JINSEI STORIES

滞仏日記「主婦が毎月自宅で、いくら分の仕事をしているのか、計算してみた」 Posted on 2021/11/02   

地球カレッジ

某月某日、家事も仕事も人間関係も今一つ、やる気が出ない父ちゃんである。毎日、ご主人やお子さんのためにご飯を作ったり、掃除をしたり、家のことをやっている主婦(主夫)の人はすごいな、と食器を洗いながら、考えを巡らせている。
家事を仕事として、これを現金で換算するといくらになるのだろうと思って計算をした。
フランスの平均的なお手伝いさんの料金が一時間15ユーロなので、一日、8時間、(土日をその半分と計算)働いたとして、3000ユーロくらい、つまり、日本円で39万円と出た。
まぁ、そのくらいのお金を貰わないと毎日、人の家のお手伝いはできないな、とは思う。
フランスの一人暮らしのお金持ちのお爺さん、お婆さんは住み込みの人がつきっきりで(二人体制でやっている)たぶん、住み込みだからもっと貰ってるかもしれない。この計算の仕方には異論もあるだろうけど、ともかく、主婦の人は実は大変な仕事量を抱えているということは間違いないし、サラリーマンと比較しても負けない気がする。

滞仏日記「主婦が毎月自宅で、いくら分の仕事をしているのか、計算してみた」



しかし、実際は、家事は仕事に計算されない。生きることだから、当然だということだろう。
家の掃除をしたり、ご飯を作ったり、買い物をするだけでお金をもらえたら、ぼくはどんなに金持ちになったか、と考えて、食洗器から洗い終わった食器をとって、戸棚にいれていく。
それから、キッチンの、食洗器の前に座り、コーヒーを飲みながら、ツイッターとかインスタグラムなどを見て休憩している。
そうだ、ぼくは休憩の時間にツイートをしているのである。今朝は、ダンチューの植野編集長から「辻さん、パリの食べるスープが、Amazonのその他の西洋料理部門で一番になりました」と連絡が入り、一瞬、喜んだのだけど、その他の西洋料理部門って、なんだろう、と思って、苦笑してしまった。
でも、そういう一喜一憂をキッチンでぼくは味わっている。息子の咳がとまり、風邪は治ったみたいなので、隔離を解除してあげて、今日は食堂でご飯にしようと思って、何を作ろうか悩んでいたり、昨日は、蛸とセロリの炊き込みご飯を作ったりした。
仕事というか、ぼくにとってキッチンは逃避の場所かもしれない。

滞仏日記「主婦が毎月自宅で、いくら分の仕事をしているのか、計算してみた」

※その他の西洋料理部門って、はじめてきいたけど、笑。スープ本だから、地味だけど、でも、絶対、スープ、飲みたくなるし、父ちゃんのスープは美味しいし、身体にいいですよ。長生きしてください。



それにしても、家事は孤独な仕事である。そもそも、ぼくは小説も音楽も何もかもずっと孤独な仕事だった。
今、デザインストーリーズがちょっと面白いのは編集者さんや、ライターさんらと、編集会議が出来るからかもしれない。
最近のテーマは、デザインストーリーズのリニューアル。
とはいえ、コロナだし、ZOOM会議ばかりだから、孤独にかわりはないし、あ、そもそも、ぼくは会社勤めを一度もしたことがないし、サラリーマンの経験はマジ、一度もない珍しい人間なのだ。
最初から自由業で、給料制度に頼ったこともない。自分で各種保険のお金を毎月払っている。だからか、仕事も家事も混在しているし、料理をすれば、それが本にもなって、その他の西洋料理部門で一番になるのだから、ありがたいことだ。
昨日、本当に半年ぶりくらいに中村江里子さんからラインが入り、「ボンジュール、辻仁成の秋のパリごはん」を観ましたと長い感想が添えられていたのである。
同じ年の娘さんを抱える同じ主婦として、ぼくの息子が料理する手元がいとおしかった、というようなことが書かれていて、なんでか、有難かった。
何をやっても批判される主夫作家兼シンガーソングライターの父ちゃんだが、ぼくはこれでも、日々、押しつぶされそうになって、なんとか、毎日、自分を鼓舞しているのだけど、さて、今日も、家事と仕事頑張っているのだ。

つづく。

「ボンジュール、辻仁成の秋のパリごはん」ですが、BSに加入されてない皆さんは、オンデマンドで、御覧いただけます。
※、今、6位だそうです。レギュラー番組の中、制作会社さん情報!
オンデマンド10月31日(日)12時〜2週間配信となります。
https://www.nhk-ondemand.jp/#/0/

滞仏日記「主婦が毎月自宅で、いくら分の仕事をしているのか、計算してみた」



自分流×帝京大学
新世代賞作品募集