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北の国から生まれる光 Posted on 2018/10/21 まきの ななこ ライフスタイルキュレーター アムステルダム

オランダはここ数週間で一気に季節が進み、街ゆく人はコートを羽織り、青空は翳りを増し、朝晩はヒーターを入れる程冷え込む日がやってきました。さみしいけれど何故か少しほっとするのは、これがいわゆる馴れ親しんだオランダの日常だからでしょうか。

しかしふと振り返ってみると、今年の夏は本当に暑かったです。ヨーロッパ全体が熱波に襲われたということですが、オランダも例外にもれず、少し大袈裟ですが気が遠くなるほど暑かったです。1976年以来の旱魃ということで、いつもは緑豊かな街並みも、心なしか茶色く干上がっていました。
日本で生まれ育った私は、やはりこんな暑さの時には、涼を感じる花火でも! と思ったりするのですが、残念ながらここはオランダ、そういうわけにも行かず。
ならば少し趣向を変えて、違う”光”で涼を得ようと、アムステルダムをベースに活動するアーティスト2人組がつくりあげる、様々なスタイルの”光”を拝見して来ました。
 

北の国から生まれる光

北の国から生まれる光

”Ghost Collection(ゴーストコレクション)”と名付けられた椅子の骸骨? のようなものや、種子一粒一粒がLEDライトに手作業!によって植え付けられた、発光するタンポポたちが織りなす群像”FRAGILE FUTURE(フラジャイルフューチャー)”、空から大輪の朝顔が咲き乱れるかのような”SHYLIGHT”に”MEADOW”などなど。

他にも、鳥の飛び方や群れをなす様子からインスパイアされた作品、過酷な自然環境のサハラ砂漠で行き交う人々を見守り続けた一本の木へのオマージュとして捧げられた、集う人々の鼓動や動きによって発光する樹木のプロジェクトなど、しばし外の暑さを忘れてオアシス気分を堪能しました。
 

北の国から生まれる光

北の国から生まれる光

これらの作品を手がけたStudio Driftというデュオ。デビュー当時から自然と科学、テクノロジーを融合し、ある意味、概念上の自然以上に”今の時代の自然”を象徴しているような作品を生み出してきました。
作品をつくり上げる過程においては科学者やエンジニアなどと協力し合い、緻密かつ気が遠くなるようなデータ収集、実験、検証を繰り返す様子は、改めてアートやデザインという本質を私たちに容赦無く突きつけて来ます。

自然に見えるものほど、実はその裏側では、計算し尽くされたプロの技術が結集していたりするものです。
そしてその先にはいつも、何が本物か? 私たちは本当に知っているのか? という問いかけが。
象徴的かつエモーショナルな光、テクノロジーと詩的なイメージを兼ね備えた光。彼らの作品を見ていると”光”が、将来の私たちの進むべき人生の道しるべを照らし出しているような気がして来ます。
 

北の国から生まれる光

北の国から生まれる光

”光”は決っして生きていくうえで必要不可欠なものではありませんが、その灯りを見つめていると、心が落ち着いたり、逆に勇気が湧いたり、迷いが消えたりと、なにか不思議な力があります。
日照時間が少ない北の国、オランダだからこそ、その歴史の中で”光”の有り難さを尊び、時に崇高なまでのデザインを生みだして来たのではないでしょうか。

ヨーロッパは秋を迎え、新学期のスタートなど新たな旅路がはじまると同時に、これからは長く険しい冬にまっしぐら、な季節でもあります。暗いがゆえにより美しく幻想的に輝く光を愛でながら、私も少しずつ冬支度を進めようと思います。
 

北の国から生まれる光

 
 

Posted by まきの ななこ

まきの ななこ

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Nanako Makino
ライフスタイルキュレーター。シカゴ、東京、モスクワ、ロンドン、、、一期一会に生かされて。新しいホテルやブランドなどの立ち上げに携わりながら様々な都市を巡り、2014年よりアムステルダム在住。オランダ語見習い中。放浪癖あり。