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ザ・インタビュー「LUNA SEAとX JAPAN、二つのバンドを行き来するギタリスト」 Posted on 2017/04/29 辻 仁成 作家 パリ

 
日本を代表する二つのロックバンド、LUNA SEAとX JAPAN。この二つのバンドを掛け持ちすることの難しさや喜びについてギタリストのSUGIZOに話を聞いた。

ザ・インタビュー、日本を代表するロックギタリスト、SUGIZOの苦悩と野心に切り込みます。
 

ザ・インタビュー「LUNA SEAとX JAPAN、二つのバンドを行き来するギタリスト」

 
 LUNA SEAもX JAPANもどちらも一時代を築いて、未だに走り続けてるバンド。LUNA SEAとX JAPANのファンで重なってる人もいると思うけどそうじゃない人も当然いるよね? 興味があるのは二つのバンドでどういう役割を担っているのか知りたいね。

SUGIZOさん(以下、敬称略) LUNA SEAでは最年長で、X JAPANでは最年少ってことですかね(笑)。

 実はX JAPANとECHOESは重なってた時期がある。僕らの方がデビューは先だったと思うけど、同じソニーレコードに在籍していたんだよね。割と年齢は近いんじゃないか、と思います。

SUGIZO  X JAPANのメンバーの年齢はちょうど僕と辻さんの間くらいですね。亡くなったHIDEさんが僕の5歳年上だったから、辻さんの5歳年下です。

 二つのバンドを行き来する難しさってあるんじゃないですか? 双方のバンドのファンはどういう反応?

SUGIZO ファンの方々はね、難しいですよ。理解してくれる人たちは暖かく見守ってくれるけど、アンチな人はやっぱりいるし。僕もバッシングにも慣れて気にしなくなったんですけど。

 X JAPANのギタリストをやることはロックギタリストにとって、とっても光栄なことである一方、同時に別の意味ですごい大変なことも抱えることになるのじゃないか。もちろん、依頼があったんだよね?

SUGIZO 最初は無理だと思っていました。特に当時のXのファンの人たちはHIDEさんという大カリスマがいて、そこを見てるし求めているので……。その代役なんてできるわけないし。

 うんうん。

SUGIZO 逆に言うと、そうでなければ推進できないですからね。だから、正直ベストじゃないと思うんですよ。ファンの人たちにとってもベストじゃない。本当はHIDEがいいTAIJIがいい。でももう亡くなってしまった。じゃあ、ベストじゃないからX JAPANはもう消滅していいんですか? もしくは、ベストじゃなくても見たいですか? どっちでしょう? ということですよね。僕はそこでベストを求めてないし、一番を求めてない。ただ、推進させるための歯車にならなきゃいけないから。じゃあ、誰ができるの? っていう。
 

ザ・インタビュー「LUNA SEAとX JAPAN、二つのバンドを行き来するギタリスト」

 
 X JAPANへの想いってどんなものなんですか?

SUGIZO デビュー前からお世話になっていた兄貴分なんで。わかりやすく言うと同じエリアの先輩と後輩なんですよ。亡くなったHIDEさんが無名のLUNA SEAを引っ張り上げて世に出してくれた。そんな恩もあります。X JAPANっていう巨大なバンドなんですけど、そうじゃなくて人間が好き。今のあの4人が。

 あの、 PATAさんすごくいい人だよね。ZAMZA(辻仁成が在籍したラウドロックバンド)のヨーロッパツアーの時に3都市くらいを一緒に回ったことがあって、彼は常に温厚なんです。テクニックも素晴らしかった。

SUGIZO あの人はカリスマギタリストなのにすごく優しい人で、大好きです。だからいろいろ大変なこともあるし、無慈悲なファンの言葉にいつも傷つけられて這いつくばるんですけど、でも、メンバーと一緒にいると本当に安心するんです。だから、X JAPANの「人」が好き。

 時々、ECHOESを続けていたらどうなっていたかな、と思うことはあるよ。

SUGIZO でも、バンドってまたいつでも戻れますからね。生きていればなおさら。LUNA SEAは生きてるので。

 X JAPANも一度やめなかったっけ?

SUGIZO X JAPANは一回解散したんですよ。LUNA SEAは無期活動休止だった。LUNA SEAはデビュー当時と同じメンバー。そんな仲良しではないんですけどね(笑)。信頼し合ってはいますけど。Xの方が一緒にいるとずっとぺちゃくちゃ喋ってる。

 へぇ、驚き。X JAPANの方が気難しく、LUNA SEAは人懐っこい感じがするけど、本当は逆なんだね。これ、世の中的にはスクープじゃない(笑)?

SUGIZO LUNA SEAの面白いところは、地元がみんな同じで、みんな神奈川の片田舎から出てきてる。だから一緒に10代の頃から転がって出てきて、音楽シーンでいろいろ築き上げて、巡り巡ってみんな50代近くになって家族ができて、大人になって、なお今、このバンドをやってる。大人のロックバンドのかっこいい在り方を体現していけるかもって思ってる。

 河村隆一さんは彼がソロになった頃に本を出したじゃない? あの時に角川書店から対談を申し込まれて一度会ったことがあるんだ。まだ、当時は可愛いという感じだった(笑)。そういえば今回、映画「TOKYOデシベル」のサントラレコーディングでスタジオを貸してくれたんだよね。

SUGIZO 今回のレコーディングのほとんどはRYUICHIのスタジオで録ったんですよ。

 河村さん、ありがとう! デビュー当時のLUNA SEAの音楽はとってもポップでしたね。振り返ってみてどう?

SUGIZO 今はもう昔の作品を聞けないんですよね。音も演奏もひどくて。やっぱり未熟でしたよね。
 

ザ・インタビュー「LUNA SEAとX JAPAN、二つのバンドを行き来するギタリスト」

 
 LUNA SEAとX JAPANって音楽性が違い過ぎない? どうやって合わせているの?

SUGIZO この二つのバンドに同時に存在することは普通から考えたらとっても変わってることですけどね。

 LUNA SEAでは最年長だからね、好きなこと言ってるんだろうな、と想像はつきます(笑)。反対にX JAPANの中では一番末っ子で、発言とかできてるの?

SUGIZO 結局Xでもあーだこーだ言いますよ。こうしましょうよって。スタジオにずーっといて、延々と最後まで作業をするタイプっていうのは僕とYOSHIKIさんなんです。下手したら僕の方が長いんですよ。「ごめん、疲れたから先に帰るってYOSHIKIさんが先に帰っても僕は作業したりしてるので。

 誰が一番早く帰っちゃうの?

SUGIZO PATAさん。ぱっとやってもう帰って呑んでる、みたいな。あと、LUNA SEAでは真矢ね、終わったらとっとと帰る。

 そっか。そうやって二つのバンドを掛け持ちしながら、僕の映画の音楽監督までやってくれて、大変でしたね。どうやって限られた時間を使い分けてるの?

SUGIZO それはよく聞かれるんですけど、わからないんですよ。たとえば、マルチリンガルの人はその国に行けばその言語を話せるじゃないですか。そんな感じで、別に自分で切り替える、スイッチとか意識してるわけではないし、何か心構えがあるわけでもない。ただ、辻さんよりも簡単だと思うよ、なぜかというと役割分担が違うから。

 X JAPANの時はロン・ウッドでさ、LUNA SEAの時はキース・リチャードみたいな感じかな?

SUGIZO で、ソロは自分でやるからデヴィッド・ボウイ。辻さんと仕事する時は監督の辻さんがいて、そのインスピレーションを得て僕が音を作る。これも補佐に回る役じゃないですか。プロジェクトによって自分の立ち位置が違うから、それに合わせてスポッと自分の位置に立ってるんですよ。でも、実は僕にとって伸び伸びできるのは、映画や自分のソロの音楽なんです。バンドっていうのはやっぱり思うようには行かないんですよ。みんなと一緒に組み上げていくものなので。歯がゆいところも多々あったりします。バンドの曲というのは、歌を作らないといけない、ポップじゃなくてはいけない、ライブで盛り上がりたい、そういう基本的な目論見があって作るじゃないですか。そこの縛りを排除すると、僕はとことん羽を伸ばせる。
 

ザ・インタビュー「LUNA SEAとX JAPAN、二つのバンドを行き来するギタリスト」

 
 SUGIZOはX JAPANの活動もあるし海外での活動も多い。ロンドンにいるかと思えば、ロサンゼルスにいるし。SUGIZOの国際感ってすごいよね?

SUGIZO 実はJUNO REACTORというイギリスのバンドもやっているので。今年で11年目になります。だからこれまでは海外での活動はJUNOとしての動きが最も多かった。90年代はロンドンに住んでいたこともあるけれど、2000年代に入ってからはロンドンよりもブライトンに行くことが多くて。JUNOはブライトンにずっと拠点を置いて活動しているので。僕はタイミングが合わなくて参加できてないんだけど、よくイスラエルに行っています。僕はそのバンドでさまざまなツアーをヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアでやってきました。面白いのは普通は行かないような国、スロベニアとかでやるのね。ブルガリアとか。すごく良かったのがウクライナ。キエフはすごく良かった。

 そこはマネージメントはどこがやってるんですか? ちょっと下世話は話ですが、イギリスでの動員は? ファンはX JAPANやLUNA SEAみたいにたくさんいるの?

SUGIZO JUNO自身でマネージメントもやってます。イギリス本国ではあまり活動を活発にしていないんですが、ギリシャでやったら5000人くらい来たりとかします。

 日本ではやらないんですか?

SUGIZO 日本でもちょくちょくやりますよ。なので、自分にとってはこの20年近く海外と日本、ヨーロッパとかアメリカとかアジア、そういう隔たりがなくなっちゃっているんですよ。自分が日本人であるってことを海外に行くと強く思いますよね。海外での活動が多いと、かえって日本のことがすごく見えてきたり、日本人である自分を誇らしく思ったり、日本人であることをちゃんと自分の特徴として認識するようになったりしました。ボーダーなくいろんな国と人と交わって共有してきた。でもね、トランプ政権になってから急にボーダーを感じ始めた。

 それはトランプだけのせいじゃない、全世界がそういう流れに入ってきている。

SUGIZO ポピュリズムが……。さまざまなところに壁を感じ始めている。中国にだってファンはたくさんいるし。映画だって音楽だって交わってるけど、政治になると難しい。

 でも、音楽や映画にはボーダーはないんで。文学にもね。我々にはボーダーはない。我々はボーダーなき表現者。

SUGIZO そうですね。
 

ザ・インタビュー「LUNA SEAとX JAPAN、二つのバンドを行き来するギタリスト」

 
 最後に、今後について聞かせてくれますか?

SUGIZO X JAPANのアルバムのレコーディングが佳境で、同時にLUNA SEAのアルバムのレコーディングが始まったばっかり。今年はLUNA SEAがデビュー25周年、そしてSUGIZOとしてのソロデビュー20周年。だから両方のアニバーサリーイヤーを飾るための作品を出すつもりで動いています。辻さん、よかったら僕のソロアルバムに参加してもらえませんか?

 え、なんだって? 本当に?

SUGIZO もちろん実現できるかは分からないんですけれど。僕が曲を書いて、辻さんに詩を書いてもらい、歌って欲しいです。

 まじで? それは燃えるなあ。実現するといいね! まずは、映画「TOKYOデシベル」を多くの人に観てもらって、サントラも聴いてもらいたいですね。サントラはいつ発売ですか?

スタッフ 5月17日に発売です。全国のCDショップ、上映する各映画館で発売します。

 今回の映画撮影では音楽監督であるSUGIZOと録音部の連中に助けられた。この映画はやはり音の映画ですからね。音と音楽の重奏感が半端ない。

SUGIZO 録音部の方々は本当に素晴らしかった。たまたま録れた花火の音とか、たまたま録れたお祭りの音とか、僕の中にはさまざまなシーンが走馬灯のように入ってくる。この映画の主人公は音、東京の環境音だと思ってる。音楽もその環境音にインスパイアされて、ちょっとそこに色を加えたくらいのものなんです。音源版「水平線の幻都」は最後、鐘の音とセミの声で終わっていく。その音を聞きながら4次元の中に入っていくような。特に、日本人って本音と建前の世界にいるじゃないですか。言葉がすごく重要。映画の中でも言ってることと思ってることが正反対ということがあって。エンディング・テーマ「夢想~鍵盤の夢、音の地図」はその表と裏を表現できたらなって思った。それを表現するのにピアノの弦がぴったりだなと思って。表面の皮膚や肉と、中の内臓が入れ替わっちゃってる。ていう。

 エンディングテーマ版の「夢想」がすごくて。それをみんなに聞いてもらいたい。普通、クレジットが出て、なんとなく主題歌が流れている中をみんなが立って会場を後にするって感じがあるんだけど、席を立てなくさせたいね。最後の最後まで聴いて欲しい名曲ですよね。大変だったんじゃないですか? ピアノ弦を鍵盤で打つんじゃなくて、ハンマーか何かで実際に叩いて収録したんでしょ?

SUGIZO 大変でした。ピアノの弦を1本1本叩いていって、それを録音して行ったんです。自分のピックで弦を弾いたり、ドライバーの柄のところで叩いたり、3、4種類くらいのいろんなもので弦を叩いて引っ掻いて、それを録っていった。全ての白鍵を。半音違いだったらサンプラーで調整できるので黒鍵は割愛しました。白鍵全部録るのに3日間かかりましたね。なぜかというと、ペダルをベタ踏みにしてサスティーンを全て録りたかったから。完全にオフにして、ポーンと叩いて音が消えるまで。低音弦ってサスティーンが1分以上とかあるんですよ。だから叩いて1、2分間シーンとして。雑音が入ったらやり直し……。

 3日間も? なんかSUGIZOって病的な感じするけど、病的じゃなくて病気だよね(笑)。

SUGIZO 病気ですよ。病気だと自分でも思うんですけど、そこで自分の信念と時間をきちんとかけて録った音って絶対的な力があるんですよ。

 うん、あれは本当に聞いて欲しい。その苦労を知らなくても鳥肌ものだけど、苦労を聞くと、あなたの身の上が心配になる(笑)。クレジットが始まるちょっと前からこの曲が始まるじゃない? それで、真ん中くらいで音の位相がガラッと変わるところがあって、第2章に入るんですが、そのあたりはもう原曲を超越していて、まさにSUGIZOがDebussyの魂と混ざり合う瞬間なんだけど、そこが特にすごい。

SUGIZO まさにそこで表の世界と裏の世界が瞬時に舞台転換してみせるんです。

 まさに二つのバンドの陰と陽を行き来するSUGIZOにしかできない表裏一体の術だね。みなさん、映画館でSUGIZOの魔術にかかってください。
 

 

Portrait photography by Kazuhiro Watanabe

 

ザ・インタビュー「LUNA SEAとX JAPAN、二つのバンドを行き来するギタリスト」

[TOKYO DECIBELS ~ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK~]
 
SUGIZO
 
01. 夢想 ~ 葦原を流れゆく風
02. 雲海の庭園
03. 夢想 ~ 夕映えの輪舞
04. 水平線の幻都
05. TOKYOデシベル
06. 夢想 ~ 鍵盤の夢、音の地図

発売日 2017年05月17日(水)
発売元 SEPHIROT
品 番 SPTC-1001
価 格 2,200円(税込)

ザ・インタビュー「LUNA SEAとX JAPAN、二つのバンドを行き来するギタリスト」

posted by 辻 仁成