JINSEI STORIES
父ちゃんの料理教室「イタリア・ニョッキ 対 邪道フランスお焼きニョッキ、対決~」 Posted on 2023/01/20 辻 仁成 作家 パリ
息子よ、いいことを教えてやろう。
日本語に「臨機応変」という言葉がある。
知っているかな?
その時々の場面や状況の変化に応じて,適切な処置を施すことを意味する。
この言葉、アフターコロナのこのご時世、今、一番人類が必要としている熟語でもあるのだ。
その臨機応変の中に、パパと君が生きる日常がある。
この日常も世界の変容の中で臨機応変に少しずつ変化をしていくべきものなんだ。わかるか?
方法は自分たちで考えていくしかない。しかし、どんなに世界が変わろうとも、大きく変化しないものがある。
いいかね、それがキッチンだ。
キッチンを侮るな。
どんな偉い人間であろうと、キッチンがなければ豊かに生きることが出来ない。
そしてキッチンを支えていくのが「美味しい料理」たちなのだ。
美味しい料理を作ることが、今、この苦しい戦争やコロナ禍の世界でどれだけ人間的なことか、・・・。
だから、パパが持っている技術と経験と知恵を君に手渡したい。君は未来の家族のために、いつか、ここで臨機応変、美味しい料理を作ってあげてほしい。わかるよね?
毎日、創意工夫した美味しいものを食べられることが人間にとっては大きな生き甲斐に繋がるのだから、…。
今日、パパが君に教える料理は、イタリア人が考え出したニョッキだよ。
ニョッキは腹に溜まるパスタなので、イタリアでは週中の木曜日に食べることが多くて「gnocchi Giovedì(ニョッキ・ジョヴェディ)」、つまり「木曜日のニョッキ」と呼ばれるようになった。
今日は木曜日なので、ちょうどいいね。
二種類のニョッキを作る、まず、イタリアの伝統的な茹でるニョッキと最近フランスで流行っている「焼きニョッキ」だ。
イタリア人はこのフランスで流行っている焼きニョッキのことを軽蔑しているからな、イタリア人の友達に言うなよ!
「邪道」と怒られるに決まっている。
カリフォルニアロールがアメリカで出現した時、多くの日本人がアメリカ人を鼻で笑った。
でも今やカルフォルニア巻は市民権を得た。
焼きニョッキもまもなく、イタリアでも流行ることになるだろう。
え? もうイタリアの若者たち、食べてるって、あはは。
それだ、それが臨機応変に生きるということさ。さっさと頭を切り替えるってことだ!
じゃあ、作るぞ。まずは伝統的な方から、茹でるニョッキだ。
大鍋に水を入れ、丸のままのじゃがいもを入れて火にかけ、20~30分を目安に竹串などがすっと通って柔らかくなるまで、茹でる。
出たね、竹串、もうわかるだろ? これがすっと入れば中まで火が入っていることになる。
そしたら、茹で上がったじゃがいもの皮をむき、ボールに入れてフォークなどでよく潰す。
ここに小麦粉と塩を加えてじゃがいもと混ぜ合わせ、卵黄も加え混ぜていこう。
まな板でもいいけど、台の上に打ち粉をし、生地が滑らかになるまでこねすぎないように注意しながら成形していけ。
生地が柔らかすぎる場合は小麦粉を足すこと。
生地が手につかず滑らかになったら4等分くらいにして棒状に伸ばし、包丁で1個10gを目安に切っていくんだ。
ほら、だんだん、ニョッキっぽくなってきたな。
切ったニョッキを丸めてだな、フォークの先を押し付けて、そこに模様を付けていく。
これ、パパは大好き。こういうコツコツと楽しい下準備が料理の醍醐味でもある。
全部のニョッキに模様が付いたら、多めに小麦粉を敷いたバットに並べていくんだ。
さて、次に、ソースを作ろうか。鍋に白ワインを入れて火にかけ、アルコール分を飛ばしたらパルメザンチーズと生クリーム、塩・こしょうを入れ、沸かし、沸騰したら火を弱め、少しとろみが出るまで煮詰めていく。
ソースはこれでOK、ちょっと横に置いといて。
別の鍋に湯を沸かし、塩とオリーブ油を入れて、ニョッキを茹でる。
2~3分してニョッキが浮いてきたら水気を切りながら、隣で待機しているソースの入った鍋に加え絡まぜる。で、お皿に盛ったら、完成となる。
そして、邪道な「焼きニョッキ」は、バットに並べて小麦粉を叩いたニョッキを茹でずに、そのままフライパン(テフロンでね)で焼いていく。
バター10gくらいとオリーブオイルを少々、弱火でカリカリになるくらいじっくりと焼いていくんだ。
最後に、お醤油を数滴垂らす、オー、マンマミーヤ、最高!
砂糖醤油焼き餅のような触感、これはイタリア人に怒られるから、ロベルトにだけは内緒にしておけ。さぁ、喰うか!!!
■材料
<ニョッキ>
じゃがいも 500g
小麦粉 150g
卵黄 1個
塩 小さじ1/2
打ち粉(小麦粉) 適量
オリーブ油 大さじ1
※焼きニョッキにはバター15g、醤油少々を!
<パルメザンソース材料>
パルメザンチーズ 50g
生クリーム 150cc
白ワイン 50cc
塩・こしょう 適量
ボナペティ!!!!!
そんな熱血父ちゃんが、もう一つの本業でもある文筆家として、講師をやる、熱血オンライン文章教室が、今年もまもなく、1月29日に開催されます。本年度一回目ですけど、応募いただいた60編くらいのエッセイの中から、こうしたらよくなるよね、という文章を選びまして、一緒に推敲方法や、構造調整や、文章の書き方などを細かく、指導してまいりたいと思います。大事なことは、どうやったら、人を感動させられる文章を書くことが出来るのか、ということ。アマチュア、セミプロの皆さんを対象に、勉強会やってみたいと思います。ご興味ある皆さんは、下の地球カレッジのバナーをクリックしてみてくださいませ。
そして、5月29日のオランピア劇場での父ちゃんの単独ライブ、これはね、たぶん、もう生涯で一度しかできないライブだと思います。間違いなく、ぼくの歴史の中で、最高の瞬間になるはずだから、見に来てほしいです。
チケットは、パリのピア、こと、フナックのチケットセンターで普通に購入することが出来ます。
さらに、日本からの皆さまには、朗報。
JALパック・パリが企画したライブ翌日のランチ会が「完売」したことを受け、参加できなかった人のために、当日、追加でランチ会がもう一回行われることになりました。まだ、先のことですが、パリ旅行を計画されている皆さん、ご参考ください。詳しくはこちらの、URLをクリックしてみてください。
☟
そして、NHKの「パリごはん」来月、新作(秋冬編)が登場をします。
2023/2/17(金)後10:00~10:59【BSプレミアム・4K同時】です。ついにちくわず男の義和Dが編集に入った模様です。4か月半に及ぶ、父ちゃんのアフター子育ての記録です。引っ越しあり、三四郎との旅もあり、てんこもりですぞ。
「辻仁成のパリごはん 2022年秋冬」(59分)
そして、再放送もあります。
2023/2/21(火)後5:00~5:59【BS4K】※再放送
2023/2/21(火)後11:00~11:59【BSプレミアム】※再放送