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南プロヴァンス限定の味。AOP認定ほやほやのチーズ「ブルス・ド・ローヴ」 Posted on 2018/05/10 久田 早苗 チーズ熟成士 パリ

フランスの南、プロヴァンス地方には他所では見られない「ローヴ」という種類の山羊がいます。この地方の原種で角が綺麗な曲線で波打っているのが特徴。
このローヴ種のミルク100%で作られたチーズが、プロヴァンスのフレッシュチーズ、「ブルス・ド・ローヴ」です。
 

南プロヴァンス限定の味。AOP認定ほやほやのチーズ「ブルス・ド・ローヴ」

ローヴのミルクを温め、お酢を加えることで固まり上がってくるカイエを試験管のような長い筒に掬い入れて作られます。
フレッシュ中のフレッシュであるため、プロヴァンス、アルプ、コートダジュール周辺でしか手に入らない貴重なチーズなのです。

このブルスが2018年3月18日、念願かなって、新たにAOP*に認証されました。名前はもちろん「ブルス・ド・ローヴ -Brousse de Rove-」。あくまでもローヴ種の乳にこだわっています。

*Appellation d’Origine Protégéeの略称で、EUが定める原産地名称保護制度

フランスのチーズでは46番目、山羊のチーズとしては15番目の認定になり、この地方では、「ペラルドン」、「バノン」に次ぐ3番目のAOP認定チーズに当たります。
優しい風味とみずみずしい甘味、現地でしか手に入らないこの希少なチーズ。頂くたびに、口の中に広がる贅沢感で心が満たされます。
 

南プロヴァンス限定の味。AOP認定ほやほやのチーズ「ブルス・ド・ローヴ」

南プロヴァンスといえば、オリーブオイルのAOPでも有名。蜂蜜やラベンダーをはじめ、栗など独特なものが手に入る土地ですが、私にとってその魅力は美味しいものだけではなく、原種の山羊たちに会うこともこの地を訪れる楽しみの一つとなっています。

南プロヴァンス地方のチーズ生産者はとても小さな農家さんばかりで、敷地はとてつもなく広いけれど、工房はとても小さなスペースというのが一般的。プロヴァンサル種や、アルピンヌ種、ローヴ種と合わせても60頭~90頭。ご主人が動物の世話、オリーヴの収穫、蜂蜜作り等を行い、奥様がチーズ造りを請け負うという規模で成り立っています。
 

南プロヴァンス限定の味。AOP認定ほやほやのチーズ「ブルス・ド・ローヴ」

<出来立てホヤホヤはほんのり温かく、甘みのあるお豆腐のよう>

 
ある時、お友達の紹介でローヴ種協会の会長さんにお会いし、「ローヴ種だけで作られるチーズはとても貴重なので、この土地以外ではこの名前を名乗ったチーズを作られたくない。本物を守りたい」と、熱い想いを伺ったことがありました。
ブルスは商品の性質上、AOPになっても地元でしか消費できませんので、それほど大きな商売的発展は見込めません。だけど、「ローヴ」という名前が原産地呼称を認定されたおかげで、大工場で作られるチーズとしっかり差別化がされ、生産者は伝統ある「ローヴ」を大切に守っていくことができます。
こうやって希少なチーズが守られることは、チーズに携わる者としてとても嬉しいことです。

南プロヴァンスに行かなければ口にできない「ブルス・ド・ローヴ」。
ぜひ、いつか皆さまにも味わっていただきたいです。
 

南プロヴァンス限定の味。AOP認定ほやほやのチーズ「ブルス・ド・ローヴ」

posted by 久田 早苗

久田 早苗

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Sanae Hisada
チーズ熟成士 株式会社 久田 取締役 副社長。1985年、東京立川市にチーズ専門小売店「チーズ王国」1号店を開店。2004年にはパリ16区に「Fromagerie HISADA」、2010年にはパリ1区に熟成チーズの販売とチーズカフェを併設したSalon du Fromage HISADAをオープンする。2008年、日本人で初めてのチーズ熟成士最高位の称号「Maitre Fromager」を受勲。2013年にはフランス共和国農事功労賞シュヴァリエ勲位、2015 年にはフランス共和国農事功労賞オフィシエ勲位を綬章。