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パリ最新情報「パリの超キュートな手芸屋さん、ご紹介!」 Posted on 2021/10/31 Design Stories  

パリをそぞろ歩きしていると、素敵なアンティークショップに出会うことがある。
ブロカントの店や古着の店など、どのブティックにも「店主の哲学」が反映されていて、訪れる人はその佇まいに毎度ワクワクさせられるものだ。

フランス人は物を捨てずに大切に使う、というのはよく知られている話だが、「洋裁」の分野もフランスらしい文化の一つ。
そんな洋裁技術を影で支えているのが、「mercerie(メルスリー)」の存在である。

パリ最新情報「パリの超キュートな手芸屋さん、ご紹介!」



mercerieとは、フランス語で手芸屋さんを意味する。糸やボタン、リボンなどの修理に必要な備品、生地などを扱っているブティックだ。
パリにはそんなmercerieがいくつか存在するが、なかでもオペラ地区にあるUltramod(ウルトラモッド)は200年近くの歴史を持つ老舗店。
19世紀から時が止まったかのようなレトロな雰囲気、所狭しと並べられたアイテムの数々はもはやギャラリーのようで、手芸に詳しくなくとも一見の価値がある。

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今回、この老舗Ultramodのオーナー、マダム・モランさんに近年のフランスの洋裁事情、リメイクの良さなど、「作ること」にまつわる貴重な話を伺うことができた。

まず、Ultramodの創設はなんと1832年だという。日本では江戸時代、大塩平八郎の乱が起きた頃である。
道路を挟んで向かい合わせに2店舗を構え、一つは手芸材料をメインに、もう一つは主に帽子を作るための材料とインテリアの商材を置いている。

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地球カレッジ

コロナ以前はアメリカ、ブラジル、日本を中心とした顧客でにぎわっていたそうだが、度重なるロックダウン、さらには黄色いベスト運動、パリの交通ストライキなどで苦戦を強いられた。
それでもロックダウン中に「マスク」を手作りする人が増えたり、ステイホームで手芸を新たな趣味にしたりと、Ultramodはリバイバルの的となった。

街の常連さんから観光客、ディオールやメゾン・マルジェラのクチュリエなど幅広い客層があるそうで、最近ではNetflixドラマの「エミリーインパリ」のスタイリストも訪れたという。
扱う商材は主にフランスのリヨンやサン・テティエンヌといった、絹・リボンの名産地から取り寄せている。

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「フランスでは年配の方か、逆に若い人が手芸を楽しんでいますね。1990年代からは政府が洋裁教育に力を入れていなかったこともあって、青年層では物作りをする人が少ない。今の若い人の方が環境について考えていて、リメイクの動きに繊細です」
とマダム・モランさん。

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次の世代のためにも「捨てずにリメイクする」教育が家庭や学校でもっと広まってほしいと語る。
Ultramodを訪れる人は「素敵な材料ばかり」「近くのmercerieが閉店したからパリに買いに来なきゃ」と口々に言うそうだが、嬉しさよりmercerieが次々と無くなっている現状に胸を痛めているという。

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ボタンだけで1万点以上、数えきれないほどのストックがあるというUltramodでは、がっかりさせるものが何一つなく、空間そのものが心地よい。
訪れる顧客が何を求めているのか、店側がよく理解していることがひしひしと伝わってくるようだ。
そして、ハンドクラフトの素晴らしさを伝えるマダムのお気に入りコーナーは、「グログランリボン」だそう。

ハットのデザインなどに使われ、アイロンで伸び縮みするのが特徴のリボン。
Ultramodではかなりの種類、カラーを取り揃えているため、古くなって傷んだ帽子やバッグもこうしてお直しをすることができる。

接客方法はクリニックのカウンセラーのように、お客様からどこをどう直したいのかを聞き、ぴったりの糸や材料をアドバイスするという。
「直したい服や小物と一緒に来店してくれれば、絶対に解決法を見つけますよ」というマダムの言葉がとても心強かった。

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とはいえ、洋裁がそう得意ではない人にとってmercerieは少し敷居が高いところもある。
マダム・モランさんはそれでも「手芸じゃなくても、物を一から作ることが大事」だとし、自分が「好きな物・身近な物」からトライすることを勧めていた。

また、Ultramodでは「洋服に第二の命を吹き込む」アップサイクルな縫製のワークショップも開催し、フランス・クチュールの素晴らしさを伝え続けている。
日本人スタッフもいるとのことで、観光で訪れた際に言葉の心配がない、というのもありがたい。

そんなマダムの目標は、これから20年現役でお店に立ち続けること、そしてこの雰囲気を保ちながら、永遠にUltramodを継続させることだそうだ。
「私に会いに来てくれる人がいる、そして一緒に『答え』を見つけることが何よりの喜びです」という彼女の言葉に、フランスの確然たる職人魂を感じた。(オ)

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