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今、チーズを召し上がるなら「アルパージュ」がおすすめ Posted on 2017/07/30 久田 早苗 チーズ熟成士 パリ

パリはバカンスシーズンに突入しました。今年のフランスはどこへ行っても唸るような暑さです。
あまりの暑さでチーズは敬遠されがちですが、暑さに負けないカラダづくりにこそ「チーズ」は欠かせません!
夏バテ防止に、ぜひチーズを食べてください。

夏といえば、6月に入ると山のチーズづくりが始まります。
ヨーロッパでは、「アルパージュ」という表現があって、1500m以上の山で放牧された動物の乳を搾ってチーズを製造することを意味します。
高い山の上では、合理化はなされず、スイスの「アルパージュグリュイエール」と呼ばれるチーズは、今でも薪から火をおこし、銅の釜を使って昔のままの製法(機械化はなく、人間の手によって作られる)が守られています。

動物は自然と共に暮らし、古い銅釜、麻布や木枠を使い、搾乳、製造がその自然真っただ中で行われます。そこには遥か昔のチーズづくりがそのまま継続し流れているように感じます。

雪解けが終わって山に草花が生え始めるとアルパージュの始まりです。
村の製造所から必要な機材を運び込んで山に移動し、動物たちも長い距離を自ら歩いて山を登ります。
 

今、チーズを召し上がるなら「アルパージュ」がおすすめ

革命記念日の週末、私も暑さを逃れてオートサヴォアの山に登ってきました。
牛は広々とした山に放され、朝晩の搾乳時にだけ小屋に戻ってきます。
雨が降ろうと、雹が降ろうと、太陽が強く照りつけようと、牛が好きなだけ草を食べている風景はのどかで、時が止まってしまったかのように静かで心が休まります。

搾乳時間になると導犬が牛を迎えに行きます。大きな体に向かって機敏な態度で牛の足を甘噛みして方向を知らせています。よく走って、列から外れる牛たちを的確に導くのです。
彼らの働きは勇敢ですが、ほほえましくもあります。
 

今、チーズを召し上がるなら「アルパージュ」がおすすめ

昔から存在する石小屋やログの建物はビュロンとかシャレと呼ばれて価値のあるものです。
作り手はこの小屋に憧れますが、今では買うのも高すぎてなかなか手に入らないそうです
現在持っている人は作る場所というより熟成庫として使っている場合が多いですね。

山にはたくさんの高山植物が咲き乱れ、動物たちにとっては美味しいご馳走です。
牛たちよりさらに高く登り草を食む山羊たち。さらに、その残した草を食むのが羊たち。牛さんは山で寝ますが、山羊や羊は小屋に戻って夜を過ごします。
このように、それぞれが混ざり合うことはありませんが、動物たちは山で共に暮らします。

今年は天候に恵まれたせいで牧草も花も高山植物も豊富です。
いいミルクが手に入り、美味しいチーズが誕生しています。
 

今、チーズを召し上がるなら「アルパージュ」がおすすめ

<チーズ豆知識>

フランスには、アルパージュとして呼ばれるチーズがあり、ボフォールと、アボンダンス、ルブロッションがそれにあたります。

アルパージュの季節、すぐに食べられる「ルブロッション」は 最低熟成15日。エピセアの経木で挟まれているので木の香りが特徴、とてもクリーミィで優しい味です。

他にも3ヶ月の熟成で口にできる羊や、山羊乳の「トム」もさわやかで味わい豊かです。

5ヶ月、8ヶ月の長期熟成を待って食べるのが「アボンダンス(10㎏前後)」や「ボフォール(35㎏~40㎏)」
ともに外皮の側面が湾曲しているのが特色です。
やや硬め、旨味が凝縮していて噛むほどにテロワールを感じます。
 

今、チーズを召し上がるなら「アルパージュ」がおすすめ

いろんなカビにまとわれ美味しくなっているボフォール。

 

今、チーズを召し上がるなら「アルパージュ」がおすすめ

革命記念日にちなんで、「Vive la France(フランス万歳!)」と落書きされていました。

 
 
今、アルパージュのボフォールやアボンダンスをいただきたい場合は、2016年製造のものが市場に出ていますのでお求めください。
 
 

posted by 久田 早苗

久田 早苗

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Sanae Hisada
チーズ熟成士 株式会社 久田 取締役 副社長。1985年、東京立川市にチーズ専門小売店「チーズ王国」1号店を開店。2004年にはパリ16区に「Fromagerie HISADA」、2010年にはパリ1区に熟成チーズの販売とチーズカフェを併設したSalon du Fromage HISADAをオープンする。2008年、日本人で初めてのチーズ熟成士最高位の称号「Maitre Fromager」を受勲。2013年にはフランス共和国農事功労賞シュヴァリエ勲位、2015 年にはフランス共和国農事功労賞オフィシエ勲位を綬章。