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北の国のハッピーなプライドパレードPosted on 2016/12/30  Posted by 宮本 武

北の国のハッピーなプライドパレード

メアリー・エレン・マークという今は亡き偉大な女流写真家のワークショップに参加するために、2011年の夏、初めてこの国を訪れた。京都とアイスランドを行き来しながら作品を撮りためている写真家の親友が誘ってくれたことがきっかけであった。

写真のワークショップでは、「男性らしさの考察」という何だか仰々しいテーマを決め、ステレオタイプな「男らしさ」ではない実際の「男性」の多様さをドキュメントしていくために、アイスランド人男性の被写体を探す毎日が続いていた。
「明日はドラァグキングとドラァグクイーンを決めるコンテストがあるから是非行ってみて。そこで魅力的な被写体に出会えるかもよ。そしてこの週末はプライドパレードがあるから、見逃さないでね。」

実は、アイスランドの人口33万人の約半分が見に来るほどの大きな行事なのだそうだ。
LGBTQI(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・クィアー・インターセックス)の権利を主張するパレードを見に、国の約半分の人が集まるの?

北の国のハッピーなプライドパレード

先頭を行くこの謎めいた派手な人は誰? と思っていたら、レイキャビク市長のヨン・ナールさんだった。
コメディアンである彼は、ミュージシャンやアーティストなど政治の素人とベスト党という新党を作り、2010年から4年間の任期を務めた。
2013年にはロシアが同性愛者を弾圧したことを受け、モスクワ市との姉妹都市関係を解消したほどの行動派だ。

そういえば、この国の首相を務めたヨハンナ・シグルザドッティル女史も女性パートナーと同性婚をした世界初の首脳であった。地球の北の果てでこんなにポジティブで寛容な世界を味わえるなんて、ゲイである自分にとっては思いがけないプレゼントを受け取ったような気分。

自分は周りと何か違う、と子供ながらに感じた時、「誰を好きになっても構わないんだよ。怖くないんだよ。」と言ってくれる人がいたら? 両親はもちろん、おじいちゃん、おばあちゃん、家族や親戚がみんな応援してくれたら?

気づいたら僕は涙を流して、「ありがとう」と言いながら友達を抱擁していた。
彼女がこの国のことを教えてくれなければ、この感動は味わえなかった。

北の国のハッピーなプライドパレード

コンテストの舞台裏ですぐに仲良くなったオメルくん。(写真左)
ドラァグキング(男装した女性)とドラァグクイーン(女装した男性)のふたり 。(写真右)

オメルくんは普段はボーイッシュな格好をしているから僕は男性として接しているけれど、独特な言葉使いのせいだろうか、皆は彼を「彼女」と呼ぶ。
「私、実は魔女なの。」
アイスランド北部の漁村出身の彼は言う。おばあちゃんから秘伝の薬草の調合を習ったそうだ。
「この国には妖精や魔女はたくさんいるのよ。」
彼にそう言われると、どうしても信じてしまう。

プライドパレードは1999年に始まった。オメルくん曰く、昔は差別や偏見を受けることも多々あったという。
パレードの目的は、様々な性的マイノリティの人々を受け入れることはもちろんだが、現在では「アイスランドは個々の個性を認める国なのですよ」と国を挙げて祝う行事に移行しつつある。

北の国のハッピーなプライドパレード

ドラァグキングに挑戦している女の子たち。

北の国のハッピーなプライドパレード

この年に見事ドラァグクイーンのトップに輝いたのは、フィリピンからアイスランドに移住してきた男性だった。
「あたしの方が絶対良かったわ。彼女が一位になるなんて、移民に優しくしなさいねっていう建前よね。」
なんてジョークをかますオメルくん。

悔しいよね。

でもね、フィリピン人の彼はすごく面白くて素晴らしかったよ。

 

北の国のハッピーなプライドパレード

この快感にすっかりハマってしまった僕は、翌年の夏にはオメルくんチームと共にプライドパレードを歩いていた。

北の国のハッピーなプライドパレード

もしもあなたが同性愛者であることで辛い思いをしているのなら、アイスランドのプライドパレードを見に行ってみてはどうだろう。

ハッピーになれるかも? うん、ハッピーになれるよ。
 

北の国のハッピーなプライドパレード

Posted by 宮本 武

宮本 武

Takeshi Miyamoto 
写真家。1974年生まれ、福岡出身。2009年よりフランス、パリ在住。ジェンダー、身体、自然、異文化等の中に見つかる普遍性とその美しさを求めて作品を制作している。日本国内外で雑誌、カタログ、広告写真などでも活動中。