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レストラン KEI、冬のスペシャリテPosted on 2016/12/19  Posted by 小林 圭

レストランKEIでは年に一度ジビエの季節に作る料理があります。

 前オーナーシェフで、ジビエの王様と言われた、ジェラール・ベッソンさんのスペシャリテである「L’oreiller de la belle aurore(美しいオーロラの枕)」と呼ばれる羽根つきジビエを使ったパイ包み焼きです。

 最初に食べたときの衝撃たるやすごかったです。ごく普通のジビエ料理の一つくらいに僕は考えていたからです。

レストラン KEI、冬のスペシャリテ

このパイ包み焼きの中には5種類羽根つきジビエと2種類の野生のウサギ、フォアグラやリードヴォーなど、
なんと17種類ものお肉が入っていたのです。

美しい黄金色に焼かれパリっとした、12×12cmの大きさのパイ生地の中には、一つ一つの肉が、独立していながら、仲良く調和し、しかし一つの味を生み出している。しかもジビエのうまみを濃縮しただし汁を使ったクリームソースをシャンパン風味に仕上げたエレガントなソースで食べるのです。

軽さはないけど、骨格がしっかりとしたフランス料理でした。

後に、ベッソンさんはこんなこと言っていました。
「この料理はリヨンの地方料理でね、僕がまだ、見習いだったころ、オーブンから出した「L’oreiller de la belle aurore」(オレイエ・ドゥ・ラ・ベル・オロール)は、熱々で、こんがりと焼かれたとてもおいしそうなものだったんだけど、冷ましてからサービスする料理だったんだよ。それがなんて残念なんだろうと思ってね、数年後僕は、中身のいくつかの材料を見直して、この料理の伝統を解釈して温かく提供できるようにしたんだ。」と。

この「美しいオーロラの枕」の中には一人の偉大なシェフの歴史と哲学と物語が詰め込まれていたのです。

レストラン KEI、冬のスペシャリテ

その後、僕がこのお店を受け継いだ時、自分はフランス人ではないけれど、こういった料理は次世代に残していかなくてはいけないなと決意しました。この料理を作る許可をベッソンさんからもらい、さらには分解、再構築する許可まで頂き、3年前に今の形に作り直しました。

パイ包み料理は1つの物語です。

食べ手をどう思うかその人たちをどう驚かせるのかを考えて作っています。
なので、その時の変化によって、毎年少しずつレシピを変えたりもします。もちろんベッソンさんの許可を得て。

レストラン KEI、冬のスペシャリテ

今ではフランス人の業者さんや料理人、ジビエ愛好家がこの料理を目当てにお店に訪れてくれるようになりました。
日本人の僕が作るフランスの古典料理ですが、こうやってフランスの文化や伝統に触れられることができてとても幸せだと思います。

そして、僕の師匠でもあるアラン・デュカスさんが、
「ケイ、本当においしかったよありがとう。」と言ってくれたのです。
本当に嬉しかった。

こういう古典フランス料理を今後も訪れる世界中の美食家に食べて頂き、さらにフランス料理の魅力を伝えていければと思っています。

レストラン KEI、冬のスペシャリテ

しかし、この料理は、パリのジビエの一番いい季節の10月終わりから2月までの中でも、さらに材料が安定して揃うわずかな期間、だいたいひと月程しかご提供できない特別な料理なのです。

それだけに価値のある料理といえます。
ぜひ、機会があれば、味わってみてください。ジビエ好きにはたまらない一皿かと思います。 
 

posted by 小林 圭

小林 圭

Kei Kobayashi
シェフ。長野県生まれ。長野で料理人として第一歩を踏み出し、次いで東京へ。東京のフランス料理店に勤務する間に本場で学びたくなり、1999年渡仏。フランスでは地方の豊かさを知ろうと、南仏やアルザス地方の有名レストランを回る。2003年パリへ行き、世界的なシェフ、アラン・デュカス氏のレストラン「アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ」に職を得て7年間働く。この間最後の4年はスーシェフであった。2011年3月に自分のレストラン「Restaurant Kei (レストラン・ケイ)」をオープン。