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「日本とちょっと違う。パリジェンヌのイメージ」 Posted on 2023/05/05 エベルソルト 真理 日仏翻訳・フランス語講師 パリ

日本のファッション雑誌でよく特集される「パリジェンヌ」まるでモデルさんのように描かれていますが、実は、かなり質素で、堅実的で、普通なのである。
でも、その普通がかっこいい。
今日は、日本人が思うパリジェンヌの本当の姿を、パリジェンヌである当の本人が、分析してみたい。
題して、「こんなに違う。パリジェンヌのイメージ」

パリで生まれ育ち、当たり前のように大学に進み社会に出たので「筋金入りのパリジェンヌだね」と言われても否定できないしずっとしっくりこなかった。そんな小さな差別は今までプライドが勝って無視していたけれど、最近そんな自分のアイデンティティの一部であるパリと向き合う様にしている。日常の人間観察と友達を研究材料にしてパリジェンヌを見つめてみた。
 



「日本とちょっと違う。パリジェンヌのイメージ」

お化粧よりも基礎化粧

ファンデーションをベタリと塗るパリジェンヌはなかなかいない。うっすらとお化粧はするがせいぜいアイライン、マスカラ、口紅とチークに収める。フランス人なだけに八方美人に見られるわけにはいかないし、バッチリメイクはお肌が荒れる。けれどもパリのような公害の多い街で肌ストレスはやはり無視できない。素の姿をごまかしたくない彼女が見つけた解決策はパリのあちこちにある。そう、悩める彼女の宝庫の一つはビオショップ。有機の野菜や果物、デトックスのハーブティーや補いきれない栄養はサプリで足しにする。家の棚は自然食品や自然コスメに埋もれている。ビオ業界はパリジェンヌにきっと頭が上がらないはず。
この段階でまず言えるのは、日常生活の向上や運動に挑みながら自然の美しさを追求するパリジェンヌは実に合理主義。
 

ハイヒールよりもローヒール

ハイヒールの代表者とローヒールの代表者のパリでの実績を比較すれば一目瞭然。前者は一時的に売上が向上したが一瞬で流行りは過ぎ、最終的には後者が順調に右肩上がり。それもそのはず。合理的なパリジェンヌは一日中履いていて足が痛くなるハイヒールなどは普段履かない。動きやすいローヒールを好む。そして時間が許す限りよく歩き、メトロでエスカレーターは使わないものだからなおさら便利。この段階で言えるのは、パリジェンヌは機能性のある美しいものを好む。
 



「日本とちょっと違う。パリジェンヌのイメージ」

ワンポイントファッション

オフィスでは中性的な服装を心がけるのでレディースシャツに細身のパンツが一般的。さっぱりした女らしさを出したいそんな彼女はワンポイントでおしゃれをする。スカーフ、アクセサリーやバッグで個性を掴む。彼女が「パリジェンヌ」なのはそんなファッションのプラスアルファが街であふれているから。街角のアンティークショップや週末のブロカント。そんな時はたまにハイヒールでも履こうかな、と休暇を楽しむ。
 

星付きレストランよりも近所のビストロ

ほとんどのパリジェンヌは仕事をしながら主婦も務める。朝から晩まで自分の時間がない分、誰かが作ってくれる食事に飢えている。しかし合理的な彼女の解決策はお家の近くにある。移動の時間も無駄に高い食のお金ももったいない彼女は近場で済ませる。緊張する高級レストランよりも近所にある馴染みのビストロが理想的な休息の時間。「シェフ元気?」で始まるちょっとした世間話に続く簡単なおかずに癒される。
日々の緊張をカジュアルな外食でほぐす女性こそパリの住人。
 



「日本とちょっと違う。パリジェンヌのイメージ」

自意識過剰? ただの意地っ張り?

パリジェンヌは高飛車、強い、と口を揃えて言う人が多いけどちょっと違う気がする。独立精神の強い彼女は目まぐるしい日常でなんとか生きている。
そう、働くパリジェンヌの一日は慌ただしく始まる。自分と子供の身支度、学校まで送ったら満員電車でやっと出勤する。出世は男性に比べて倍の労力と時間が必要だし、給料は割安。母でも妻でもなく自分として活躍したい仕事場は戦場のよう。けれども一日が終わってホット一息つくまではもうひと頑張り。修羅場な帰り道が彼女を迎える。最近になってやっと問題視されるようになったが、街中で受けるセクハラまがいの行為は日常茶飯事。だからといって彼女は負けない。明日も綺麗でいたいから。
パリジェンヌは基本的に臆病なところがある。人生がいつどうなるか分からないそんな神経質な部分がある。だからこそ防御線を作り素直さに欠けてしまっているのかもしれない。気を張ってしか生きられない彼女はプライベートな時間に切り替えるのに不器用。甘えてワガママを言って発散してしまう。大事で大好きなあの人に。「ごめんね」と言えば済むのに自分の意地に負けてしまいそれがまた悔しい。悪循環だと分かるまで成長しようと戒める。
 

メトロは読書の時間

路線図を読まずにどこへでも行けるパリジェンヌは実は移動の時間が嫌いではない。大好きな読書をする。最近、そんなパリジェンヌの姿を撮った写真家がいる。18区でエクスポもあった。
ここで注目するべき点は、わずかでせわしい時間も好きな時間に変えてしまうパリジェンヌの器用さ。
 



まとめれば

パリにいる女性がパリジェンヌなのは、日々の環境がパリだから。生活習慣が容姿に滲み出ていて、その要素がパリで手に入りやすいからかもしれない。パリにはパリの刻印を押す威力があって、パリジェンヌはその刻印に独自のサインをする。この街に住んでこそ手に入れる極めた合理性と洗練された美的感覚で。
 

「日本とちょっと違う。パリジェンヌのイメージ」



自分流×帝京大学
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Posted by エベルソルト 真理

エベルソルト 真理

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Marie Ebersolt
日仏翻訳・フランス語講師
2012年よりピラミッド界隈の翻訳事務所・フランス語教室を拠点に活動中