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退屈日記「デルタ変異株に、今、罹らないために父ちゃんがしていること」 Posted on 2021/07/29 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、今日の東京都の感染者数が3865人ということで不安な方が多いと思う。
欧州も感染拡大しているので、変異株はこれまでとは違う感染症だと意識を変えることが必要かもしれない。
ぼくも、日々、感染しないように、ささやかながら努力を続けている。
その前に、ちょっと気になることだけれど、日本のメディアや政治家が「欧州に比べたら感染者がうんとすくないので大丈夫」的な発言をよくされているが、まず、これを真に受けない方がよいだろう。
菅首相も「英国よりうんと少ない」と発言されていたが・・・。
よくないところは、検査をきちんとしないで、感染者の数字だけ欧州と比較する、いわゆる数字のマジックでの日本安心神話を築いてる点である。
というのは一昨日のデータだけど、東京都の検査数は8716人で、陽性率が約17%もある。
比較しないとならないのは、感染者数じゃなく、陽性率だ。
そして、東京都の17%という陽性率は驚くべき数字である。パリはちなみに、2,8%の陽性率。東京の6分の1である。



陽性率2,8%しかないのに、フランス全国の感染者は2万5千人を超えている。
多くの人が検査をして、無症状の人も含め、明るみになった正確な数字、ということだ。
ようは、いたるところで、気軽に検査ができるので、感染者が多く出るのも当然なのである。
大事なことだが、感染した人を特定することで、感染者をアプリが追跡し、レストランで濃厚接触者と同席した場合、アプリから知らせが来る。
検査を増やすことの重要性は、長い目でみれば、コロナを把握し、抑え込み、克服するうえで必要不可欠なことだと思うのだが・・・。

ちなみに、フランス全国の検査数は1日に約70万件ほど。
パリの数字がいま、わからないけど、フランスの人口は6千万人。 東京は一千万都市なのに8716人の検査数なのだ。
パリの検査数規模感で検査をすれば、東京の感染者数は間違いなく相当出るだろう、・・・。
だから、もっと注意をする必要がある、ということなのである。

欧州はPCR検査は無料(各街角に検査場がある)。日本は3万円とか、空港では5万円とかかかるらしい。
裏を返せば、いっぱい罹っている人がいるかもしれないけど、検査をすると高額とられるので、しない人が大勢いるということではないか。
今、出ている3865人は症状がきつくて、病院で検査をしたら、陽性でした、という方々じゃないかと思う。
ぼくの東京の知り合い、「PCR検査受けたいけど、高いし、症状ないから受けません」と言う人が結構いる。
欧州は、症状なくても、みんな検査場で気楽にどんどん受けている。
なので、感染者数で比較をしちゃいけない。検査数が違いすぎる。
テレビのコメンテーターさんらが「フランスなんか2万もいるんですよ、それに比べ、日本は安全でしょ」と持論を展開されているけど、全く違う、ということなのである。
ともかく、欧州も日本も、どっちも感染拡大をしているんだから、お互い最大限気を付けましょうよ、とぼくは言いたい。



一番、効果があるのは、昨日のパリ最新情報で書いたとおり、やはりワクチンということになる。
たとえば、ファイザー社のワクチンの場合、二回接種するとデルタ変異株に対して、88%の有効性があるということがわかった。アストラゼネカだと67%の有効性、結構いい数字だと思う。 日本では、今、ワクチンが足りないということなので、待つしかないけれど、打てるタイミングが来たら、打った方がいい。
コロナに罹ることでぼくが一番気にしているのは、重症化も怖いけど、後遺症だ。後遺症に関しては、まだ研究結果がまとまってないのが怖い。



いろいろと恐ろしい後遺症が報告されているから、罹らないようにするしかない、のでぼくは(もちろん、ワクチンは怖いけど)ワクチンを選んだ。
ぼくは、仕事じゃないかぎり、出来るかぎり、家から出ないようにする。というのは、本当に感染力が強く、すれ違っただけでうつった例もあるくらいだ。
しかも、これまでの潜伏期間より長い場合もあり、気づかず感染拡大が起きている。
従来型とは全く別の感染症だと思うくらいの用心が必要だということだろう。
デルタ変異株の脅威はコロナ禍が次の段階に入ったことを物語っている。
相変わらず自分で自分を守るしか、手がないのだ。
でも、それが一番有効な手かもしれない。

退屈日記「デルタ変異株に、今、罹らないために父ちゃんがしていること」



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