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ストライカーとして生きていくために Posted on 2016/10/21 岡崎 慎司 プロサッカー選手 スペイン・カルタヘナ

ストライカーとして生きていくために

ストライカーとして生きていくために必ず必要になるゴールを決める能力。僕はストライカーとして常にゴールを意識し狙っている。それでもゴールを決められない試合の方が圧倒的に多いのだ。だから僕はいまだにどうやったら確実にゴールを取ることができるか、決めることができるのか、を追求している。本物のストライカーはどんなときも、どんな状態であろうと、必ずゴールを決めなければならない。ここでは自分がゴールを着実に決めるための日々のイメージトレーニングについて話してみたい。

まずは、どういう風にゴール決めるか、をイメージする。まずは人一倍練習を繰り返すことだ。その結果、ゴールが決まる。当然それは自分自身の自信に繋がる。だめならばさらに練習をし、次の試合で結果を出すまでだ。厳しい訓練、そこから生まれる挫折と勝利のその繰り返しの中から、絶対的な自信というものが養われ、「ゴールを取る」という自分なりのデザインがようやく形になっていく。
しかし、僕のゴールデザインの先には当然相手方のディフェンスとキーパーがいて、彼らも彼らの守備のデザインというものを持っている。相手のレベル、相手の守備力が自分よりも上であれば、当然、自分が描くゴールイメージを読まれてしまう。それではだめだ。まず、相手のマークをどういう風に外し、味方から回ってきたボールをどのように受け取るか、のイメージ作りが大切となる。味方からパスされたボールがどのようなものか、それをどうしたらよいのか、を瞬時に判断し繋がなければならない。ダイレクトでシュートを打つか。トラップしてシュートもしくはドリブルからシュートを決めるか、ありとあらゆる方法を、ある程度前もってイメージしておく必要がある。デザインの蓄積である。  

しかし、僕がイメージしてるということは、もちろん、当然に相手のディフェンスも同じようにイメージを積み上げているということである。なのでパスをもらった瞬間、知識ではなく、動物的な感覚で、あらかじめ用意していた選択を瞬時に変える柔軟性が必要となる。元々イメージしていたこととは違う選択を瞬時に変更するわけで、場合によっては体がそこに追いついてこない状況もある。けれども、その咄嗟の判断にすべてが合致し、肉体もイメージもすべてが完璧に機能した場合、当然、ゴールの確率も上がるということだ。  
さらにここで大事なことを付け加えよう。ゴール前には敵もいればもちろん味方もいる。味方の選手と自分のゴールに対する形やイメージがきちんと共有できていれば、難問を回避する可能性は増える。敵もいれば味方もいるのだ。

大事なことは自分がどこでボールを受けたいかを味方に伝え、自分がやりたい動きをシュートのタイミングを、あらゆる場所で、練習で、試合で、仲間に見せていくことであろう。ゴールへのデザインやイメージを味方の選手に、試合や練習を通してきちんと伝えていくことが実は一番大事なことなのである。

ストライカーとして生きていくために

それでもどうしようもない状況というものはやってくる。人生と同じだ。そういう時はあらかじめ用意していたすべての方法を放棄するくらいの潔さが必要である。
僕はストライカーでありながら、日本でも海外でもいろんなポジション、役割を任され、担ってきた。なぜなら、それをしないと生きていけなかった。与えられた任務だけを遂行しているようではだめだということである。つまり、僕が言いたいことは、イメージ通りにいかないからといって諦めていては何事も前には進まないということだ。イメージ通りにすべてが動けば必ずゴールを決める自信がある。ならば、それは同時に、どうやったらゴール前でイメージ通りにボールを確保できるか、味方からボールを最高のタイミングで受け取ることができるのか、思い通りにどうやってシュートを決めることができるのか、ということを追求しなければいけないということだ。もちろん、あらゆる方法で。

とにかく、ゴールを取るために思考を巡らせなきゃいけない。  
こんな風に僕はストライカーとしてずっとゴールを決めるための過程をデザインし、アプローチし続けてきた。だからこそ、どんな状況下でも、イメージしてきた通り、思い描いてきた通りに、同じ動きを繰り返せたり、動きの質をキープできてきたのかもしれない。 ただ自分に厳しく言うならば、ストライカーとして必要なもの、それはゴールを決めきるイメージと絶対的な自信に尽きる。サッカーは単純に足でやるスポーツだ。そして、ボールは常に動き回っている。さらに、目の前にはキーパーとディフェンスがいる。このことを忘れてはならない。

そのような過酷な状況下で、必ずゴールを決めきるために必要なのは、それは技術は当然だが、何より自信なのである。過酷な練習でゴールを決められるとする、ならば練習通りにやればボールはゴールに入るはずではないか? しかし、精神的に弱気になれば、動いてるボールを練習通り蹴ることはできないし、ちょっとでも判断に迷いや悩みがあれば、相手にボールを奪われてしまうのは当然であろう。 試合と同じ緊張感で練習に取り組む姿勢がまず大事だ。さらには、試合の中で決めるか決めないかよりも、逃げずにしっかり打ちきれたのか? 焦らず自分らしいシュートができたか? 本能のままゴールを狙えたのか、を毎回自分に課すことが大事だと僕は思う。どれだけ周囲を気にせずゴールに集中できるか?
それを乗り越えた時に真のストライカーとしての、さらに上が出現するということであろう。

人生と同じ、終わりなき戦いは続く。

Posted by 岡崎 慎司

岡崎 慎司

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Shinji Okazaki
プロサッカー選手。1986年4月16日、兵庫県宝塚市生まれ。滝川第二高校を経て2005年、Jリーグ清水エスパルスに入団。チームの中心選手として活躍する。2011年ドイツ・ブンデスリーガのVfBシュツットガルトへ移籍。2013年マインツでプレー後、2015年イングランド・プレミアリーグのレスター・シティに移籍。レスターがプレミアリーグ初優勝。現在はFC CARTAGENA、カルタヘナ活躍中。ポジションはFW。