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キアラの夏休み 〜12歳シェフのレシピつき〜 Posted on 2018/08/30 町田 陽子 シャンブルドット経営 南仏・プロヴァンス

キアラの夏休み 〜12歳シェフのレシピつき〜

友だちの娘がひとりでやってきた。夏休みの最後の数日を、プロヴァンスのわが家で過ごすために。

名前はキアラ。現在12歳。
彼ら一家はリヨンに住んでいるので頻繁に会うことはできないが、年に数度はどちらかの家に行って一緒に過ごすのが習慣という間柄。家族に限りなく近い友人家族だ。

両親も年少の妹も伴わず、たったひとりでうちにくるのは初めて。わが家はシャンブルドット(宿)を営んでいるので、夏はとても忙しく、毎日、お泊まりのお客様がいることもちゃんと理解してやって来た。
せっかくの機会。手伝ってもらいながら、彼女の知らない世界を見てもらいたい。プロヴァンスの村、日本語の会話、宿やチャーターの仕事、お客様との交流、……。12歳といえば、まだ子どもながらも世の中のことに興味を持ち始める年齢だ。どんなことでも見聞を広げるのは悪いことじゃない。
 

キアラの夏休み 〜12歳シェフのレシピつき〜

最初はダヴィッドのチャーターガイドに同行し、プロヴァンスの小さな美しい村を一緒にまわったが、あまりの暑さにダウン。翌日からは私と家で掃除や洗濯、買い物などをしたのだが、私の後ろにくっついて、こちらが頼む前にもう動いている。呼べばすぐ来て、イヤな顔ひとつせずに手伝ってくれる。宿泊のゲストのターブルドット(夕食)もダヴィッドのアシスタントを務めた。

以前は恥ずかしがりやのプリンセスだったのに、ずいぶんたくましくなったものだ。6年前から始めた新体操部でメキメキ頭角を表し、代表レベルを目指すかどうかの岐路に立っている。学校の勉強も得意で、英語とドイツ語も上達中。

私には子どもがいない。育てたこともないので、子どもへの接し方に戸惑うこともあるのだが、なぜか彼女とは最初からウマが合う。大人と子どもでも、相性ってあるのだ。
 

キアラの夏休み 〜12歳シェフのレシピつき〜

さて、せっかく彼女と一緒の時間。午前の仕事をいつも以上にスピーディに片付けて、ランチにピクニックを提案してみた。
「じゃあ、私がサンドイッチを作る! あのね、私はサンドイッチのスペシャリストなの。まかせて」と、冷蔵庫から生ハム、レタス、バター、コンテチーズを出し、バゲットを手際よく切り、楽しそうに準備を始める。私は彼女のアシスタントに徹し、指示に従い、おかずにご指名の卵を茹で(半熟と固ゆでの中間との指示)、トマトや果物を切る。サンドイッチはあっという間にできあがり、紙ナプキンを折りたたんで紐で結んで、インスタ映え間違いなしのおしゃれなのが完成!

「ママンがこんな風にするの?」と聞くと、
「ノン。こないだ、お店で見てやってみたかったの。素敵でしょう」。
ふうん。そういうのをちゃんと覚えていて、実践するなんてすごいな。そんなの私が12歳の時、興味あったかしら。
 

キアラの夏休み 〜12歳シェフのレシピつき〜

バスケットにすべてを入れて、大人の足で15分くらい先のLe Partage des Eaux(ル・パルタージュ・デ・ゾー)というソルグ川が分流する場所へ。ここは水辺に芝生の広々とした緑地帯があり、テーブルが点在し、ピクニックにうってつけの場所。木陰のテーブルに陣取った私たちは、少し歩いたせいでぺこぺこになったお腹を満たそうと、早速ランチタイム!

うん、本当に絶品ね、キアラのサンドイッチ。
「どんな秘密があるの? 教えて」と言うと、「うふふ。あのね、バターをたくさん入れるの」とお茶目に耳元でひそひそ声で教えてくれた。それからゆっくり考えて、「秘訣はね、それぞれの素材をたくさん入れすぎないこと。バランスが大事。あ、そうそう、生ハムの脂を取るのも重要!」だそう。答えが真っ当すぎて、なんだか、大人と話しているような気がしてくる。
 

キアラの夏休み 〜12歳シェフのレシピつき〜

食べ終わり、ゆで卵用にアルミホイルに包んできた塩をゴミ袋に入れようとすると、「捨てちゃダメ! まだ残ってるんだから持って帰らなくちゃ。塩は大切なんだよ」と説教された。はい、ごもっともです。

食後、水温が年間11度〜13度というソルグ川に入ってみる。
「きゃー、冷たい、足が凍る、ムリ、ムリ、風邪引いたら陽子のせいだからね、川に入るなんてやっぱり無謀な考えだったよー」と叫びながらも楽しそう。3分もしないのに冷たさで足がジンジンしてきた。しばしタオルで足をくるみ、足だけ日向ぼっこ。

「また歩いて町まで帰るのしんどいな。この炎天下に20分歩くには私は子どもすぎるの。ね、さっきプチトラン(観光用の小さな電車)が通ったでしょ。あれに乗ろうよ」と言って聞かない。乗り場に行くと、運行時刻はなく、電話番号だけの表示。どうしてもこのプチトランに乗りたい12歳の彼女は、私の携帯から電話をし、乗客が来なければ次は夕方の18時だという電話口の女性を説得して、来てくれるよう交渉してしまった。

「細かいことはよくわからなかったけど、あと15分で来てくれるって。その間にまた川に入ろうよ」(なんだかんだ言って、川が気に入ったらしい)

約束どおりやってきた貸切のプチトランに乗って(運転手の女性は二人で5ユーロでいいわと格安料金にしてくれた)、VIPのように旧市街のわが家に戻った彼女はご機嫌だ。タクシー代わりにプチトランを利用できるなんて聞いたことがない。やれやれ、こりゃ大物になるかもしれないな。
 

キアラの夏休み 〜12歳シェフのレシピつき〜

帰った彼女から携帯にメッセージが届いた。
いろいろありがとう。
・泊まらせてくれてありがとう。
・食事もありがとう。
・学ばせてくれてありがとう。
そして、封筒もありがとう❤️
(初めてあげたお小遣い。フランスではあまりその習慣はないのだけど)

私のような部外者も子育てに参加できるのっていいなと思う。フランスも日本も昔のように大家族ではなくなっているので多様な価値観や意見を聞く機会が減っているだろうし、もしかしたらそれがいつか人生の役に立つことがあるかもしれない。あなたの人生を陰ながら応援している人がここにもいるということを感じてくれたらうれしい。信じて託してくれた友人にも心から感謝。

さて。今日は、キアラの得意料理を紹介しよう。
彼女が大好きだった亡きグラン・メール(祖母)直伝の料理、プレ・ア・ラ・クレームと、簡単で超美味しいとオススメのチョコチップクッキー。彼女が私のためにメモしてくれたレシピそのままを記載する。お好みでアレンジしてみてください。


プレ・ア・ラ・クレーム(鶏のクリーム煮)2人分
① 鶏のムネ肉2枚を一口サイズに切る。
② タマネギ小1個を大きめのみじん切りにする。
③ フライパンでバター適量を熱し、鶏肉を入れる。両面に軽く焼き目をつけ、タマネギを入れ、フタをする。弱火で焦げないように。
④ タマネギが茶色っぽくなるくらいまで火が通ったら(水分がなくなったら少し水を足す)火からおろし、生クリーム(料理用の濃厚なタイプ)を200g程度入れ、塩・コショウを適量加え、混ぜる。
⑤ ごはんやショートパスタと一緒に召し上がれ。
 

キアラの夏休み 〜12歳シェフのレシピつき〜

チョコチップクッキー 40個分
① オーブンを180度で余熱。
② 卵2個を攪拌する
③ バター185gを電子レンジか湯煎で溶かす。
④ ボールで砂糖(キアラは赤砂糖を使用。三温糖でも)160gと小麦粉300gを混ぜ、❷❸を加えてよく混ぜる。
⑤ ❹にベーキングパウダー1袋(10g、バニラシュガー7g(なければバニラエッセンスやビーンズで代用)、ハチミツを大さじ2、チョコチップ200gを加えて混ぜる。ざっくり混ざったら最後は手で混ぜ、一つにまとめ、冷蔵庫で10分寝かせる。
⑥ ❺を取り出し、手のひらで直径3cmくらいのボール状にする(やや平たく)。
⑦ キッチンペーパーを敷いた天板に❻を並べる。倍以上に膨らむので間隔をあけること。オーブンに入れ、10〜15分。
 

キアラの夏休み 〜12歳シェフのレシピつき〜

キアラの夏休み 〜12歳シェフのレシピつき〜

代わりに私はトンカツのレシピを彼女に伝授! 大いに気に入った彼女は、家に帰ったらさっそく作るとはりきっていた。うまくいくかな。

ちなみに学校の夏休みの宿題はひとつだけ。先生にドイツ語でポストカードを送ることだそうだ。登校日もない。

 
 

Posted by 町田 陽子

町田 陽子

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Yoko MACHIDA
シャンブルドット(フランス版B&B)ヴィラ・モンローズ Villa Montrose を営みながら、執筆・コーディネイト・講演を行う。毎年3月開催の阪急百貨店本店「フランスフェア」のコーディネイトもパートナーのダヴィッドと担当している。