JINSEI STORIES

退屈日記「理由のわからない鬱に襲われた。ママ友がお見合いをすすめた」 Posted on 2022/12/05 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、たぶん、ちょっと疲れているのだと思う。
基本は元気だし、相変わらず夢に向かって熱血ではあるのだけれど、ふとした瞬間に、気分が下がるのはなぜだろう・・・。
今は、5月のオランピア劇場ライブが控えているので、そこへ向けて、気分をアップさせていかないとならない。それは真実、ありがたい目標である。
宣伝や、どういうライブにするか、そこへ向けて、かつて持ったことのなかったほどの大きな目標が今はある。
風邪をひかないように体力強化しながら、日々、計画的な生活へとシフトしているのだけれど・・・。
それとは別に、心の問題か、わからないが、鬱っぽくなることがママある。信じて貰えないかもしれないけれど、熱血と鬱は紙一重なのだ。
あきらかな鬱ではないのだけど、ぼんやりとした不安に襲われることが多くなってきた。
「パパ、それは残念ながら、年のせいもあるんじゃないかな」
と先日、息子に言われた。

退屈日記「理由のわからない鬱に襲われた。ママ友がお見合いをすすめた」



義務としての子育てが終わった、ことがやはり大きいのかもしれない。
子育てロスがやってくることは見越していたので、三四郎を育てはじめたのだと思う。
でも、そういうことじゃなくて、きっと、頑張って隠してきた心の空洞が露呈しはじめているような、そういう危うさに見舞われている。
恋愛をすればいいじゃない、とママ友、イザベルに言われた。
相談をしたのだ。昨夜、ワッツアップで・・・。
「でも、信じて貰えないかもしれないけれど、もう恋愛はうんざりなんだよ」
「でも、恋愛をしたら、張り合いが出ると思うよ」
「ぼくは尽くすタイプだから、へとへとになるんだよ」
「それがいけないのよ。そうじゃない相手もいるわよ。紹介しましょうか?」
「は、それって、恋愛じゃないでしょ?」
「わたしの知り合いで、離婚をして、子育ても終わり、ひとなりと同じような気持ちの人がいるのよ。あなたが嫌じゃなければ、紹介するわよ。日本人じゃなければいけないことはないでしょ?」
「ちょっと待って。かなり面倒くさい。結構です」
「会うだけあったら? なんどかお茶とかして、まずは友だちになればいいじゃない。フランスには、そういう出会いの場がいくらでもあるんだよ。残りの人生の方が長いのだから、まかせて。おせっかいをさせて。また、電話する。いい人が一人いるから」
そこで話し合いは終わった。
お見合いみたいなことだろうか・・・。

退屈日記「理由のわからない鬱に襲われた。ママ友がお見合いをすすめた」



イザベルとの話が奇妙な方向へと進んだこともあり、眠れなくなり、そういうことじゃないんだよ、と溜め息をつきながら、ぼくはキッチンでワインを飲んだ。
つい、呑みすぎてしまった。一本も飲んでしまったのである。
きっと、幻の妻を呼び出そうとしたのであろう。
彼女に相談してみたらいいのかもしれない、と思って、たぶん、呑み進めたのだった。
ところが、ところが、幻妻は出現しなかった。
「どこにいる?」
なんどか、暗闇に向かって問いかけてみたのだけれど、ついに現れなかった。
彼女が不愉快になっているのじゃないか、とぼくは想像をした。
そういう相談にはのらない、と思っているのじゃないか、と思ってみたら、ちょっと頭の中がこんがらがってしまったのであーる。
いずれにしても、お見合いをやるつもりはないのだよ、幻妻よ、安心しなさい。
ぼくは廊下で寝ている三四郎をまたいで寝室にいき、広いベッドの端っこに蹲って寝たのであった。やれやれ。
こんな夜もあります。

退屈日記「理由のわからない鬱に襲われた。ママ友がお見合いをすすめた」



つづく。

読んでくれてありがとうございます。
ぼくが鬱っぽくなるのは、更年期障害のようなものかもしれないですね。年齢的に、十分あり得ると思いました。一人だから、気を付けないとけません。こういう時はギターを抱えて、歌うことにしています。でもねー、ぼくの歌って、暗い歌詞のが多いんですよね。「冬の虹」の冒頭とか、「死にきれず生きています~」で歌いだすのですから、・・・。あ、でも、そんな辛い冬にも虹はかかるんだよ、という歌なんで、ただ暗いわけじゃない、ある意味、人生の応援歌なんだけど、最初からがんばれるような歌はないです。あはは。
さて、そんなさび付いた父ちゃんですけど、せめてクリスマス月くらい楽しくしたいですよね。やはり、イベントは大事です。誰かを幸せな気持ちにさせるのが好きな父ちゃんが皆さんに自分の愛する地区を紹介する、今年、最後の地球カレッジ。父ちゃんの街を一緒に歩く、というオンライン「冬の散歩道」を開催いたします。ご興味のある皆さん、一緒にいかがでしょう? ゴールは行きつけのマーシャルの八百屋に立ち寄る、という、なんのイベント性もない、ブラタモリならぬ、ブラツジ。クリスマス直前の22日、お時間があれば、寂しんぼうの父ちゃんと歩きましょう。詳しくは下の地球カレッジのバナーをクリックください。

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退屈日記「理由のわからない鬱に襲われた。ママ友がお見合いをすすめた」

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