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退屈日記「オリンピックの開会式、フランスメディアは高評価目立つ」 Posted on 2021/07/24 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ぼくの家のテレビが調子悪く、ぼくはオリンピックの開会式を観ることが出来なかった。
ネットで、ドローンとか、花火の一部映像を見ることが出来た。
綺麗だな、と思ったけど、日本でどのように受け止められているのか、ラインニュースとかで読む限りの情報しかぼくには分からない。どのような空気感の中でオリンピックはスタートしたのだろう・・・。
それで、ぼくはいつもの我が町の仲間たちやママ友たちに、
「オリンピックの開会式、観たかい? どうだった? あなたの印象を教えてほしい」
とメッセージを送ってみた。
アドリアン、カリンヌ、ソフィア、ピエール、ロマン、ジャンフランソワ、オディール、リサ、レテシア、フランソワーズ、など、10人ちょっと、それからイタリア人の友人、マルコ、アンドレア、ロベルトなど5人くらいに、投げかけたのである。
ところが、こんなにメッセージを送ったのに、それが誰一人、観てないという返事で、逆に、ちょっと驚いた。
「ごめんね、バカンス中で家族サービスに忙しく。きっと日本のことだから素晴らしい開会式だったろうね」
というつれない意見ばかりであった。じゃあ、メディアは、どうなのか?

退屈日記「オリンピックの開会式、フランスメディアは高評価目立つ」



それで、フランスの情報誌などを斜め読みしてみた。
ジャーナリストの評価は、フランスでは実際、結構よかった。批判よりも、これも意外なことに、良かった、という方が多かった、と思う。
だいたいまとめると、
「一年の延期を得て、コロナで多くの犠牲をだしたこの世界の中で、その精神的な配慮を感じる日本らしい節度を持った大人しいが綺麗な式典であった」
という感じの記事が目立った。

ただし、ニュース専門サイトのBFMなどでは、中身よりも、むしろ、スタジアムの外で行われている反対デモが大きく扱われており、「日本国民が二分している」理由について専門家たちが議論をしていた。

イタリアのライターさんからも「オリンピックは世界の再出発で意義あるもの」とラジオでは言ってましたよ、という情報を貰ったのだけど、その方の周りの人の中にはオリンピックが開催されていることさえ知らない人がいるのだとか・・・。
他の国、英国やスペインやドイツのライターさんらにも随時、情報を貰いたいと思っている。
ピエールから届いたこのメッセージが一番、今のフランス人たちのオリンピックへの関心事の低さを物語っているのかもしれない、・・・
「ごめん、辻、今、ぼくは2人の娘と海にいて、子供たちの面倒でへとへとなんだ。一緒に泳いだり、食べさせたり、だから、テレビを見る時間もなくて。でも、日本のことだからきっと素晴らしい開会式だったと思うよ」

退屈日記「オリンピックの開会式、フランスメディアは高評価目立つ」

G7の中では、唯一参加した、マクロン大統領・・・。



もう少し、詳しいフランスでの報道のされ方や、次のオリンピック開催国でもあるフランスはこの日本のオリンピックをどう受け止めているのかなど、或いは実際にパリで現在行われているパブリックビューイングの模様も取材し、明日までには記事にまとめたいと思っている。
「コロナの時期に、スポーツの祭典をやることの難しさ、もしかすると、日本じゃなかったら、出来なかったことかもしれないね」
と言ったのは、いつもの辛口・哲学者のアドリアンだった。

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