WORLD FOOD STORIES

q.b.レシピのないレシピ帳 ~綿毛の心とフィレンツェと~ Posted on 2018/06/02 八重樫 圭輔 シェフ イタリア・イスキア

海外への留学、移住の際には入念な下調べや準備をしておくに越したことはないでしょう。
しかし僕はイタリアに来た時、イタリア語の勉強はおろか料理の経験さえも無かったので、始めはそれこそ右も左もわからない状態でした。それでも勢いに任せ、行ってみれば何とかなると考えていたあの無鉄砲さ。今考えると自分でも呆れてしまいますしそんな勇気もありませんが、若さゆえのあの行動力が無ければ今頃どうしていたのだろうと、ふと思う時もあります。
年月とともに毎日の生活に紛れ、いつの間にか変化をおそれるようになった自分をつまらなく感じている、あの頃の自分がどこかにいるのでしょうか。
 

q.b.レシピのないレシピ帳 ~綿毛の心とフィレンツェと~

イタリアで最初に住んだ町、フィレンツェ。
無鉄砲な割にマイペースな僕は、がむしゃらに頑張るわけでもなく、のほほんとした生活を送っていました。それでも数カ月もすると料理の腕はともかく、言葉のほうは”何とかなって“きて、イタリア語が聞き取れるようになりました。
ある日、家へと向かう小さなバスの中、アルノ川をぼうっと眺めながら吊り輪に身を委ね、イタリア人の会話に耳を傾けていました。
 

q.b.レシピのないレシピ帳 ~綿毛の心とフィレンツェと~

「あなた、今日は何を作るの?」
「市場でおいしそうなズッキーニがあったのよ。輪切りにして揚げてからパスタと絡めて……」

そんなおしゃべりが聞こえてきます。
へえ、イタリア人はこんな事を話しているのか。それにしても、美味しそうだなあ。
それからも色々な所で注意して会話を聞いてみると、食べ物の話題の何と多いこと。さすがは食の国イタリアだと感心したものです。
それは、イタリア料理の真髄は家庭料理にあると思っている僕にとって、何とも”おいしい話“でした。それぞれの地方のそれぞれの街、それぞれの家庭によって違う料理。それを垣間見るのは何とも楽しいもので、たまに招待されてよその家に食事に行くと、いつも何かしらの新しい発見があったものでした。今でもふとした瞬間に思い出すあの頃の気持ち、フィレンツェの街のにおい、鐘の音、雑踏。
 

q.b.レシピのないレシピ帳 ~綿毛の心とフィレンツェと~

あれから随分と時が経ち少しは大人になったつもりですが、そのぶん、臆病にもなってしまった気がします。
繰り返される日常と忙しさの中で、いつの間にか忘れていたもの。
それはきっと、ふっと息を吹きかけたら、たくさんの夢が舞い立つような綿毛の心。変化する事は決して何かを捨てることではなく、今の自分を乗り越えながら強くなる事だったはず。
そんな気持ちを失くさずに、これからも沢山の事や美味しいものにワクワクしていたいと思うのです。
 

q.b.レシピのないレシピ帳 ~綿毛の心とフィレンツェと~

さて、新年度から一人暮らしを始められた方も多い事かと思います。そろそろ新しい生活にもなじんできた頃でしょうか。
今回は、初めての自炊に挑戦している方、あるいは友人を招いて気軽なランチでも、と思っている方にピッタリな、とても簡単で経済的なパスタをご紹介します。

※タイトルのq.b.とは適量を意味するイタリア語 quanto basta(クアント バスタ) の略です。細かいことは気にせず臨機応変に、あなた次第のレシピにして頂けたら、という思いを込めて。
 

q.b.レシピのないレシピ帳 ~綿毛の心とフィレンツェと~

ブロッコリーのパスタ

★材料(4人分)
●ブロッコリー 大1個
●スパゲッティ又はお好みのパスタ360~400g
●オリーブオイル、塩、ニンニク q.b.(適量)
●ペコリーノロマーノ(羊乳の硬質チーズ。無ければパルミジャーノでもかまいません)q.b.
●好みで唐辛子、黒胡椒 q.b.

材料はこれだけ。今回も日本で手に入りやすい食材を使った1品です。
 

q.b.レシピのないレシピ帳 ~綿毛の心とフィレンツェと~

★作り方
①ブロッコリーを小房に分けて洗います。茎の部分も周りの硬い部分を取り除き輪切りにします。
②鍋にたっぷり湯を沸かして塩を加え、ブロッコリーを茹でます。
ここにパスタを時間差で入れますが、茹で時間に注意してください。ブロッコリーはやわらかめが良いので10分程の茹で時間。今回使ったスパゲティは茹で時間が8分のものですので、ブロッコリーを入れた3分後くらいに鍋に加えました。パスタの種類によって調整しましょう。
ただ、どのパスタも表示時間よりも1分ほど早めにあげて、仕上げはフライパンの中でします。アルデンテの食感を残すためです。
③ブロッコリーとパスタを茹でている間にフライパンにオリーブオイルとニンニクを入れて火にかけます。ニンニクが色づいたら、パスタのゆで汁をお玉1杯ほど加えて弱火にしておきます。茹で汁は後でも使うので、マグカップ1杯ほどとっておきます。
④パスタとブロッコリーが茹で上がったらフライパンに加えて強火にします。木べらでブロッコリーを軽くつぶしながら混ぜます。取り置いておいたゆで汁、塩を適量加えて、トロトロに仕上げます。最後にチーズを加えて出来上がり! お皿に盛ってチーズをかけ、好みで胡椒を挽きましょう。
 

q.b.レシピのないレシピ帳 ~綿毛の心とフィレンツェと~

q.b.レシピのないレシピ帳 ~綿毛の心とフィレンツェと~

ベーコンやアンチョビを入れる人もいますが、これだけでも十分なうまみが出ます。このパスタにお好みのワインと美味しいパン、それと簡単なサラダ、あるいはサラミやカナッペなどのおつまみがあればお洒落なランチになることでしょう。
一度覚えてしまえば即席で作れるので、時間がない時にも重宝します。忙しい時でもおいしいご飯を食べて、フワフワの綿毛の心を無くさないようにしたいものです。
それではよろしかったらまた次回、飾らない普段着の食卓でお会いしましょう。
 

q.b.レシピのないレシピ帳 ~綿毛の心とフィレンツェと~

 
 

posted by 八重樫 圭輔

八重樫 圭輔

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Keisuke Yaegashi
シェフ。函館市生まれ。大学在学中に料理人になることを決め、2000年に渡伊。現在は家族とともにイスキア島に在住。