JINSEI STORIES

退屈日記「日本型変異種が発見、とラジオで言い出した!? ちょっと何言ってるの」 Posted on 2021/01/11 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、今、フランスアンフォというこちらのラジオ局のアナウンサーが「日本型変異種が発見されました。外国から帰国した日本人4人から今までのものとは違う変異コロナが検出されました」とアナウンスしだし、慌ててヤフーニュースなどで調べたけど、見当たらなかった。もしかして、昨日のブラジルから帰国されて感染が確認された4人のことかな、と思った。「バリオン・ジャポネ」とアナウンサーが声を大にして言っていたのだけど、要は、「日本型変異種」という意味である。ブラジルの変異種が日本で発見されただけじゃん、と思ったけど、なぜかそれが「日本型変異種」として定着しそうな感じになっている。ネットで調べたら、類似記事がすでに出ていた。こうやって報道されていくと、フランス人は日本が大変なことになっていると思うに違いない。大変なことにはなってるけど、英国や南アほどじゃない、、、、今のところ。

退屈日記「日本型変異種が発見、とラジオで言い出した!? ちょっと何言ってるの」



そういえば、ぼくの会計士さんの奥さんで友人のアリスさんからメッセージが入り、「日本で感染爆発が起こりつつあると聞いたけど、ご家族とか大丈夫?」と心配されてしまった。こんだけ感染者が増えているフランスの人に心配されるほどではないよ、と返しといたけど、「でも、今まで千人もいなかった感染者が何倍もあっという間に増えたのだから、ここからは私たちが経験したことと同じ道を辿るのじゃない?」というありえそうな意見だったので、その後、返事は戻していない。でも、ヤフーニュースで成人式が普通に行われていて、そこの都市の市長が感染して欠席しているという記事を見つけた。いったい、何が起こってるのか、ぼくは浦島太郎のような感じになっているので、ちょっとだれかに東京最新情報を送ってもらわないとならないくらい、今の日本がどういう精神的状態にあるのか、心配にもなる。とある雑誌の編集者さんから、「国や自治体のトップが明確なエビデンスに基づいたわかりやすい指針と決意と覚悟を示すことができないためにみんなが不安と混乱に陥っています…」というメールを受け取った。

退屈日記「日本型変異種が発見、とラジオで言い出した!? ちょっと何言ってるの」



平常心という言葉があるけれど、ぼくは平常じゃない時にこそ、この言葉がとっても必要なのだ、と思う。平常心を人間が口にする時は間違いなく平常ではない時なのだ。ぼくは毎日、平常心で生きようと心がけている。ということは今が平常な状態ではないのだ。そういう時、ぼくはこうやって日記を書いて、今の自分を言葉にしていく。或いはキッチンに行き、時間の必要な料理、例えば煮込み料理なんかを作り始める。やらないとならない毎日の出来事をきちんとこなす生き方の中で平常心は戻ってくるからだ。まわりが騒がしい時にこそ、ぼくは日常に逃げるようにしている。そこには平常がある。こうやって、一字一字をタイプすることで、自分の考えがまとまっていき、落ち着いてくる。もしも、あなたが慌ただしく、ちょっと苦しい今を生きているならば、日記などをつけてみたらどうだろう。落ち着かない日々ならば、料理など普段やるべきことをもう一度やってみるのがいい。意外と、温かく手美味しい料理を最後に食べることが出来るので、さらに、気分が落ち着く。自分を取り戻す運動とぼくは名付けている。そうすることで不安はある程度緩和され、少しずつ遠ざかっていくのだ。平常じゃない時にこそ、平常心を持つように心がけることが大事なのである。
「今日の一言」
平常じゃない時にこその平常心なり。

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