JINSEI STORIES

滞仏日記「大学生になる息子と新生活にいったいいくらかかるのか話し合った」 Posted on 2022/06/27   

某月某日、地球カレッジが終わり、くたくたになった父ちゃん。
とりあえず、パリで最後の大仕事が終わったので、明日からは日本行きの準備に入らないとならない。
新たなバタバタが押し寄せてくる手筈になっている。
ドッグトレーナーのジュリアから、三四郎の受け渡しを少し早められないか、と打診があった。木曜日には三四郎を届けに行くことになった。寂しい・・・。
こんなにべったり一緒に暮らしている三四郎と離れ離れになることを、考えないようにしている父ちゃん・・・。
今は現実を遮断しているのだが、木曜日には実際の「別れ」が押し寄せてくる。
パリを長く離れるので、いくつかの大仕事を終わらせる必要があり、ここから時間との戦いがはじまる。
その中でも、息子の大学生活準備が一番の優先事項かもしれない。
ぼくがパリを離れている間、息子は自分でいろいろと決めていかないとならないからだ。パトリックのレストランに行き、奥の席で向き合った。
「どうなの? 補欠の大学。どのくらい? 今」
「130番まであがった」
「おお」
息子が微笑んだ。一日で20位くらい上がって来た。ドキドキ・・・。
ぼくが陰で彼の高校に抗議していることはまだ知らない。担任の先生が彼を惑わせる助言をしたことは先の日記に書いた通り・・・、親だって一生懸命気を使っているのだ、今はそっとしておいてほしい。
「で、受かったら、どっちに行きたいの?」
さりげなく、聞いた。
「いや、まだわからない。今は考えられない」
「ま、様子をみようか。今は考えなくていいよ」
「うん」

滞仏日記「大学生になる息子と新生活にいったいいくらかかるのか話し合った」



「パパ、あらゆる可能性が出てきたから、実は部屋探し始めてるんだ」
「ほー」
「とりあえず合格した方の大学の近くのアパルトマンを調べてみたけど、パリ中心部だから、高かった」
「どのくらい?」
息子が金額を言った。ま、だいたい、想像通りの値段だった。
「合格した大学は学費がタダだけど、補欠の大学はかなりの学費らしいね」
「うん、親の収入によるらしいけれど、かなり高いというのは聞いてる」
そこはちょっと特殊な学校で、日本の医学部なみに学費が高いらしい。タダだと思っていたので、事実を知って、複雑な心境の父ちゃんなのである・・・。
「ま、それも気にしないで、様子見ようか」
「うん(笑)、そうだね」
ぼくらは笑いあった。
「パパ、本格的に料理を教えて貰おうかな。パスタばかりじゃ、身が持たないし」
「いいよ。もちろん。何が作りたいの?」
「和食。そうだ、炊飯器を買わなきゃ。電気屋で安いのを買う」
「ダメだよ。フランス製の安いのは、べちゃべちゃのご飯しか炊けないから。炊飯器はやっぱ、日本製でしょ。合格祝いに一台買ってやる」
「ええ? 合格祝いが炊飯器?」
あはは。ぼくらは笑いあった。
「でも、嬉しいかも。白ご飯が炊けるなら、ありがたいね」
「日本の炊飯器は優秀だから、いろんな料理が出来る。シンガポールライス(海南ライス)なんか物凄く簡単だよ」
「ほんと?」
「普通に米を研いで、そこに中華スープの素、ミョクナムとか入れて、鶏肉とか葱とかぶち込んで、炊飯器のボタンを押すだけ。簡単でしょ? パパのレシピ本の中にあるはずだから、なんなら、一冊やるよ」
「いらないよ」
あはは。

滞仏日記「大学生になる息子と新生活にいったいいくらかかるのか話し合った」



とにかく、大学生活が目の前に迫っているのは事実・・・。息子はあと2か月で大学生活をスタートさせないとならない。
大学の手続き、引っ越しの準備など、息子も忙しくなる。
「月にどのくらい食費ってかかるんだろうね」
「そうだね、迷惑かけるよね」
「ぜんぜん、それは当然だから、心配いらないよ。でも、アルバイトはしなよ。お小遣いはあげないから、それは自分で稼がないと。パパはお金持ちじゃないからね。最低限しか出せないから、無駄遣いしないように、計画的にお金を使わないと大変なことになるぞ」
「うん、分かってる」
「夏、パパが日本に帰ってるあいだ、一度、最低限の食費で生活してみるか?」
息子が、(?)な顔をした。
「え、最低限ってどのくらい?」



いくらあれば18歳の青年が一月生活できるのだろう。フランスは物価が高いから・・・。
「一日、いくらで自炊できるかな。ちょっと計算してみろよ」
「そうだね。やってみる」
「スーパーに自分で買い物に行き、お金と相談しながら食材を選んで、炊飯器でご飯炊いて、フライパンでパパにみたいに料理をして、生活費のやりくりの練習をしないと」
「OK。やってみる」
とりあえず、この夏、自炊の練習をすることになった息子くん。
最低限がいくらかをこれから決めないとならない。そこは宿題とした。
「こうやって外食ももうできなくなるね」
「学生食堂があるから」
「美味しいものが食べたくなったら、帰ってくればいい。なんか食べたいもの作ってやる」
「じゃあ、毎晩帰ったりして」
(笑)

つづく。

今日も読んでくれてありがとう。
急に、父ちゃんの日本行きを前にバタバタしてきた辻家。この夏は、パパ、十斗、三四郎、みんなバラバラで生活をすることに・・・。ちょっと寂しい父ちゃんなのでした。
さて、お知らせです。
いよいよ、6月30日、そんな父と子の3000日を描いたエッセイ集「パリの空の下で、息子とぼくの3000日」が発売されます。発売前なのに、重版がかかり、韓国からも出版のオーダーが来ました。ま、順調で嬉しいです。皆さん、ありがとう。学費に回しますね。笑。
30日、全国の書店さんに並ぶのが楽しみでもあります。日本に帰ったら、覗きに行ってみようかな~。
それから、アート&デザインの第六回新世代賞の募集がはじまっています。25歳以下の皆さん、どしどし、ご応募ください。
詳しくは、こちらをクリックください。

https://www.designstoriesinc.com/worldfood/shinsedai6/

お知らせはそんなところかな。小説教室の詳細は次回に・・・・。
良い一日を。

滞仏日記「大学生になる息子と新生活にいったいいくらかかるのか話し合った」

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