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チャンネル登録者数60万人、超人気ユーチューバー「えもじょわ」の秘密! Posted on 2018/06/06 辻 仁成 作家 パリ

チャンネル登録者数60万人、超人気ユーチューバー「えもじょわ」の秘密!

 
若い料理人には夢がなかった。パリのレストランで働いていたが、自分の店を出したいとか、有名になりたいとか、そういう目標を見つけることができずにいた。いったい何をしていいのかわからない。それである日、彼はレストランを辞め、料理のレシピを提供するユーチューバーになった。はじめて4年の歳月が流れた。最初はコメントさえも貰えなかった彼の番組に今は60万人の登録者がいる。今、視聴者からのコメントに応えるのが楽しいという。夢の無かった若い料理人はYouTubeの中に自分の夢の世界を作り上げた。
 

 さて、えもじょわさん、こういったインタビューをされるのはひょっとして初めてですか?

えもじょわさん(以下、敬称略) はい! 初めてです。昨日からすっごく緊張して眠れませんでした(笑)。

 お、やったー! 初インタビュー嬉しいな。この間、白いちごのタルトの動画を見せてもらいました。めちゃくちゃ神経細やかな動画で驚きましたよ。音がまたすごいですよね。

えもじょわ 音にはかなり苦労しました。白いちごの動画は最初は赤いいちごで撮ったんですけど、編集している日に近所の八百屋で白いちごを見つけて、「これ使いたい」と思って作り直しました。
 

 


  
 
 
 まず、経歴を聞かせてください。

えもじょわ 僕は高校を卒業して、一旦会社員になったのですが、自分には合わないなと思って会社を辞めました。それから半年間の世界旅行に出て、帰ってきてから料理専門学校に入りました。フレンチに出会ったのは専門学校時代にフレンチレストランでアルバイトをした時で、見たことのないような料理やお菓子があって、「なんなんだ!」って思いましたね。卒業してからは仙台のレストランやワインバーで料理人として働き、渡仏してからもフレンチレストランで料理人として働いていました。

 なぜ、「えもじょわ」なのでしょう?

えもじょわ 「えもじょわ」という名前は、”エモーション(l’emotion: 感情)”と”ジョワ(la joie: 喜び)”をかけ合わせています。最初は働きながらYouTubeを始めたので、軌道にのるかどうかもわからなかったので本名ではなくこの名前を使うことにしました。

 いずれは名前や顔も出すのですか? 動画を見ていると、えもじょわさんの手がすっごいきれいでね。妄想しちゃうよね。手や空気感からどんな人なんだろってすごく楽しみにしてきました。その楽しみ感を演出する力がすごいですね。いや、今、目の前にいるえもじょわさんがどうのっていうわけじゃ無いんだけど(笑)。 

えもじょわ そうですね、いつかは。ただ今、心の準備中です(笑)。 

 YouTubeをやろうと思ったきっかけは?

えもじょわ それは、ずばり、行き詰まったからですね。フランスに来て「料理を覚えたい」とかそれなりの夢があったんですけど、料理人として働きだしてみたら、その先の夢がどうしても見出せなかったんです。自分のお店を持ちたいとも思わなかったし、かといってレストランで働き続けたいわけでもなかった。料理は好きで続けていきたいけど、じゃあ、その先はどうする? となって。YouTubeを始めたのは2014年の夏なのですけど、その当時はすでにブログを始めていたんです。なぜかというと、これからはなんでもネットと繋がる時代だと言われていましたから。どんな職業でも。じゃあ、料理人もネットと繋がらなければと思って、レシピブログを始めたんですけど、全然見てもらえなかった。レシピを1個、2個、10個あげても見てもらえない。……で? という感じでした。

 見てもらえなかったんだ。YouTubeの方は? どのくらいから急に増えたんですか?

えもじょわ YouTubeも最初はコメントもつかなかったですね。はじめてから一年はなかなかでした。2週間に1回ぐらい動画を出し、レシピを説明したレシピブログを連動させて。もともと動画を始めようと思ったのは、ブログだとレシピに興味ある人しか見に来てくれないんですよね。それで、何か無いかなと探していた時に、偶然、電気屋さんで、大きなテレビ画面にすごく美しい食材と、調理過程の映像が流れていたんです。それがあまりにも美しすぎて、そこから動けなくなったんです。

 昔から映像には興味があったのですか?

えもじょわ 全く無かったです。でも、「こんなものを撮りたい!」と思ったんです。そうすれば、料理動画をエンターテーメントとして見てもらえるし、見てもらえれば必ず”料理したい”という欲求が出てくるはずだと思って。それで、動画を作り始めました。粉とか、卵とか、牛乳という材料から最終工程には美しいお菓子になる。僕はずっと、その変化が素晴らしいと思っていたんです。見ている人にも、えっ! というエンターテーメント性が高いですよね。
 

チャンネル登録者数60万人、超人気ユーチューバー「えもじょわ」の秘密!

 
 YouTubeチャンネル開設してから4年で、今何本くらい出したのですか?

えもじょわ BGMを入れたものと抜いたもの、両方出していた時期もあって、全部合わせたら140本くらいあります。

 僕は音楽入って無い動画しか見て無いんですが、すっごいよね。うちの息子がYouTube大好きなんですけど、「すごい」って感動してました。チーズケーキの動画見てからチーズケーキ作りたいって言い出して、大変なことになっちゃったんで責任取ってください(笑)。

えもじょわ 僕の動画を見て作りたくなってくれたらすごく嬉しいですね。

 えもじょわさんの動画は一本が結構長いじゃ無いですか。あれは、わざとですか? 今ってカメラ上から構えて工程を早送りで見せて、はい、完成。というような動画が流行っているけれど。

えもじょわ そうですね。でも、視聴者の中には動画はもっと長くてもいいという人もいたりします。最初はBGMをつけて、音などは特に気にせず動画を作っていたんですが、視聴者さんのコメントに「調理音がすごく気持ち良い」というのが出てくるようになったんですよ。それで音について検索したところ、 ”音フェチ”とか、”ASMR”というジャンルがどうもあるということが分かって。作業音というか、スライムを練っている音とか、石鹸を削る音を永遠と流している動画があるんです。それで、じゃあ、音楽は要らないかなと思い、切り替えました。そこからまたマイク選びに苦戦して、何本もマイクを買いましたね……。

 マイクはどのようなものを使っているのですか? カメラにガンマイクをつけてるんですか? 

えもじょわ いや、マイクはカメラから離して設置しています。マイクで細かい音を録る時ってギリギリまでマイクを近づけないと録れないですからね。だけど、ポリシーとして画面の中には入れたく無い。だから、カメラの画角を変えたらマイク位置もいろいろ考えて、今のスタイルにたどり着きました。最初はバイノーラルマイクという、耳につけて人間が聞いているように録れるマイクを買いました。あとは、安めの3.5mmジャックのマイクを2本買って、それでも満足できず500ユーロくらいのガンマイクを買いましたがそれもダメで。今はXYステレオコンデンサーマイクを使っています。カメラはソニーです。ミラーレス一眼レフで、三脚を立てて撮っています。

 大変だね。料理をなんども作り直したりすることもあるだろうし……。でも、今はユーチューバーとして、生活しているわけだから、それが仕事なのですよね。一本の動画を作るのにどれくらいの時間をかけているんですか?

えもじょわ まず、レシピを決めたら試作をします。それからレシピを調整したり、見た目的にも変えたりして。そして、どのようにカメラを動かそうか、どのような音を録ろうか、とかをイメージしていきます。ぶっつけ本番でカメラを回してしまうとそこで失敗した時にかなりの時間を奪われてしまうので、リハーサル的な感じで一回作ってみて、これでいけるとなれば、次はカメラを回しながら作ります。昼間に工事でうるさい時は夜まで待って、照明を当てて撮影することもあります。たとえば、白いちごの動画は夜撮影です。照明を3灯たいてライティングしました。初日はリハーサル、2日目撮影、それから編集に2、3日かかります。なので、一本の動画を撮るのに約一週間かかりますね。編集しているうちにもう一度撮り直したいところとかも出てきますし。今は2週間に1回の割合でアップしています。

 うーん、僕は短気だからできないな。

えもじょわ パリに来てから今やっと、外に向けて何かできるようになったという感じですね。去年までは料理人の仕事もしていましたので、パリに来てからずっと仕事と家の往復だけでした。料理人にはアフターファイブもないですし。動画を始めた頃は全然良いものが撮れなくて、悔しくて、家からも出なくなって。仕事と用事以外は外に出ず、ずっとカメラとパソコンの前にいました。4年間引きこもりみたいな生活をしていたので、僕、全然友達いないです。やっと最近フリーランスになったので人と会うようになってきました。
 

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 現在、EMOJOIE CUISINEチャンネルには60万人の登録者がいる。将来の目標のようなものはありますか? もちろん、チャンネル登録数100万人を越すのが目下の目標かもしれませんが。今、登録者数はどのくらいの割合で伸びているのですか?

えもじょわ 今はクオリティと投稿頻度を考えて制作していきたいと思っています。その結果100万人達成できたら嬉しいなと。登録者は一ヶ月で2、3万人くらい増えていますすね。70%が日本人で、あとはアメリカが6〜7%、その他……というように続いてます。

 すごいですね。僕もアドヴァイスもらいたいな! 僕はまだYouTube始めたばかりなんですよ。僕の場合は息子が「やろう。パパはユーチューバーになるべきだ」と言い出したんです。いや、もっと軽い感じ「やったらいいじゃん、ぜったい向いてるよ」って(笑)。息子と二人、パリで生きていますが、いろいろと不安だった。彼はフランス語人です。もっと息子を理解してやりたい。強い絆を作ってやりたいと思いました。彼はビートボックスが大好きで、かなりの腕前なんです。そこから音楽への強い関心を持つようになりました。共通の趣味は音楽、そして息子はYouTube世代、ならばいっしょにYouTubeをやったらいいんじゃないか、と思ったのです。音楽がビジネスにならない時代です。別にならないのならば権利がどうのこうのって守るより解放した方がいいんじゃないかって思いました。ぼくの歌う音楽だ誰でも観て聴けるようにしてみよう。そういう中で「2Gチャンネル」が生まれるんです。3Gでも4Gでもなく、5Gの時代に2G。スローミュージックを届けたいって。ギターかついで自宅とかパリの路上とかで撮影しています。1週間から10日に一本を考えてるんだけど、それで大丈夫?

えもじょわ 大丈夫です! 一番いいのはクオリティの高い動画を毎日のように投稿する事ですが、両方は難しいですからね。あげた瞬間が一番見られますから、定期的にあげていくことを止めないことですね。あとは、ある程度の視聴者、ファンが付いてきたら、どんどん膨らんでいきます。YouTubeのすごいところは視聴者とダイレクトに繋がっているところです。コメントとか、その反応が楽しくて。僕はそれが嬉しくて続けてこれました。視聴者さんとのコメントを全部読んでますし、やり取りもありますし、その中でヒントになるようなことがたくさんあって。

 すでにレシピ本を2冊出版されているのですね!

えもじょわ そうなんです。出版社さんからお話をいただいて、まず「写真どうするんですか?」って尋ねたら、『写真撮れるでしょ、えもじょわさん』って言われて。そこでまた”写真”という課題が一つ増えました(笑)。

 お菓子やフレンチだけじゃなくて他の料理もやればいいのに。

えもじょわ いろいろ要望をもらうので、今後はイタリアンとかいろんな料理にも挑戦してみたいなと思っています。

 いやあ、YouTubeって楽しいよね。いつまでもエモーショナルで、ジョワに行きたいなって思うね! 今日はありがとうございました。
 

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posted by 辻 仁成