WORLD FOOD STORIES

パリの味!? カフェの定番「クロック・ムッシュ」に迫る。 Posted on 2018/05/02 Design Stories  

「クロック・ムッシュ」をご存知ですか? 
クロック・ムッシュとは、フランスのカフェやブラッスリーの定番メニュー。バゲットサンドやウフマヨネーズ、オニオンスープなどに並び、フランスのカフェメニューに欠かせない軽食の一つです。
 

パリの味!?  カフェの定番「クロック・ムッシュ」に迫る。

どんなもの?
”パン・ド・ミ”と呼ばれるフランスの食パン(8枚切りくらいの厚さ)にハムとチーズ(中にはベシャメルソースがかかっていることも)が挟まれており、表面がカリっと焼かている、もしくは、表面をチーズで覆いグラタンされているもの。
簡単に言えば、温かいハムチーズサンド。とってもシンプルな食べ物です。それゆえ、カフェにわざわざ「クロック・ムッシュを食べに出かける」という人はあまりいないと思いますが、しっかりランチをする時間はないけれどちょっと小腹が空いた……という時、クロック・ムッシュの出番はやってきます。

どういう意味?
フランス語で、Croque(クロック)はCroquer「カリカリと音を立てる / かじる」という意味の動詞からきています。そして、Monsieur(ムッシュ)はご存知の通り、男性を呼ぶときの敬称です。それでは、どうして「カリカリムッシュ」という不思議な名前がついたのでしょうか……。

由来は?
どうやら、どの説も「これ!」という確証はないようですが、一つ有力な説がありましたのでご紹介しましょう。

1910年、パリ、オペラ座近くのキャプシーヌ大通りにあったカフェ「Le Bel Age」でのこと。オーナーであるミッシェルさんは、ある日、サンドイッチ用のバゲットを切らしてしまい、パン・ド・ミ(食パン)で代用することに。その時、バゲットのカリカリ感を再現させるため、表面をさっと焼きサンドイッチを出したのだそうです。すると、いつもと違うサンドイッチを出された常連客が「ミッシェル、この変わったサンドイッチ、入ってるハムはいったい何の肉なんだい?」と、からかい始め、ミッシェルは「ムッシュの肉だよ!」と皮肉たっぷりに返したのだという。その掛け合いがカフェ内の笑いを誘い、そのサンドイッチを注文する客が殺到したのだとか。ミッシェルは翌日からメニューに「Croque-Monsieur(クロック・ムッシュ)」という名のサンドイッチを追加、100年以上受け継がれる「クロック・ムッシュ」の誕生となりました。その数年後、フランスの作家マルセル・プルーストが著書の中で「オペラ座へ行った帰りに立ち寄ったホテルのバーでクロック・ムッシュを頼む……」という一節を書いたことがきっかけとなり、「クロック・ムッシュ」という名の軽食がパリからフランス全土に広まることになったとも言われています。ちなみに、クロック・ムッシュに目玉焼きを乗せると「クロック・マダム」に変身します。半熟の目玉焼きが乗ったクロック・マダムはちょっぴり贅沢な一品。


「クロック・ムッシュ」がパリ生まれだったこと、そして、ユニークかつ文学的な歴史を持っていたことには驚きでした。とはいえ、今ではあまりにも庶民的な一品であるため、特に「どこのカフェのクロック・ムッシュが美味しい」と人々の話題に上ることなどなかったのですが……。
ここ数年、フランスの料理界では古典回帰や”ルヴィジテ”(*)というスタイルが流行りを見せており、カフェの定番「クロック・ムッシュ」の存在も少しずつ見直されてきているようです。
* ”ルヴィジテ”とは、フランス語で「再び戻る」という意味。お料理の場合、「昔からある定番を新しいスタイルで提案する」という意味でよく使われます。

それでは、今、パリのカフェで食べられる正統派からルヴィジテされた話題のクロック・ムッシュ、クロック・マダム3つをご紹介いたしましょう。


Café Le Nemours <2 place Colette 75001 Paris>
残念ながら、発祥地であるとされるキャプシーヌ大通りのカフェ「Le Bel Age」は現存しませんので、まずはオペラ界隈で一番有名な老舗カフェ、Cafe Le Nemoursのクロックから。パレロワイヤルの入り口にあり、観光客と地元の人でいつも溢れるこちらのカフェは、2年前に改装されモダンな雰囲気に生まれ変わりました。メニューも一新されましたが、定番のクロック・ムッシュ(10ユーロ)とクロック・マダム(11ユーロ)は健在!
 

パリの味!?  カフェの定番「クロック・ムッシュ」に迫る。

ザ・王道の出で立ち、しっかり中までアツアツ、香ばしくグリルされたたっぷりのチーズ……正統派の美味さです。ボリュームたっぷり、付け合わせのサラダも美味しく、軽食というより立派な食事。お値段も手頃で、申し分ありません。


・Café Pouchkine <16 place de la Madeleine 75008 Paris>
お次は、ロシア系パティスリー Café Pouchkineのクロック・マダム(16ユーロ)です。ほとんどのカフェにはクロック・ムッシュとクロック・マダムがセットでメニューに載っているのですが、こちらにはクロック・マダムしかない……。珍しいなと思いながら注文し、待つこと数分__ なんと、目の前にロシア正教寺院のフォルムをした優雅なクロック・マダムが登場しました。
 

パリの味!?  カフェの定番「クロック・ムッシュ」に迫る。

屋根部分はメレンゲ、そして、土台部分はチーズとハムが薄いパン・ド・ミでロールされているという仕組み。一つ気になったのは、”マダム”の部分がメレンゲのみだったこと。黄身はどこにも見当たりませんでした(笑)。しかしながら、まさに”ルヴィジテ”されたCafé Pouchkineのクロック・マダムは、とっても斬新で美しく、何より美味。一口の価値ありです!


Sebastien Gaudard <1 rue des Pyramides 75001 Paris>
最後は、パティスリーで有名なSebastien Gaudardにてパリ一番と噂のクロック・ムッシュ(14.5ユーロ)を。
席に着き、メニューを開くと、そこにはしっかり”フィガロ紙のクロック・ムッシュコンテストでパリ一番のクロック・ムッシュ”に選ばれたことが記載されていました。期待が高まります。
 

パリの味!?  カフェの定番「クロック・ムッシュ」に迫る。

外見はお店の雰囲気にもぴったりなシンプルモダン。気になるそのお味はと言いますと、カリカリに焼かれたパンは軽いのにしっとり、ヴィエノワズリーが定評のSebastien Gaudard、パン・ド・ミへのこだわりが伺えます。中には厳選されたコンテチーズとフランス南部、アヴェイロン地方のハムが絶妙なバランスで挟まれていました。さすがはパリ一番に選ばれたクロック・ムッシュ。スタイリッシュな外見と具材の絶妙なバランスはパーフェクトです。
 

パリの味!?  カフェの定番「クロック・ムッシュ」に迫る。

カフェの定番メニュー、クロック・ムッシュ。こうしてしっかり向き合ってみると、その味の決め手は、パンの美味しさ、カリカリ具合、チーズの種類や溶け具合、アツアツの状態であるかどうか……などなど、シンプルだからこそ、いろいろな条件が味を左右していることがわかります。パリ生まれのクロック・ムッシュは、まさに少し気難しいパリジャンのよう。意外や意外、奥の深い食べ物でありました。

ちなみに、この3つを食べ比べてみたデザインストーリーズ編集部のオススメは、Café Pouchkineのクロック・マダム。パリにお越しの際は、ロシア色に染まる一風変わったこのクロック・マダムをぜひご賞味ください!
 

 
 

posted by Design Stories

Design Stories

▷記事一覧

デザインストーリーズ編集部(Paris/Tokyo)。