュルーム、パルメジャーノ粉チーズは最低必要です。トマトがあれば生トマトを入れることもあります。フライパンにオイルをひいて潰したニンニクと種を抜いた唐辛子を放り込み低温で香りをじっくり移したら火力をあげカットした野菜を放り込んでザザっと炒めます。うちは隠し味でここに昆布茶をひと匙もしくはふた匙振りかけます。ふふふ。

さて、ここで一度塩胡椒をしたらトマトペーストを加えて、待機。麺が茹であがったらここに加え、白ワイン、ゆで汁(欠かせません)、を和えます。最後にケチャップと濃厚めのソース(ソースはちょっとね)とバター、あ、粉チーズも少々加えてください。食感が膨らみます。そして隠し味に醤油を絡め、完成です。

あえてそれぞれの量は書いておりませんが、お好きな量で。バターはちょっと多めです。お好みで塩胡椒、タバスコで味を調えてください。そして食べる時に粉チーズを上からふりかけてくださいね。ここまでの所要時間は手慣れてくれば5分から10分で出来ますよ。時間の余裕がある時は太めの麺の方が断然美味しいかと思います。
 

人生は後始末「なぜなぜ父ちゃんのナポリタン」

 
なぜ、ハムとソーセージ? 

ハムで肉味感をもたらせ、ソーセージは子供の舌先を喜ばせるために、です。今日はシーチキンしかなかったから、ソーセージの代わりにシーチキンを入れました。風味が変わるからどっちもおすすめです。


なぜ生トマトじゃないの? 

それは単に簡単にするためです。トマトペーストがあればケチャップで十分。醤油が食べやすい味わいをもたらせます。生トマトでソースを作ると時間がとってもかかるからです。


なんで茹で汁?

茹で汁を最後にいれることでもちっとした触感が出ますし、お蕎麦と一緒でとろみがでてうまいです。実は茹で汁を入れることが「乳化」(水と油を混ぜ合わせてくれること)を促します。でんぷんは高温になるとトロミが出るんです。しかも茹で汁にはうまみ成分も若干入っています。必ず茹で汁を入れることをお勧めします。残ったパスタの茹で汁で野菜を茹でるとさらに美味しくなりますよ。


なんでバター? 

バターはぐわ~っと口腔に風味を広げます。札幌塩コーンラーメンにはバターじゃないですか? 茹でたじゃがいもにもバターですよね? 子供受けします。


な、なんで昆布茶? 

ブイヨンとか出汁をいれるより手軽だし、ちょっと海感が加わるでしょ。とろみも出るし。うちは、昆布茶は飲むためじゃなく、料理に使うためにつねにキッチンに業務用が配備されています。チャーハンとか、各種スパゲティとか、なんでも多様できるので、やってみてください。

ということで今日は困った時のエクスプレス・ナポリタンについてお話をしました。家庭の味は家庭それぞれで工夫して作られたらいいと思います。パスタをいれてから最後に味付けでもいいですし、なんでもありです。自由に楽しく美味しい生活を楽しみましょう。
ナポリターン、ボナペティ。
 

人生は後始末「なぜなぜ父ちゃんのナポリタン」

 
今日の後始末。

個人的に好きなナポリタンは、京都「イノダコーヒ」(コーヒーじゃなく正式名称はコーヒらしい)で出ているイタリアンという名前のナポリタンです(笑)。素朴で美味しかった。ああいう、喫茶店の味ね、ナポリタンの神髄です。