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「英語学校で大号泣!?」英語が苦手な中年パパの 西オーストラリア専業主夫日記 Posted on 2017/03/10 佐藤 カナメ 主夫 オーストラリア・パース

オーストラリアのパース在住、英語の苦手な専業主夫は、今英語学校へ通っている。

「英語ができれば可能性が広がる♡」からではなく「英語できないので、色々な可能性が低く世界が狭い・・・」という状況で、毎日が息苦しくていけない。兎にも角にも、英語の勉強をしなくては・・・
14歳と11歳になった息子たちは、わずか3年の間にすっかり英語の問題はなくなった。日々、子供たちを応援している間に、父はすっかり取り残された。
 

「英語学校で大号泣!?」英語が苦手な中年パパの 西オーストラリア専業主夫日記

さて、英語学校。
もともとオーストラリアは留学生に広く門戸を開いているし、大きな産業でもある。
ここパースにもいくつも英語学校がある。シティの便利な場所にあり、短期語学留学に人気の学校や、ビーチのすぐそばにあり「ビーチと英語で最高の夏を!」みたいな楽しそうな? 学校もある。
もちろん、パースにある名門大学で学ぶ準備のためのアカデミックな英語学校もいくつかある。でも、英語のできない専業主夫が通うには、どれも心のハードルが高い。

You can do it! え〜でも〜
 

「英語学校で大号泣!?」英語が苦手な中年パパの 西オーストラリア専業主夫日記

と悩んでいたら、私の通える英語学校がありました。
シティでもなく、ビーチでもない、郊外の街にポツンとある専門学校の一角に、英語を母語としない人のための(当たり前か)英語学校がありました。
オーストラリアの新学期は2月。指定された教室を恐る恐る覗くと・・・ドヨ~ン・・・なんだなんだ。
あーこれ知ってる・・・教室は家族の世話と日常生活に疲れた者が醸し出す、あの独特の空気で満たされていた。
教室には世界各国から集まった、どんよりした女性たちと、おじさん数名が散らばって座っていた。

まさに、私もジャストフィット!

授業が始まり、各国なまりの英語で自己紹介を始めると、やはり多くが専業主婦で、みんな少しでも英語スキルをあげて、子育てをしつつ仕事につきたい、と考えているようだった。
 

「英語学校で大号泣!?」英語が苦手な中年パパの 西オーストラリア専業主夫日記

クラスメイトの出身国をできる限り思い出してみると、エジプト、セルビア、イタリア、中国、タイ、ベトナム、南スーダン、インド、イラン、日本(もちろん私一人)で20名ほど、それから主任の先生がイラン出身で、南アフリカから移民した先生と、生まれも育ちもオーストラリア! という先生たちが何人か。

英語学校の先生たちはすこぶる親切で、各国の事情にも詳しいし、英語ができないで英語圏に生きる苦しさをよく理解しているので、本当にいつも励ましてくれる。彼らが、勉強の合間に話してくれる、一歩踏み込んだオーストラリアの文化、物事の進め方などは、知っているだけで安心できることがたくさんある。
こんな時は、さっきまで眠そうにしていたクラスメイトたちの顔が輝く。世界中からやってくる移民を、当たり前のように迎え入れながらサポートし、共に生きていこうとする姿勢は、このクラスにも満ちている。
 

「英語学校で大号泣!?」英語が苦手な中年パパの 西オーストラリア専業主夫日記

さて、授業も3週目。
各自決められたテーマに沿ってプレゼンテーションをする、という課題が出された。
テーマは「私について」。My Life だの My Story と題して簡単なパワーポイントを作成し、クラスの前で発表する。説明の最後に、主任のイラン出身の先生から注意があった。
「いいですか皆さん。とてもプライベートなことや、辛かったこと、言いたく無いことは入れないで下さね、くれぐれもお願いします」随分と念を押して言うので、何でかな? と思ったものの、すぐに忘れてしまった。
そしてその理由が、プレゼンテーションの当日にわかった。その日発表を担当する数人がプロジェクターの前に立って順に話しを始めた。

まず1人目、エジプト出身、小さな娘2人でいつもみんなを笑わせるクラスのムードメイカー「・・・それで、父と母と離れてオーストラリアに来ることになって・・・う、うぅっ(嗚咽でしばらく中断)」何度もプレゼンテーションを見ている先生は、こうなることを知っていたのだ・・・

2人目、いつも真面目なベトナムから来たお母さん「・・・でも、子供ができて高校を辞めなければいけなくなって・・・それから、それから・・・(号泣で中断/高校生になったその美しい娘さんの写真を見ながらクラス全員でもらい泣き)」先生からは、お互いのプレゼンテーションについて書くようにチェックシートを渡されているが、涙で翳んで紙が見えない、書けないよ!!
 

「英語学校で大号泣!?」英語が苦手な中年パパの 西オーストラリア専業主夫日記

この日の最後は、南スーダンからきた2人目妊娠中のお母さん。まだ若く、いつも笑顔で先生にも冗談ばかり言っている。だからプレゼンテーションが始まるときはクラス全員が油断していた。

「私は村で産まれました。家で生まれました。大家族で、お父さんには奥さんが3人います(全員突然前のめり)私は4人姉弟の一番上です/酷い戦争が続きました。酷いことをたくさん見ました。私は15歳で結婚しましたが、相手が酷く殴るので逃げました。その後、また結婚してケニアへ行った後、オーストラリアへ来ることになりました。」短い時間の中で次々と語られる彼女の話を聞きながら、プロジェクターに映し出された My Story という文字が突然重く感じる。

「今は、これから生まれてくる赤ちゃんと家族4人幸せです」

よかった・・・
と思ったのも束の間、自分のプレゼンを終えて余裕が出てきたエジプトのお母さんから質問が。

「でもさぁ、いまの旦那さんがもう1人奥さん貰うって言ったらどうするの?」

「それは・・・もしそうする余裕が彼にあるのなら、それを決めるのは彼なので私には何もいえません」

「えーーー!!!(世界各国語と変な英語の大合唱)」

この後はびっくりするほど活発かつ深い議論が交わされ、あっという間に授業終了。
あれ、今みんな何語しゃべってた?
 

「英語学校で大号泣!?」英語が苦手な中年パパの 西オーストラリア専業主夫日記

Posted by 佐藤 カナメ

佐藤 カナメ

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Kaname Sato
主夫。プロダクションに籍を置き、テレビ番組をひたすら作り続けて20余年。2013年に退職。2014年に家族とともにオーストラリアへ渡る。妻、息子2人の4人家族。現在は妻が日本で働きながら日豪を往復。本人は英語に四苦八苦しながら、子供の世話に追われる毎日。