JINSEI STORIES

滞日日記「自分の健康は自分の手で、父ちゃんキッチンに立ち、悶絶する東京日和」 Posted on 2022/07/26   

某月某日、日本滞在が長引き、外食やカップ麺やお弁当ばかりだったので、何か調子がつかめず、ちょっと健康的とは言えない感じに・・・。
やはり、健康というものは、自分で計画して作り上げないとならないのである。
自炊こそが、健康の基礎、ということであろう。
父ちゃんは今日、「美味しいものを作って喰ってやろう」と心に決めてスーパーへ買い出しに行った。
福岡のスーパーも素晴らしかったが、東京のスーパーも負けてはいない。
どれを見ても、次々に食べたいものが頭の中に現れては消え、消えては現れ、心を擽られ、何もかも、美味そうで、大変なことになったのであーる。
肉のコーナー、鮮魚コーナー、野菜コーナー、どこも大充実なのであった。
そこで、まず、目に留まったのが、「しらす」である。
「釜揚げしらす」など、フランスにはない。
在仏歴20年の父ちゃんだが、フランスに何も文句はないのだけど、何かあるだろう、出せよ、と言われるならば、この「しらす」が存在しない点をあげることができるかもしれない。しらす、ないんすよーー。
白魚みたいな魚は時々見かけるのだけど、しらす、は手に入らない。しらすを白ご飯にかけて、卵の黄身と食べたい、と思ったら、手が震えてしまった。
思わず、
「ああ、手が震えてる」
と言葉が飛び出してしまうほどの激震が心の中に走っていたのであった。
淡路島産、駿河湾産、徳島産などいろいろなしらすが、並んでいる!!!
「うおおお、生しらすの卵黄載せ丼が食べたい!」
おっと、しかし、炊飯器がないじゃん。お米も買わないとならないじゃん。
釜揚げしらすを食べるのにパックのご飯というのもどうだろう、と思ったら、悩んでしまった。でも、初志貫徹でいこう。しらすを一パック、かごの中に、・・・
そのまま、卵コーナーに行った父ちゃん、日本のスーパー、卵が豊富過ぎるゥ!!!

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卵の種類がたくさんあって、選びきれないじゃないか。嬉しい悲鳴であーる。
普通の卵は6個入り160円前後だったが、同じ6個入りでも450円もするのもあった。
金額的には、その間をとり、黄身が濃いのが売りの卵を買ったのであーる。
もう、卵を掴んだ手も震えてしまって、割れそうじゃないかぁ。日本、すごい!!!
しかし、ご飯を炊くのもちょっと大変なので、と振り返ると、そこはパスタコーナー!!! おお、そうだ、
「シラスのカルボナーラ風パスタにすればいいじゃーん」
と大声を張り上げた父ちゃん。横にいた奥様に、睨まれてしまった。あへ。
だって、生しらすの黄身載せ丼、改め、生しらすのカルボナーラって、絶対やばいに決まってるのであーる。
震えながら、ディチェコのフェデリーニを一つ掴んだ父ちゃん、手も足もがくがくと震えて、口の中で唾液が洪水、じゅるじゅるー――。たまらん。はよ、食べたか!!!
他の材料が何もないので、ブロックのベーコン、パルメジャーノ粉チーズ、オリーブオイル、黒コショウを買って、おしっこがもれそうで小股歩きで走って帰る小学生のような感じで家路についたのだった。あはは。気が逸る。
実は、イタリアの本物のカルボナーラは、グアンチャーレ、またはパンチェッタとペコリーノチーズを使う。グアンチャーレとは、豚頬肉の塩漬けのことで、これが、脂がいっぱい出て、うまいのだけど、日本だとなかなか見つけられない。
ペコリーノチーズも難しいので、ここら辺は、なんちゃってカルボナーラということでベーコンのブロックと粉チーズを購入した。

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ただ、日本のカルボナーラは生クリームを使うけど、イタリアではそういうことはしないので、笑、そこだけは真似て、ベーコンから出た脂で旨味を出す。ようは目指すのは「生しらすの黄身載せパスタ」なのであーる。
ブロック・ベーコンをキューブ形状にカット・・・、肉肉しい触感がほしかった。

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フライパンでじっくりベーコンを炒めてから、ボウルに脂ごと流しいれる。そこには黄身、オリーブオイル、粉チーズ、生しらす少々、粗びき黒胡椒などがすでに待機中で、脂を入れながら、少しずつ混ぜていき、濃度を調節するのだ。
そこに硬めに茹でたパスタを注いで混ぜ合わせ、お皿に盛ると、おおお、やばい、すごい。心が震えてきた・・・。
最後に生しらすを食べたいだけどかっと贅沢に載せて、ちょっとそこに醤油を垂らす、・・・この醤油がねぇ、卵かけごはん的な味わいを生むのだ。
水菜もフランスでは滅多に買えないので、ここはシャキシャキ感を出すために、彩として、添える。おっほっほ、完成であーる。

滞日日記「自分の健康は自分の手で、父ちゃんキッチンに立ち、悶絶する東京日和」

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テーブルに置いて、記念撮影をしてから、いただきまーす。
調理時間は15分というところか・・・。
濃厚な卵と生しらすと醤油とベーコンと粉チーズとの相性は抜群であった。
しらすにどれだけのパワーがあるのかは知らないけれど、食べたいものを食べたいだけ食べられた満足感で、元気になった父ちゃん。
どんなに忙しくてもやはり、キッチンで作った料理が一番美味しいですね。
がんばります~。

つづく。

今日も読んでくださり、ありがとう。
さっき、息子のアパートが決まりかけているという連絡があったので、不意に慌ただしくなっている辻家ですが、生しらすのご利益でしょうか・・・。どうか、今度こそ、詐欺にあわないように・・・。
そして、父ちゃんからのお知らせです。
28日の「小説を一度は書いてみたい方へ」向けてのオンライン・講演会ですが、だいたい、お話をする内容が決まりました。父ちゃんの小説との出会い、どうして作家を目指したのか? どうやって小説を書いたのか? どうやってプロになったのか? どうやって普段小説を書いているのか? 初心者の皆さんが、どうやったら小説を書けるようになるのか? その書きたい気持ちを奮い立たせるような非常に珍しいエネルギッシュな講演会になる、はずです。あはは・・・。しらすパワーで。
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地球カレッジ

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第6回 新世代賞作品募集
自分流×帝京大学