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男と女。古代から変わらぬ、この不条理なるもの Posted on 2017/09/24 町田 陽子 シャンブルドット経営 南仏・プロヴァンス

男と女。古代から変わらぬ、この不条理なるもの

東京から南フランスに居を移し、この9月で10年目に突入した。山あり谷あり、習慣や文化の違いに戸惑ったことも数えきれないほどある。
年齢の差は人間関係上まったく重要でないこと、約束した期日は守るためにあるわけじゃないこと、銀行でも市庁舎でも人によって言うことが違うこと、交渉しなければ何も進まないことなど、言い出せばきりがない。

文化の違いといえば、カップルの有りようも大いに異なる。つねに行動を共にするフランス男女の生態は噂には聞いていたが、本当に、プライベートの時間を別々に過ごすことが少ないのには驚く。若いカップルのみならず、子どもがいても子育て終了しても、リタイア後も、いつだって彼らはツガイだ。
 

男と女。古代から変わらぬ、この不条理なるもの

結婚して45年が経とうという人生の大先輩である友人女性に聞いてみると、

「20歳で結婚して以来、いまだにケンカも絶えないけど、それでもいつも一緒なのが当たり前。仕事も自営業だったし、リタイア後も日常も旅行もいつもふたりね。彼は出不精、私はアクティブだから、私の好きな催し物や展覧会なんかに連れ出すのはちょっとたいへんだけど、徐々に彼も好きになってくれることが多いわ。私の趣味だったアンティークの掘り出し物探しも、いまでは彼の方から誘ってくるくらいよ」

あるアラフォー男性は、

「正直言って、うんざりすることもあるさ。たとえば彼女の嫉妬。家を出た瞬間に電話がかかってくる。だから携帯を持つのをやめたんだ。休日? ゴルフの楽しさを妻にも教えたから、二人でゴルフに夢中さ」

いつも一緒にいるか、愛情がなくなれば潔く別れるか。
周りを見回すと、冷えた愛情を見て見ぬふりして一緒にい続ける人の方が少ないようで、子どもがいようが別れ、気づけば別の誰かと暮らし始めていたりする。見境ないと思わぬこともないが、それがフランス。独身貴族は少数派で、出生率も相変わらず欧州一。昨年は78万5000人の赤ちゃんが誕生し、女性一人当たり1.93人を産んでいる計算らしい。

先日、53歳の友人女性が、一緒に暮らしていた年下の恋人にふられてしまった。
「彼に若い彼女ができたのよ。子どもが欲しいんだって。私だって、まだ2〜3人は産めるのに」と真顔で言ったときはフランス女の底力を見た気がした。
 

男と女。古代から変わらぬ、この不条理なるもの

私自身が、南フランスで暮らすようになって男女関係で変わったことといえば、ケンカの流儀。以前は自分の殻に閉じこもる冷戦スタイルだったが、その方法はフランス男相手にはいらだちを与えるだけで、解決の糸口も遠ざかる。涙も武器にならず、子どもじみていると一笑されるだけだと1、2度試して理解した。つまるところ、なにを怒っているのかを話して理解してもらうしかない。論理的というより感情的なタイプの私にとっては難しいのだが、今は、腹がたった時はクールなど装わず、速攻、ぶちかませるようになった。
考えてみれば、この直球型の態度は、解決策を見出そうという歩み寄りの態度であり、ふたりの関係を早く修復させようという建設的なものといえる。
ちなみにこの変化は、相棒のダヴィッドには歓迎されている。

彼の周りには10代の頃の元ガールフレンドが数人いまも友達として存在しているのだが、昨年、彼が手術をした際、大病院で働くA子さんが予約の取れない医者を紹介してくれたり、入院部屋を押さえてくれたりと力になってくれた。
入院中、ダヴィッドの母親が見舞いに行った時、A子さんと二人のとき「うちの息子に手を出さないでね。幸せにやってるから」と言ったそうだ。「私だって子どももいて幸せにやってます」と応酬されたらしいが、あとからA子さんから聞いて大笑いしてしまった。いくつになっても息子はかわいい子供ということなのか、そんな釘を刺したくなるほど、この国ではアバンチュールが多いということなのか、はたまた、思ったことをそのまま口に出してしまう南仏人のなせるわざなのか。
 

男と女。古代から変わらぬ、この不条理なるもの

男女の愛というのは不思議なものだと思う。私自身、出会った頃は、今のような信頼関係を築けるとは想像していなかった。最近、そう告白したら、彼も同じで大いに笑った。
南仏という縁もゆかりもない場所へ来て、無我夢中で一緒にチャレンジを重ねることで同士のような関係になったのだろうと思うが、いやはや男と女のことは一寸先も闇。油断は禁物だ。一度や二度の失敗ではすまない大人な私たちであるからして、そのリスクは重々承知している。大切だと思うのは、裏表なく、南仏流になんでも話すこと。今日あった出来事、自分の感情といったものを日々、話す。特別な秘訣などないし、そんなことを言っていても、壊れる時にはある日突然、壊れてしまうものなのだ。古代から変わらぬ不条理な摂理である。
 
 
「愛の炎は暖炉と同じ。放っておいたら簡単に消えちゃうのさ」
 
 
とは、ダヴィッドの愛の法則1。
うむむ、セ・ラ・ヴィ!
 

男と女。古代から変わらぬ、この不条理なるもの

 
 

Posted by 町田 陽子

町田 陽子

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Yoko MACHIDA
シャンブルドット(フランス版B&B)ヴィラ・モンローズ Villa Montrose を営みながら、執筆・コーディネイト・講演を行う。毎年3月開催の阪急百貨店本店「フランスフェア」のコーディネイトもパートナーのダヴィッドと担当している。