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佐伯幸太郎の美女と美食三昧3 ジビエの名店「chez Michel」Posted on 2016/12/02  Posted by 佐伯 幸太郎

Chez Michelはジビエを出す数あるレストランの中でもピカイチ。
豊富なジビエの種類が揃っているだけでなく、味付けも変わらずクラシックで、そのどっしりとした存在感が堪らなくてさ。さっそく日程を決めて2名で予約。もちろん、カワイ子ちゃんと。

でも、今回はステファニーじゃないよ。
あの子ね、食べ終る頃にいなくなる。なんとなく、食い逃げされてんのかなって気が付き始めてさ。

食い逃げは男の仕事なんだぞ。でもめげないよ。
今日はロシア人モデルのアナスターシャちゃん。

佐伯幸太郎の美女と美食三昧3 ジビエの名店「chez Michel」

前菜、メイン、最後にデザートかチーズで35ユーロと割とリーズナブル。
ただ、ジビエを頼むといくらかかかっちゃうんだよな。ま、この時期しょうがない。ジビエの季節だ。
待ってたぜ、野獣たち。俺も野獣になってやる、というわけで、黒板にはずらりとメニューが並んでる。
これ見てるだけで燃え盛ってくる。

となりにロシア美人のアナスターシャ、燃えないわけがないでしょ! 
ああでもないこうでもない、とジビエのうんちく語って、口説くわけだ。

料理やワインに詳しい男はもてるからねぇ。
赤ワインの香りを嗅ぎながらウィンクしちゃった、エロいよなぁ。

佐伯幸太郎の美女と美食三昧3 ジビエの名店「chez Michel」

俺が選んだ前菜はジビエエキスの詰まったクリームスープ。
シナモンの香りがすごかった。
目の前に、小さめにカットされたフォアグラや栗が散りばめられた皿が置かれたと思うと、給仕がポットからクリームスープを皿に注ぎ込んだ。

口に運んでびっくり、複雑に広がるジビエのエキス、まったりとしたクリームの舌触り、クリームの熱で溶けかかるフォアグラ、濃厚な組み合わせなのに、全然くどくないときてる。
きっとシナモンがくどさを抑えてるんだろうね。

年齢を重ねた男ってのもこうありたいもんだ。
くどくない、しつこくないのに濃厚な舌触り。うーん、マンダム。

佐伯幸太郎の美女と美食三昧3 ジビエの名店「chez Michel」

アナスターシャは鴨のハツをチョイス。
気になって少し顔を近付けると、濃い色のソースからバルサミコのいい香りが鼻腔を刺激した。
酸味の効いた香り、それが余計に食欲をそそってくる。いろいろそそってくる。
鴨のハツの周りに盛られているイチジクの甘みがさぞかしその酸味とマッチするのだろう。

俺は酸味を追い掛けさらに顔を近付けちゃって、アナスターシャに押し返されてしまった。
おっと、くどくない濃厚紳士の俺としたことが。

佐伯幸太郎の美女と美食三昧3 ジビエの名店「chez Michel」

ジビエは詳しくないからコータローにお任せするわ、とアナスターシャが言うので、前菜に引き続きセレクトしたよ。

俺が雷鳥で、アナスターシャには鹿肉だ。
ザ・ジビエという感じだろ? 

ワインは俺が濃いめの赤を求めてBordeauxのPomerol 2007、アナスターシャにはちょっと柔らかめのCôte du Rhone 2014をチョイス。ジビエには赤だよ。 

佐伯幸太郎の美女と美食三昧3 ジビエの名店「chez Michel」

そして、ついに主役の登場だ。
雷鳥も鹿もまず目を惹くのがソースの色の濃さ。
変わらぬクラシックさを彷彿とさせる色合いに食欲と性欲がそそられる。

雷鳥が乗った皿は、ベリー系のソースで毒々しいほどに赤く、複雑で奥深い香りが立ち上る。
雷鳥のグリルの横には、ジロール茸、フォアグラ、雷鳥のミンチバーグ、ビーツなどが盛られ、グリルに使われたであろうハーブと塊のニンニクがボンと添えられ、更に砕いたノワゼットが振りかけられてあって、豪華絢爛。

皿から漂う、ナッツ、ベリー、ハーブ、そして肉々しい香りは、真っ赤な色合いも相まって、赤ワインのアロマをぎゅっと閉じ込めたような、芳醇な赤ワインをひっくり返したかのような贅沢な一皿。
周りをカリッと焼き上げた雷鳥の肉も、身は締まっているが決して固くなく、ジビエらしい獣の風味が口に広がる逸品だ。

佐伯幸太郎の美女と美食三昧3 ジビエの名店「chez Michel」

鹿の方は茶色というより黒に近いソースが印象的で、鹿肉の色の濃さと合わせると毒々しいほどに真っ黒な色合いの一皿。それを食べるアナスターシャの口元を盗み見るだけで、俺はすっかり犯罪者だ。
付け合わせの野菜やフルーツに白や淡いオレンジが並び、存在の耐えられないエロスを醸し出す。

「コータロー、びっくりよ。黒いソースは見た目と違ってとってもフルーティなの。この執拗なほどの甘さが鹿肉を引き立てている」だって。
訊いたかい。今夜は離すものか、俺の執拗な甘さ、くどくない濃厚さでお前のハートをゲッチュー。

食後、俺はチーズ、アナスターシャは洋梨のポワレを食べつつジビエの余韻に浸っていると、一人のアジア人が俺たちの席に近付いて来た。

「あの、日本の方でしょうか?」「は?」なんとこの青年こそがここのシェフだというからびっくり仰天。
老舗の名店のシェフが日本人青年? 
「実は三月からここを任されております」って。
「このジビエの品揃えに加えてクラシックな調理法と味わい、まさか日本人が作っているとは想像もしなかったよ」
って正直に告げたら、「僕は伝統を守る料理を愛しています」てなことぬかしやがった。
これがまた若くて男前でよ。

だからさぁ、君、男前の無邪気な笑顔はやめろっつーの。
あ、慌てて振り返ると、アナスターシャの目が星になってる。
「コータロー紹介して! このジビエのような勇ましいサムライを!」って、言われてもねぇ。
やれやれ。ともかくみなさんパリはジビエが美味しい季節になりましたよ。

また、次回お楽しみに。野獣死すべし。

佐伯幸太郎の美女と美食三昧3 ジビエの名店「chez Michel」

posted by 佐伯 幸太郎

佐伯 幸太郎

Kotaro Saeki
ライター。渡欧25年のベテラン異邦人。ワインの輸入業からはじまり、旅行代理店勤務、某有名ホテルの広報を得て、現在はフリーランスのライター。妻子持ちだが、美しい女性と冒険には目がない。モットー、滅びゆくその瞬間まで欲深く。