PANORAMA STORIES

ブエノス・アイレスからの手紙 Posted on 2018/08/03 田中 彩子 ソプラノ歌手 ウィーン

ヨーロッパ、日本は猛暑のようですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
私は今、冬真っ最中、ちょうど日本の反対側にあるブエノス・アイレスに来ています。

先日、ウィーン・コンツェルトハウスで行われた国際青少年音楽フェスティバルの閉会式で歌わせて頂きました。
このフェスティバルのために世界中から集まった青少年オーケストラや合唱団。皆さんものすごい熱気でした。
私の歳の半分にも満たないほどの子供たちが演奏する音楽。荒々しくも魂のこもった音、演奏するのが好きという情熱__。とても心が震えました。

子供たちの奏でる音から感じられるキラキラした魂のパワー。それは、エネルギーに溢れ、テクニックの枠を越え、音楽の力・音楽が本来あるべき姿をイメージさせるような、初心に帰るような、シンプルに心に響く演奏でした。
私も子供たちを見習い、いくつになってもキラキラ、ワクワクするような音楽を奏でられるよう、そして、子供たちに何かを感じてもらえるような音楽家でありたいと改めて思いました。
 

ブエノス・アイレスからの手紙

ブエノス・アイレスからの手紙

しかし、その余韻に浸る時間もなく、その翌日からコンサートツアーのためブエノス・アイレスへ。

ウィーンと東京間は9,122km, ウィーンとブエノス・アイレス間は11.803kmです。
地球一周は40,075kmらしいのですが、そう考えると、この夏は空を旅する人になったよう。地球一周の旅に出たようで少しロマンを感じます。
飛行機から見える空は海とが混じり合うように広くどこまでも続き、夜になると空と宇宙の境目がわからない深い空間。
そんな風景を見るたび、本当に自分はちっぽけな存在だなぁとつくづく思います。

さて、南米のパリといわれているブエノス・アイレス、実は音楽の都でもあります。
ヨーロッパ、主にイタリア移民がほとんどを占めるこの街は、建物や人、クラシック音楽の文化や歴史までとてもヨーロッパに似た雰囲気の街なのです。
ヨーロッパは通常夏の時期になると音楽の世界もオフシーズンになるのですが、南半球にあるブエノス・アイレスは冬なので音楽シーズン真っ最中。
なので、ヨーロッパが夏になると音楽家たちはブエノスアイレスへ演奏旅行に、というのが昔からの伝統となっています。
そんな伝統に則り、夏になるとウィーンにいる私もブエノス・アイレスからお声がけをいただき、演奏旅行に出かけるようになりました。今年で、もう4回目になります。
 

ブエノス・アイレスからの手紙

昨年はフランスで人気の作曲家、エステバン・ベンセクリ氏が私の声にインスピレーションを受けて作曲した『コロラトゥーラ・ソプラノとオーケストラのためのサークルソング』をナショナル・シンフォニーオーケストラと初演し、昨年度のベスト初演賞を受賞することができました。

今年は日本とアルゼンチンの国交120周年を記念するコンサートやオペラ出演、また、アルゼンチン政府が支援する、エル・システマと同様のプログラムで作られた国立青少年オーケストラとの共演のためにきています。
エル・システマとは、虐待と犯罪に溺れてしまう極度に貧しい環境にいる子供たちに、音楽教育を施すことにより新しい道を与え救うためのものとしてベネズエラで確立し、今世界中の貧困層の子供たちに新しい希望を与えています。
貧困層から這い上がってできあがったこの国立青少年オーケストラは、通常では考えられないような生活環境の中から、たったひとつの音楽という希望を見いだし、舞台に立っている間は日々を忘れ、貧富の差がなくなることを願いながら一緒に音楽を演奏する。
きっと見ている側も勇気の出るこの力強い瞬間を、ぜひ同じ年代の日本の青少年にもいつか見ていただけたら、きっと何か感じるものがあるのではないかと思っています。

アルゼンチンは地球の反対側に位置するだけのことがあり、月や星が普段見慣れている空とは反対向きになっていて、太陽の動きも少し異なります。月が鏡写しのように逆から満ちていくのを見るのはとても神秘的。
そして北半球では通常見えない、南十字星。地球の偉大さを実感します。
 

ブエノス・アイレスからの手紙

8月は南米のパリからヨーロッパのパリへ、
ルーブル美術館敷地内にてフランスにおけるジャポニスム2018の公式イベントとして、そして、パリ市と京都市の友好60周年を記念しての展覧会にて、リサイタルコンサートをさせていただきます。辻仁成氏が主宰するこのデザインストーリーズが縁でこのイベントに参加させて頂けること、また、日本・アルゼンチン国交120周年だけでなく、日本・フランス国交160周年に関われる事、大変光栄に思います。

冬が終わりに近づき春に向かう最中のブエノスアイレス。
反対に北半球は夏真っ最中、どうぞ皆さま夏バテにお気をつけて、健やかな夏をお過ごしください。

そして、災害でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、 被災者の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。 被災地におかれましては、一日も早い復旧と皆さまのご無事をお祈り申し上げます。
 

ブエノス・アイレスからの手紙

〜 田中彩子 ツアー情報 〜

2018年8月22日 
デザインストーリーズ協力企画
会場:パリ ルーヴル美術館敷地内カルーゼル・ド・ルーヴル「SHIP’S CAT]展内 
開演:15:00
無料

2018年9月1日
会場 : 国立ブエノスアイレス大学
国立青少年オーケストラとのコンサート 

2018年9月2日 
会場 : CCKコンサートホール 大ホール
国立青少年オーケストラとのコンサート 


日本リサイタルツアー2018 “愛しのコロラトゥーラ”

2018年9月30日
開場 13:30 開演 14:00
会場:三重県川越町あいあいホール(三重)
お問い合わせ:三重県川越町あいあいホール(平日 9:00 〜 17:00)Tel:059-364-2500

2018年10月3日
開場18:30 開演19:00
会場:京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ
https://www.kyotoconcerthall.org/ticket/

2018年10月9日
開場18:30 開演19:00
会場:札幌コンサートホールKitara小ホール
http://www.officeone.co.jp/

2018年10月7日
開場 17:30 開演15:00
会場:印西市文化ホール(千葉県印西市)
お問い合わせ:印西市文化ホールTel:0476-42-8811

2018年10月11日 ※完売しました
開場18:30 開演19:00
会場:紀尾井ホール(東京)

2018年10月17日 ※追加公演
開場18:30 開演19:00
会場:紀尾井ホール(東京)


詳細はこちら→ホームページをご覧ください
 
 

Posted by 田中 彩子

田中 彩子

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Ayako Tanaka
ソプラノ歌手。京都府出身。10代から単身ウィーンにて声楽を学ぶ。22歳でスイス・ベルン歌劇場で日本人初、且つ最年少での歌劇場ソリストデビューをして以来、コンツェルトハウス(ウィーン)、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(ロンドン)、ナショナルシンフォニー交響楽団(ブエノス・アイレス)等コンサート・ソリストとして欧州を拠点に活動中。
毎日放送『情熱大陸』出演。デビューアルバム『華麗なるコロラトゥーラ』(エイベックス・クラシックス)、フォトエッセイ『Coloratura』(小学館)発売中。