JINSEI STORIES

滞仏日記「オランピアへの道、第一回。見よ!これが、オランピア劇場だ」 Posted on 2022/10/04 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、63歳を迎え、一発目の日記であるわけだから、自分を盛り上げたい。
ただし、まだ、「オランピア劇場」のライブが決定したわけではない。えへへ。
まだ、いくつもの難関があるのだけど、皆さんに、ぼくがぎゃあぎゃあ騒いでいるオランピア劇場をまずは、ご覧いただきたいのである。
実は、先日、フランスのプロモーターに、
「ツジー、今日、俺らが仕切るライブをオランピアでやるから見に来いよ」
と言われたので、のこのこ、下見に行ってきた。(笑)
勝手に、下見と言ってるが、もちろん、まだオランピアとの交渉が成立したわけではないので、個人的な下見です。あはは。
でも、どんなことをしてもオランピア劇場でライブをやりたい熱血父ちゃん。
咳き込みながらも、「勝手な下見」に出かけたのであーる。
やはり、何事も、自分で自分を盛り上げてこその、夢。夢を自分のものにするためには、そこに行く、ことが大事なのである。
気が付くと、ぼくはオランピア劇場の前に立っていた。
「ベルトラン、着いたけど、正面玄関に」と電話。
「ツジー、そこじゃない。裏口にまわってくれ。そこで待ってる」
ということでぼくは裏口を探して歩きだすのだけど、なんと、オランピア劇場の裏口は角を曲がって、次の交差点のところにあった。ワンブロック!
「ツジー、こっちだ」
ベルトランに招かれ、中に入ると、受付があった。
「彼は日本のアーティストで、今、ここでの出演交渉中なんだよ。いいだろ?」
とベルトランが受付の若い人に、(^_-)-☆。パスを受け取った!やった。
ぼくはあっさりと中に入ることに成功。思っていたよりもバカでかい会場である。

滞仏日記「オランピアへの道、第一回。見よ!これが、オランピア劇場だ」



滞仏日記「オランピアへの道、第一回。見よ!これが、オランピア劇場だ」

※ここをジョン・レノンも歩いた。

いくつもある楽屋を案内された。
「ここでライブ終演後、スポンサーとか、メディア関係者とかでパーティとかやるんだよ」
「へー、すご」
ベルトランが、くすっと笑ってぼくの肩を叩いた。
「じゃあ、ステージに行くか」
ぼくらはバックステージから長い通路を歩いて、舞台へと向かった。
「ベルトラン、もしかして、ここを歩いてアーティストはステージに出るの?」
「ああ、ポールマッカートニーもジョンレノンも、みんなここを歩いた」
「あはは」
「君も歩かないとね」
ひゃああ、熱血~。熱血神様、お守りください~。
ステージに出た。今夜のライブの仕込みが始まっていた。大勢のスタッフが照明器具などをセッティングしている。ベルトランのボスのヨアンを紹介された。彼の会社の社長さんだそうだ。ぼくらは握手をした。
「辻さん、待ち遠しいね。今、交渉中だから、もうちょっと待ってくれ」
「どのくらいの確率?」
「五分五分だけど、あと一息なんだよ。劇場の支配人は君のことをすでに知っている」
ひゃあああ、熱血~。よっしゃあ、前向きにやるぞ。俺は逃げない。
と、気合いを入れた父ちゃんであった。
その時、目の前に広がる客席が目に飛び込んできた。げげげげ、でかい!!!

滞仏日記「オランピアへの道、第一回。見よ!これが、オランピア劇場だ」

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※ 社長のヨアンさん。

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これはでかいし、しかも、かなり歴史的建造物であーる。おお、すげー。
「ツジー、ここに立って歌うんだ。最高じゃないか?」
「いいね。最高だ」
こういう時は最高しか考えちゃいけない。出来るかな、とか、マイナス思考はプラスの人生を邪魔するので、排除に限る。
ここに立って歌っている自分をひたすら想像するのがよい。
パーカッションのジョルジュがここに、ピアノのエリックはここで、ベースのケンタウロスはあそこ、で、バイオリンのマリオは、ぼくの横だ。ぼくはイメージした。
よしよし、出来てる。けっこう、度胸あるな、父ちゃん。

滞仏日記「オランピアへの道、第一回。見よ!これが、オランピア劇場だ」



ぼくらは客席を下りて、一度、正面玄関に回り、二階席へと階段をあがっていった。
2000席以上ある。ぼくはステージを見下ろした。遠くに、歌っている自分が見えた、気がした。いいイメージである。
「ツジー、根気強くオランピアと交渉を続けるよ。まずは、日程を絞りだし、あとは、契約をする。そこまでやれたら、間違いなく開催できる」
「こんなに埋まるかな」
「今日は満席だよ。アフリカで人気の女性シンガーだ」
「なるほど」
「ツジー、埋めよう。あらゆる手段を使って。やるからには満席にしよう」
ベルトランがぼくの肩を叩いた。
心強い味方である。
「合言葉は熱血」
「え? なんだって?」
「いや、フランスで暮らしだして、20年が過ぎたんだ。ここで一つの成果を残したい」
「おお」
ぼくらは握手をした。

滞仏日記「オランピアへの道、第一回。見よ!これが、オランピア劇場だ」

※ この男がベルトランだ!!!

滞仏日記「オランピアへの道、第一回。見よ!これが、オランピア劇場だ」

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つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
ベルトランは大きな男です。なんで、彼が応援をしてくれるのか、わからないのだけど、ぼくもぼくなりに地道にフランスで活動をしてきた、その結果かもしれませんね。必ず、オランピア劇場に立ちたいので、「オランピアへの道」とこの日記、命名させてもらいます。有言実行は自分を追い込んでこそ、ですから、逃げません。皆さん、応援してください。国虎の野本にスポンサーをお願いするつもりです。うどん屋ですが、土佐の男なので、絶対やってくれるでしょう。彼も逃げません。オランピア劇場の前に「のぼり」を百旗立てたい。実現できるかまだまだ分かりませんが、ドキドキ、ワクワクのない人生なんてつまらないからね。やるだけです。ひゃああ、緊張する~。63歳の誓い!老境をぶっ飛ばせ!
※今、五分五分なので、ダメだった場合は、オランピア落選日記に、改題をします。あはは・・・。

地球カレッジ

滞仏日記「オランピアへの道、第一回。見よ!これが、オランピア劇場だ」

※ どんな時も笑顔の父ちゃん!



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