JINSEI STORIES

退屈日記「ノーノーサンシー、ほんとうにダメだよ、三四郎!!!!!」 Posted on 2022/05/11 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、三四郎はとってもいい子なのだけど、とっても頑固な子犬なのである。
もともと、ミニチュアダックスフンドは「頑固だよ」と言われていたので、覚悟はしていたのだけれど、ここまで頑固で賢いとは・・・。
やれやれ。
犬の訓練協会のマダム・ボーべは犬の躾けについて大変厳しい。
それはもはや軍隊並みなのである。(大型犬が多いからであろう)
怒る時は本気で怒るので、怒り過ぎじゃないか、と思っていたのだけど、ぼくが甘やかしてきた結果、三四郎はとんでもないことをするようになった。
それはきっとぼくの躾けが甘かったからだと、今日、改めて反省をした。
三四郎にごはんを与えて、やっと自分もご飯を食べようとしていると、三四郎が、
「わんわん」
と珍しく吠えだした。
ふりかえると、ボールをくわえて、待っている。
「ダメだよ。パパだってご飯食べないと死んじゃうじゃないか」
なので、やんわりと断った。
ぼくがご飯を机に並べて食べようとしていると、
「わんわんわんわん」
と再び吠えるので、マダム・ボーべを見習って、
「うるさい!!! パパはご飯なんだ。今は遊べない」
と突き放した。
それでも吠えるので、
「うるさい」
と怒り返すこと数回、・・・まもなく、やっと静かになったのである。

退屈日記「ノーノーサンシー、ほんとうにダメだよ、三四郎!!!!!」



ちなみに、今晩のご飯は、つけ麺、である。
フランスで暮らして20年、ぼくが知らないうちに日本で「つけ麺」なるものが大流行をしていた。
ラーメンとは違う、つけ麺。へー、これはどうなんだろう? 
数年前、意を決して、生まれて初めて「つけ麺」なるものを食べてみたのだけど、・・・とっても美味しかった。
たまたま、生の中華麺が残っていたので、それを利用し、「つけ麺」を今日は再現したのである。
日本で食べた「つけ麺」はどこかかつおダシの濃いものばかりだったが、ぼくは味噌と野菜ダシの「つけ麺」を目指してみた。
つけ麺のつゆは野菜ダシと味噌をベースに創意工夫をし拵えた。
具は、ベーコン・モヤシ炒め、ラー油葱、コリアンダー、半熟卵、という布陣である。
これが想像以上に美味しく出来たので、大満足だったのだが、ん? おかしい・・・。

退屈日記「ノーノーサンシー、ほんとうにダメだよ、三四郎!!!!!」



しーん、と静まり返っている。
「うるさい」と叱った後、おとなしくなる時は、何か腹いせをして、へへへ、やったぜ、という時が多い。
「サンシー?」
様子を見に行ったら、三四郎は自分のベッドの中で寝ていた。
おお、よかった、と胸をなでおろして、トイレに行くと、
「ぎょえ~」
風呂場のど真ん中、タイルの上に特大のポッポ(うんち)、その横のタイルに特大のピッピがしてあった。
おしっこシートには何もしていないのである。
つまりこれは「反撃」なのだ。わざと、大きく外して、ぼくを困らせ、かまってかまって、と訴えているのである。
つまり、遊んでくれないパパへの仕返し、当てつけなのであった。
ここで、叱らないと、これが当たり前になってしまう。
それは絶対によくない。
そういうわがままな子に育てるのはぼくのやり方じゃないし、自分の都合で人が動かない時に仕返しをするような犬はダメだ。
小さいうちからそういうのがいけないことをしっかりと分からせる必要がある。
ぼくは三四郎を捕まえ、自分がしでかしたことを見せて教えた。
「これはダメでしょ? ここでしちゃだめだろ? ダメダメサンシーでしょ?」
おしっこシートの前に座らせ、
「ピッピ、ポッポはここ。わかったか?」
と叱ったのである。
分かるまで叱り続けたのであーる。
ご覧頂きたい。最初は理解してない顔でぼくを見ているが、ぼくが叱り続けると、視線を逸らすのである。
これは、反省のポーズということになる。(もしくは、無視)
自分が悪さをして、叱られている、というのは分かっているのだ。
ここで甘やかすとまたこれをやらかすので、手加減はいけないし、ここで甘やかすのは絶対によくない。
犬もちゃんと生きないとならないのである。
叱る時は徹底的に叱り、ちゃんとポッポが出来たら、褒めてあげるし、たくさん遊んであげるし、ご褒美をあげればいいのである。

退屈日記「ノーノーサンシー、ほんとうにダメだよ、三四郎!!!!!」

退屈日記「ノーノーサンシー、ほんとうにダメだよ、三四郎!!!!!」



ぼくは甘やかさない。これからも二人で生きていかないとならないのだ。
ポッポやピッピくらいはちゃんとできる犬に躾けなきゃならない。
仕返しや反撃をするような犬になってもらいたくない。
「ダメなものはダメだ。ノーノーサンシーだ」
絶対、わかってくれると信じて、今は誰よりも厳しくするのが、親の仕事なのだから・・・。

つづく。

ということで・・・
今日も読んでくれてありがとう。
その後も三四郎の悪戯は続いておりますが、ひとまず、お知らせです。
辻󠄀仁成 アコースティック セレナーデ フロム パリ
Jinsei Tsuji Acoustic Serenade From Paris
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[お問い合わせ] ビルボードライブ横浜: 0570-05-6565
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