PANORAMA STORIES

フィンランドの片田舎にある鄙びたレストランが面白い。 Posted on 2017/07/28 ヒルトゥネン 久美子 通訳、プロジェクト・コーディネーター フィンランド・ヘルシンキ

ヘルシンキから約370km、お城のオペラで有名な町、サボリンナのまだ先の田舎にとっても鄙びたレストランを見つけました。

アキ・カウリスマキの映画に出てきそうな、殺風景な外観のレストランは営業していることが信じられないような奇妙な存在感です。
お客さんを迎えるサービス精神は外の様子からは感じられません。ですが、駐車場には数台の車が止まっています…。ということは、お客さんは入っているらしいのです。
 

フィンランドの片田舎にある鄙びたレストランが面白い。

「なんだか、怖〜い(笑)」そしてドキドキワクワクしながら、入り口を入ると、やっぱり誰も出てきません(笑)。そしてどうやら2階は宿泊施設になっているらしいです。 
またかつて使われていた備え付けの電話が取り外されたまま、放って置かれている棚がなんとなくレトロ感を強調して、ここまでくると不安な気持ちより「楽しい〜」気分の方が勝ってしまいます。
 



フィンランドの片田舎にある鄙びたレストランが面白い。

誰もいない入り口、廊下、バーだったらしいところを通り抜け、レストランのフロアーにたどり着くと、白いシャツに黒いスカートをゆるゆるに着たおばさん二人がシャイな笑顔で迎えてくれました。

「やっぱりやっていたんだ!」

おばさん達は化粧っ気もなく、ドサドサとフロアーを行ったり来たり、一生懸命働いています。私は一気に合格点と花マルを山のようにあげたい気分になっていました。
ここは食堂兼ダンスフロアーだったのかしら。ただ、フロアーにテーブルが整然と並べられ、端がめくれてしまった紙のテーブルクロスの上には可愛い花が飾られています。どことなく懐かしい感じがします。昔々の昭和な感じです。
 

フィンランドの片田舎にある鄙びたレストランが面白い。

食器もグラスも全く普通、何の取り柄もありません。そして料理も、いたって普通。でもその普通さはいつの時代も変わらず、昔からの伝統をそのまま受け継いでいるような味でした。

なんだろう……。この嬉しい気持ちは。
洒落っ気は全くないですが…。でも…。そう! こういう場所が欲しかったんです。

今話題の店、フロアーや厨房で細心の注意を払い、最高を提供するプロの店ではなく、誰もが気を緩めて、ホッと一息のリラックスタイムを過ごせる場所。
そんなお食事処を求めていたのかもしれません。
 

フィンランドの片田舎にある鄙びたレストランが面白い。

夏はふら〜っとドライブに出かける機会が多いです。
そんな時、通りすがりのフィンランド版お茶処やお食事処に立ち寄るのが好きです。
その土地柄に触れ、そこに暮らす人々の会話をチラッと聞き探ったりするのも楽しいのです。

昔からの “そのまま” が残っている場所は今の時代、とっても貴重です。
より優れた最高のサービスを求める今日ですが、他との比較や競争はオリジナル性を逆に手放すことにもなりえるかもしれません。

いつも同じな “そのまま” と、いたって普通な環境が与えてくれる安心感と喜びをもっと生活のあちこちに見つけたいなと思う今日この頃です。
 

フィンランドの片田舎にある鄙びたレストランが面白い。

 



Posted by ヒルトゥネン 久美子

ヒルトゥネン 久美子

▷記事一覧

通訳、プロジェクト・コーディネーター。KH Japan Management Oy 代表。教育と福祉を中心に日本・フィンランド間の交流、研究プロジェクトを多数担当。フィンランドに暮らしていると兎に角、色々考えさせられます。現在の関心事はMy Type of Lifeをどう生きるか、そしてどう人生を終えたいか。この事を日本の皆さんと楽しく、真面目に、一緒に考えていきたいです。