JINSEI STORIES

退屈日記「パリの夜散歩。エッフェル塔の袂は大勢の人で賑わっていた」 Posted on 2022/05/14 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、仕事がありパリに戻った。
息子に夕食を与えて、一度は寝ようとしたのだけど、三四郎が「パパしゃん、まだ、今日は散歩に行ってないよ」とせがむので、おっと、散歩を忘れていたことを思い出した。
23時過ぎている・・・。
体力をもてあました三四郎を寝付かせるためにも、ちょっと散歩に出た方が良さそうだな、と思って、ジャケットを羽織った父ちゃんであった。
遅い時間だったが、夜歩き、することに・・・。
レッツゴー!
で、あまりに心地よいので、普段は行かない右岸側のシャイヨ宮周辺まで歩いてみることにした。
夏がすぐそこまで迫っており、パリの週末は遅くまで大賑わいなのである。
セーヌ川河畔の道を三四郎と歩いた。エッフェル塔の写真と動画をついでに撮影しよう、と思って、右岸、16区側へと渡った。
いやはや、もの凄い人出である。
ロックダウン中のパリが懐かしくなるくらい、観光客でごったがえしている。
「あ、辻さん」
と日本人の知り合いとばったり、遭遇。スタイリストのYさんである。
「なにやってるんですか?」
その人は仕事終わりの打ち上げの最中であった。
「散歩だよ。愛犬と」
すると、ファッション関係の彼女の仲間たちが、三四郎に気づいて、きゃあー、みによん(可愛い)と騒ぎ出した。あはは。相変わらず女子受けがいい。
なんでも、エッフェル塔をバックに結婚写真を撮るのが流行っているのだそうだ。アメリカ人の富豪の結婚式だった、とのこと・・・。
Yさんがセーヌ河畔を指さすので、一緒に見下ろすと、川沿いに「わたしと結婚して」とかかれた電光掲示板が明滅していた。
その前で新婚さんらがプロのカメラマンによる撮影を行っていた。
「すごい商売だね」
ぼくが言うと、知り合いのスタイリストさんは、
「観光客が戻ってきたので、大繁盛ですよ。そこのカフェで、みんなで飲んでいるので、ちょっと顔出しませんか?」
と誘われてしまった。
「そこ?」
道の反対側のカフェのテラスがまた、すごい人!!!
行きたいけど、ダイエット中なので、遠慮しておいた。笑。

退屈日記「パリの夜散歩。エッフェル塔の袂は大勢の人で賑わっていた」

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すると、アジア系の若者が、撮影をしてくれませんか、とぼくにカメラを差し出してきた。
「中国人? 韓国人?」
「あ、韓国です」
「あにょんはせよ、ちょぬんいるぼんちゃっかいむにだ(やあ、ぼくは日本の作家だよ)」
唯一知っている韓国語で話すと、笑顔が戻ってきた。
「かむさはむにだー」
彼らと別れたら、すぐその横にいた、日本人観光客の子たちから、
「え、日本の方ですか? きゃあ、日本の方?」
と喜んでもらえた。父ちゃんのことなど知らない超ヤングマンである。あはは。
「君たち、なんでここに?」
十斗のお姉ちゃんでもおかしくない年齢だった。
「欧州を二人旅しているんです」
「へー、すごいね」
その子たちの横に、もう一人、外国人男性がいるので、彼は恋人かな、と訊いたら、
「いいえ、今、声かけられたので、話してました」
と笑った。ナンパされてたんかい!!!!
急に、父ちゃん、警戒心が沸き起こり、その人物を睨んでしまった。(ごめんなさい)うちの娘に変なことしたらゆるさへんでー、という目線である。あはは。
男性はなぜか視線をそらした。悪い子ばかりじゃないとは思うが、パリは、とくに観光地は気を付けないとならない。アジア系の若い子は狙われるので・・・。
その子たちに、気を付けて旅を続けなさいね、と説教をして、分かれることに・・・。

退屈日記「パリの夜散歩。エッフェル塔の袂は大勢の人で賑わっていた」

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三四郎とエッフェル塔を通過して、15区側に出てみようということになった。(ぼくが勝手に決めたのだけど)笑。
三四郎はスタスタと人々の間を潜りながら、歩いている。今日は快調だ、実に心地よい。
ぼくらが去年の5月にライブをやったバトー(モンテベッロ号)が停泊していた。
あのライブをやった甲板で観光客が食事をしている。パリに活気が戻っている。
※ あのライブ、ちょうど一年前でした!!!

退屈日記「パリの夜散歩。エッフェル塔の袂は大勢の人で賑わっていた」

イエナ橋に到着したので渡ろうとしたのだけど、もの凄い群衆で、コロナも怖いし、三四郎が踏んづけられても嫌なので、諦めて、渡るのを断念した。
不意に、エッフェル塔がちかちかと明滅しはじめた。一時間に一度のシャンパンフラッシュである。一帯に、大歓声が沸き起こった。

退屈日記「パリの夜散歩。エッフェル塔の袂は大勢の人で賑わっていた」

退屈日記「パリの夜散歩。エッフェル塔の袂は大勢の人で賑わっていた」



観光客たちが写真撮影をした。ちょうど、エッフェル塔の上に明るい月がかかっていたので、これは「ボンジュール、辻仁成の夏ごはん」用に撮影をした方がいいかもな、と思った父ちゃん。
誰にも教えられない秘密の場所があることを思い出した。
出入りは自由なのだけど、そこには観光客が来ない。
ぼくがたまに、こっそりと散歩に行く超秘密の場所なのである。
トロカデロ庭園を登り、エッフェル塔を真正面に見据える小高い秘密の場所に出た。
おお、数人のフランス人が愛を囁きあっているだけで、静かな場所であった。
ぼくと三四郎は石の壁によじ登り、二人で平和な世界を見下ろしたのである。
「絶景かなぁ」
ぼくが大きな声で告げると、三四郎が、わん、と合いの手をうった。
いい季節になってきたものである。

つづく。

今日も読んでくれてありがとう。
パリの夏の夜散歩、楽しんで頂けましたか?
そろそろ日本人観光客の皆さんもパリに戻ってきつつあるようですね。夏をご満喫くださいませ。
ということで、父ちゃんからのお知らせです。
今回の文章教室は、より具体的な書き方を一緒に学べる会にしたいと思っていますよ。
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