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フランスで出産「マイペースなフランス、そして出産」 Posted on 2018/03/13 尾崎 景都 日本語教師 パリ

「助産師講習は妊娠8ヶ月が過ぎてからで十分よ」

と、婦人科の先生に言われていたので、言われた通りにのんびり構えていたら、全ての受講が終わる頃には、臨月をとうに過ぎていた。

フランスの出産事情は、日本と比べると良くも悪くも色々と緩い。日本では妊娠が発覚した時点で、妊娠から産後まで、中にはお宮参りやお食い初めなどのイベントまで含めた流れをまとめた表を渡されるらしい。フランスにはそんな親切なものはなく、基本は本人任せ。もたもたしていると、しなくてはならない手続きの期限が迫っていたりした。

妊娠7ヶ月を過ぎた頃、担当医師に「今準備しておくこと、大事なことはないか」と訊ねたら、ストレスを溜めないことだと言われた。バカンスシーズンだし、どこかでのんびりしたら? とニコニコ。更に次の検診で「バカンスに出かけることにしたのですが、注意することはありますか」と訊くと「ゆっくりすること。それで大体は大丈夫だから」と返された。
注意点も何もなく拍子抜けだったが、思えばそのお陰で、本当に気楽に過ごすことができた。フランスの緩さは、私の肌に合っていた。

さらに、予定日が近付くと検診頻度が上がる日本と違い、フランスは問題がなければ最後まで月一回の検診のみ。そんな調子で、臨月を迎えてもマイペースな日々を送っていた__。
 

フランスで出産「マイペースなフランス、そして出産」

予定日の2週間前、私の出産は破水から始まった。病院へ連絡し、その日のうちに入院、翌日までには出産ということになった。
しかしその後も陣痛が起こらず、陣痛促進剤を投与。すると陣痛は起きたのだが赤ちゃんがなかなか下におりて来ず、結局緊急帝王切開になった。当初の予定にはなく、急に「帝王切開しかありません」と言われたので、かなり動揺した。ショックと不安で泣き出してしまった私に、担当医師は「その涙は、数十分後には嬉し涙に変わっていますよ」と優しい笑顔を見せた。
そのロマンチックな言い草が、いかにもフランス人という感じがして、こんな状況なのにおかしくなってしまった。
 

フランスで出産「マイペースなフランス、そして出産」

フランスで出産「マイペースなフランス、そして出産」

フランスで出産、土壇場でのトラブルはあったものの、我が子は無事産まれた。

元気な女の子。夫も私も出産を終えたことで、一仕事終わったような、脱力した気分になったが、私たちはまだ子育てのスタート地点に立ったに過ぎない。

フランス人カップルは共働きが圧倒的に多く、育児は女性が、という考えも、もう古い。いわゆる「イクメン」が、フランスでは普通のこと。仕事、育児、家事に対して、夫婦が平等の権利を主張するのが当たり前になっている。ベビーカーをひいたり、子供を公園で遊ばせている父親の姿は、街中の自然な風景だ。
 

フランスで出産「マイペースなフランス、そして出産」

また、夫婦2人きりの時間も積極的に取る。子供を蔑ろにしているわけではもちろんなく、夫婦の愛情をより深め、むしろそれが家庭円満に繋がるのではないだろうかと思う。

フランスの多くの父親と同じように、「子育ては両親が協力し合ってするもの!」と頼もしいことを言ってくれた夫に期待を寄せ、これからは、妊娠生活よりももっと大変であろう「フランスで育児」生活が始まる。
 

フランスで出産「マイペースなフランス、そして出産」

 
 

Posted by 尾崎 景都

尾崎 景都

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Keito Ozaki
パリ第7大学 言語音声学科 修士課程修了後、日本語教師として活動中。夫は料理人。