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退屈日記「荒城の月をディープ・フォレストのスタジオで収録、現在、編集中」 Posted on 2022/01/29 辻 仁成 作家 パリ

退屈日記「荒城の月をディープ・フォレストのスタジオで収録、現在、編集中」

某月某日、90年代から現在まで世界中の民族音楽などをサンプリングして演奏し、全世界で熱狂的なファンを獲得し続けるディープ・フォレスト(現在はエリック・ムーケのソロプロジェクトとなっている)とご縁があって、セッションをしたことは前にここで記した通り。
ドルドーニュ県のベルべス(人口1500人の村)にある彼のスタジオで、ぼくらは日本の名曲「荒城の月」をライブセッションした。

その日、ぼくがスタジオのホールでエリックに「荒城の月」を歌って聞かせ、「録音しよう」ということになり、マイクを立て、エリックが奏でるシンセ演奏の上で歌った。
つまり、ライブレコーディングをその場でやったのだ。
ミュージシャン同士の、気楽なセッションだったが、出来上がった音をぼくらは気に入り、作品にしようという話になった。

長い年月と様々な偶然が重なって、出来上がった奇跡的な作品・・・。

退屈日記「荒城の月をディープ・フォレストのスタジオで収録、現在、編集中」



何度か、リハーサルを兼ね演奏をしたあと、本番の録音をやった。それは、ワンテークのセッション音源で、それをエリックがミックス&マスタリングし、ぼくが自宅で現在映像編集を行っている。
エリックとぼくはデータを共有し、今、連日、パリとベルべスで共同作業を繰り返している。
前にも少し話したが、ディープ・フォレストはほぼECHOES(ぼくが在籍していたロックバンド)と同時期にスタートした音楽ユニット。
ぼくが「冷静と情熱のあいだ」を執筆した時なんかに背後で流していたアンビエントの音楽でもあり、このような偶然の出会いが、今日の時代に起こるとは当時思いもしなかった。
そして、エリックとぼくはたまたま同年代なのである。
エリックに粗編の映像を送ったら、「とっても気に入っている」と返事が戻ってきたので、ぼくらは真剣に作品作りをスタートさせた。
今、ぼくは久々、映像制作に注力をしている。
ほぼ、最終段階まで出来たので、何らかの形でこれを発表したいね、と話し合っている。
日仏で生きてきたぼくらが長い時間を超えて、こうやってフランスの田舎で出会い、一緒に作り上げた音楽が、日本を代表する「荒城の月」であったことは素晴らしいことだ。
途中経過ではあるけれど、一日も早くこの映像作品を世に送り出したくうずうずしている。最近のぼくは創作の空白期で、子犬とじゃれあいながらも、このビデオ制作の過程の中で、ものづくりの灯を守ろうとしているのだ。

退屈日記「荒城の月をディープ・フォレストのスタジオで収録、現在、編集中」



製作スタッフ
シンセ、ミックス、マスタリング、エリック・ムーケ
歌、映像編集、辻仁成
カメラ、小田光
題字、MAAYA
アーティスト・マネージメント、ユキ・ムーケ&officeJT

乞うご期待、近日公開!

つづく

地球カレッジ
自分流×帝京大学

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