JINSEI STORIES

滞仏日記「フランスの田舎のホテルで仲間たちと、朝食、この長閑なひと時」 Posted on 2022/10/06 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、昨日、チャールズのレストランで誕生会を開いて貰ったのだけど、チャールズは店があったので参加できなかったから、今朝、二次会を海沿いのホテルで、朝食を食べながら、とあいなった。なかなか珍しくない?
ランチにすればいいじゃん、というご意見はごもっともなのだけど、シェフのチャールズは昼夜働かないとならない。
主婦のマーガレットやミハも子育てがあるので、ランチの時間とかは難しく、じゃあ、朝、集まろうよ、となった。確かに、それはグッドアイデアだ! ぼくも三四郎のお散歩があるので、朝は好都合である。 

滞仏日記「フランスの田舎のホテルで仲間たちと、朝食、この長閑なひと時」

滞仏日記「フランスの田舎のホテルで仲間たちと、朝食、この長閑なひと時」



我が家から車で一時間もかけた海沿いの村に、4つ星のホテル&レストランがあり、(ぼくは知らなかったけれど、17世紀から続く、ホテルなんだとか。ひゃあ、これを見せて貰えただけでも、素晴らしかった)そこに全員集合とあいなった。
「辻さん、友だちいないって昔豪語していたじゃん」とか言わないで。
時代は変わるし、ぼくだって、いつまでも「孤独を愛する男」ってわけにもいかないのであーる。
しかも、外国だし、いざという時、友だちや仲間や知り合いが多い方が助けてもらえるし、ぼくも、助けたい。あはは。
最初は田舎のアパルトマンを探してくれた2人の別々の不動産屋のムッシュ(ジャン・フランソワ)とマダム(アンヌ)と友だちになり、彼らを介して、リハウスやってるジェロームとか、給仕のトマとか、いろいろと仲間の輪が広がった。
もっとも、チャールズたちとは浜辺で知り合った。画家のアンドレ・ダーハンの出会いも浜辺だったね、あれは奇跡の出会いでした!!! ※ 詳しくはこちら。
https://www.designstoriesinc.com/jinsei/daily-2649/

滞仏日記「フランスの田舎のホテルで仲間たちと、朝食、この長閑なひと時」



一方、三四郎を介して、犬友が急増中で、今回のグループとは別に、行きつけの犬カフェに行くと、すでに常連扱いなのである。
友だちの線引きって、難しいけれど、フィーリングが合えば、いろんな意見があっていいと思うので、最近はすぐに仲良くなるようにしている。
その結果、誰一人知り合いのいなかった田舎なのに、知り合いが増え、こうやって、誕生日会の翌日の朝に、二次会まで・・・えへへ。ちゃっかり父ちゃんなのであーる。
それにしても、ご覧頂きたい、このホテルの朝食会場、めっちゃ雰囲気あるよね?

滞仏日記「フランスの田舎のホテルで仲間たちと、朝食、この長閑なひと時」

滞仏日記「フランスの田舎のホテルで仲間たちと、朝食、この長閑なひと時」

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※ 卵は奥の卵茹で機械で、3分がウフ・ア・ラ・コック、6分だと半熟、10分だと固ゆで卵になります。

滞仏日記「フランスの田舎のホテルで仲間たちと、朝食、この長閑なひと時」

※ この置き方・・・。中にも、いろいろと食べ物とかが・・・。おされすぎる。



あ、今日はチャールズご夫妻の下のオスカル君がくっついてきた。(お姉ちゃんは学校。オスカルはお休みなんだとか)
この子、ぼくにすっかり懐いている。
パリのうちによく遊びに来ていたニコラ(現在は郊外在住)より、一歳年下である。
オスカルにぼくはギターを教えている。ぼくの口トランペットに、めっちゃ興味があるようで、音楽の輪郭を教えるのがぼくの今の役目だ。(彼はピアノが上手、だから、すでに素養を持っている)
とにかく、子供だろうが、ご老人だろうが、どんどん仲良くなっていくのが、父ちゃん流交流術かもしれない。好奇心全開、ユーモアと愛情たっぷりで、チャーミングに接したらみんな、だいたい仲良しになるよ。

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オスカルが、三四郎の前にすわった。
三四郎が、オスカルに抱き着いて、顔をペロリと舐めた。
なるほど、・・・。ぼくはリードをオスカルに持たせた。
「オスカル、三四郎は君と遊びたいんだ。海まで行っておいで」
「いいの?」
「いいよ。でも、絶対、リードを外したらダメだよ。逃げ出しちゃうとぼくらには追い付けないからね」
オスカルが三四郎のリードを持って、外に出ていった。
「大丈夫かな?」
とオスカルのお母さんが心配そうに言った。
「大丈夫。三四郎は賢いから、遠くにはいかないし」
30分くらいすると、ムッシュー、というオスカルの声が遠くからした。リードを離したな、と思ったので飛んでいった。案の定、三四郎が広大な庭を走り回っている。
「ごめんなさい。手を離したら、逃げ出したの」
「オスカル、大丈夫。大丈夫だよ」
ぼくは少し高い場所に上った。そして、遠くへ走り去ろうとしている三四郎目掛けて、こう叫んだのである。
「三四郎! おやつだよ。おやつ!!!」
ぼくは手を振りあげ、おやつを持ってるふりをした。(実は何も持ってない)
三四郎が、おやつ、ほしさに戻ってきた。ぼくはしゃがんで、彼を待った。ぼくがおやつを持ってないことに気が付いた三四郎、踵を返そうとしたので、リードの先を足で踏みつけてやった。放し飼いにする時、このリードを付けて置くことが大事になる。(心配なワンちゃんの場合、放すのはやめた方が無難です)
かくして、三四郎は御用となった。
「ほら、大丈夫だろ?」
「ムッシュ、OYATSUって何?」
ぼくは笑った。

滞仏日記「フランスの田舎のホテルで仲間たちと、朝食、この長閑なひと時」



このホテルの自家製パンがとっても美味しかった。
ぼくは卵を沸騰したお湯に、3分間きっかり、放り込んだ。そして、先端をフォークでカットし、中身を小さなスプーンで混ぜ、バケットを浸して食べた。
これを、ウフ・ア・ラ・コックと呼ぶ。
フランス人が大好きな卵の食べ方である。※ ライターのセギュールさんが詳しく紹介しているので、こちらをご参照あれ。
https://www.designstoriesinc.com/panorama/chiemi_segur_oeuf-2/

朝から、二つもウフ・ア・ラ・コックを頂いてしまった。
子供たちの教育問題、パリと田舎の暮らし方の違い、美味しいパンの作り方とか、レストラン業界の現状などなど、話が尽きなかった。
「ヒトナリ、いつか、こういうホテル&レストランを経営したいんだ」とチャールズ。
「わ、マジか。ぼくも参加したい。お金ちょっと出す」
「ちょっとかい」
ぼくらは笑いあった。
フランスの田舎で、こういうおしゃれなホテル&レストラン、凄く夢がある話だな、と思った。みんなの笑顔が素敵過ぎて、楽しい朝食会になった。
みんな、素敵な時間をありがとう。

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※ 温水プールもあるある・・・。

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※食後、テラスで雑談なのであーる。



つづく。

今日も読んでくれて、ありがとうございます。
チャールズは店を開けないとならないので、速攻帰って行きました。ぼくは田舎道を三四郎とドライブして、ゆっくりと家路につきました。空気がいいので、肺が喜んでいます。また、このホテルに朝食を食べに来たいなあ、と思った父ちゃんでした。

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