JINSEI STORIES

退屈日記「主婦業に疲れた時に、やってほしい、十か条」 Posted on 2021/11/30 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、不意に家事とか料理が出来なくなる時がある。
それは人間なのだから、まず、当然のことである。
毎日のルーティンに疲れて、動けなくなるのであれば、それは自分が人間だからだ、と思えばいい。
ぼくなんか、毎週のように家事放棄癖がおこり、息子がない時間は、ごろごろとしている。
一食や、二食、適当なものを作ればいいし、まず、大事なのは自分なのだから、調子が悪い時は、何もしないに限る。
家族だって、具合が悪い、と言えば、理解してくれるし、人間だもの・・・
それでも、どうしても家事をやらないとならない時も、人間にはある。
そういう時は、以下の十か条を心で唱えてみてもらいたい。
特に実現できないものがあってもいい。唱えるだけでも、楽になります・・・。



ぼくが考案した「主夫の復旧十か条」に従い、自分の復旧につとめることを、まずは、ダメ元で試してもらいたい。

1,まずコップ一杯の水を飲むべし。
(これは、本当にききます。気づかないうちに、身体の流れが止まっていることがあるので、水を飲んで、すっと流す。体内が動き始めるので、元気が戻る…)
2,床に大の字に寝て地球を背中で感じるべし。
(何も考えず、宇宙と一体になるイメージで、お願いします)
3,ゆっくり深く肺の隅々に届くように呼吸をするべし。
(水と似ているのですけど、空気を深く吸い込むことで細胞にエネルギーがいきわたります)
4,自律神経が集中する胸の中心を指先でやさしくさするべし。
(これは本当に効くので試してほしい。降り積もった雪が払われるような感じになり、安心します。重症の場合は、手のひらでやる方がいいかもしれません)
5,命より優先するものはないので、必要ないものはすべて放棄するべし。
(当然のことです。ご自分の命をまず、優先しなきゃ、と自分に言い聞かせてください。言われた自分は涙もの、ですよ)
6,家族に不調を伝え、今日を特別休養日とするべし。
(最後は家族の協力が必要です。訴えることで、自分の現状を自分が理解することもできます)
7,無理することは何もない、誰の人生だ、自分が大事、と言い聞かせるべし。
(その通り、誰の人生なんだよ、とぼくは苦しい時に、その苦しみを解き放つために、このおまじないを口にします。自分の人生じゃん、馬鹿らしい。自由に生きたろう、と思えたら、楽になりますよ)
8,気力が戻るまでひたすら寝るべし。
(寝るのが一番です。辛い時は、一度、やらなければならないことを放棄して、ふて寝をしましょう。起きたら、世界が少し違って見えるはずです)
9,携帯は必ず切るべし。
(本当につらい時は携帯に逃げないで、空を見ることをお勧めします)
10,考えることをやめるべし。
(諸悪の根源は、考えすぎることですから、一度、考えるのをやめて、ぼうっとしてください。まずは、そこから・・・)



この人生の再起動は有効である。
人間、聖人君主であろうと、不調な日というのはある。
そういう時は、絶対に無理をしてはいけない。
少しでも、変だな、と不調を感じたなら、その都度、休むのがいい。
人生は長いので騙し騙しというのか、休み休みというのか、そういう調子の悪い時は乗り切っていくしかない。
そこで無理をすると、体調がこじれて、大病につながったりするので、まずは我慢しないことが大事だ。
何よりも、誰の人生か、と自分に言い聞かせてみればいい。
それはほかでもない自分の人生なのである。
不調を感じるということは、何かが自分内でブレーキをかけているのだから、立ち止まったり、寝転がったり、ストレッチをしてストレスを追い出すのは生き物として当然の権利なのである。
人のせいにしても、埒が明かないので、上手に放棄することだ。
さてと、ということで、ぼくは今日、これから、午前中の家事を放棄します。

つづく。

退屈日記「主婦業に疲れた時に、やってほしい、十か条」



自分流×帝京大学
地球カレッジ