JINSEI STORIES

滞仏日記「すわ、ライブは中止か、と眠れない夜が二日続き、目の前真っ暗からの」 Posted on 2023/05/26   

某月某日、実は、この二日、コンサートは最悪中止になるかな、と心配な夜を過ごしていた父ちゃんなのであった。
というのも、日記でちょっと触れたが、23日の練習の最後の最後の演奏で、大きな事故が起きたのである。
状況を説明すると、ぼくらはアップテンポの力強い曲を演奏していたのだけれど、途中で、ドラムの音が消えた。ふっと、消えたのだ。
みんなが演奏をやめだして、パーカッショニストのジョルジュの方を振り返った。
な、なんと、彼はスネアドラムにうっぷして動かないではないか。
最初に頭をよぎったのは、心臓が破れたのじゃないか、ということ。動かない・・・。
彼は身体も大きく、腕もぼくの数倍は太い。
言っちゃ失礼だけどゴリラみたいな体躯を持っている。その強靭なジョルジュが前屈みになり、うっぷしているのである。
「おい、大丈夫か?」
「やばいな」
「ジョルジュ、ジョルジュ??」
ヴァイオリンのマリオが小さな声で聞いたが返事がなかった。
ぼくはギターを置き、様子を見に行った。
「ううう」

滞仏日記「すわ、ライブは中止か、と眠れない夜が二日続き、目の前真っ暗からの」

※ こちらは、2021年のセーヌ川船上ライブの時の、ジョルジュ!!

滞仏日記「すわ、ライブは中止か、と眠れない夜が二日続き、目の前真っ暗からの」



唸っている。生きている・・・。
彼の右側にあるフロアドラムが斜めになっていて、それを支える4本の脚の1本が15センチくらい飛び出していた。
その直前、ジョルジュは両手を開いて、もの凄い力で太鼓を「ばんばんばんばんばん」と素手で叩いていたのだ。
エンディングの一番激しいところであった。
あまりに力強かったから、普通はきちんと締めてある脚のねじが緩んで、そのまま、ジョルジュの腕に直撃、ということのようだった。
しかも、場所が、手首の中心であった。
5分くらいして、苦しそうな顔で、痛い、とうめいた。金属の脚が手首に突き刺さったのが分かった。切れてはいないようだったが、内出血っぽかった。
練習はそこで終わり、ジョルジュはそのまま病院へ。
ぼくらは、どうしていいのか、わからなかった。

滞仏日記「すわ、ライブは中止か、と眠れない夜が二日続き、目の前真っ暗からの」



パーカッショニストの手首が折れていたら、それはどうなる?
とにかく、連絡を待つしかなかった。
昨日は様子をみた。
午後に、明日の練習は這ってでも行く、というメッセージがジョルジュから届いた。
あまり、皆さんを心配させられなかったので、昨日の日記には書かなかった。
そして、今日、ぼくは早めにスタジオに行き、ジョルジュを待った。
彼がやって来た。
「大丈夫か?」
「うん、レントゲンを撮った。骨は折れてなかったよ、神様に感謝だな」
「でも、叩けるの?」
おっと、手に包帯、というか、ギ、ギブスみたいなものがぁ!!!!
「運悪く、ドラムの脚の先端が、手首の神経にぶつかったんだってさ」
「神経!? わ、で、叩けるの? 左手だけでいいんだよ。無理しないで」
「サヴァ(大丈夫)、最高のライブにしてみせる。ムッシュ・ツジ、心配するな」
いや、しかし、痛々しい。

滞仏日記「すわ、ライブは中止か、と眠れない夜が二日続き、目の前真っ暗からの」



滞仏日記「すわ、ライブは中止か、と眠れない夜が二日続き、目の前真っ暗からの」

メンバーがやってきて、言葉すくなに、通常の練習がスタートした。
試し試し、最初は叩いているようだったが、次第に、ヒートアップしていった。
前みたいに、素手でドラムを叩くことが出来ない場面では、スティックを使っていた。怪我をしているとは分からないくらいの超・迫力であった。おお、叩けている。
「やっぱりね、あんたは這ってでも来ると思ったよ」
とマリオが笑いながら、言った。
ということで、一昨日何が起こったのかをここに書ける状態まで復帰したのだけれど、一瞬、またライブが中止か、と顔が青ざめた父ちゃんなのだった。
なにせ、オーチャードホールの一回目は、台風直撃で、前日に中止が決定。2回目と3回目はコロナで中止。そういう不運な男なのだ、ぼくちん・・・。
だから、逆に、何が起きても、驚きはしない覚悟は持って生きている。
でもな~、ここまで来てジュルジュ抜きは無理だし、代理がやって来て、叩くのも辛い。
今日、5時間のリハーサルを通したが、ぼくの方が疲れるくらいジョルジュはダイナミックであった。
ジョルジュはぼくよりもタフだ。さすが、ブラジル人!!!
「ムッシュ・ツジ、神様はいるんだよ」
「え、ああ」
「頑張っている人を裏切ることはないんだよ」
ひゃあ、熱血な言葉だ、父ちゃん、泣きそうになった。というか、涙もろいので、目元が濡れていたのであーる。

そこに、NHK「パリごはん」のディレクター、義和が到着~。
「おお、無事に着いたか?」
三四郎大好きなプロデューサーのSさんと二人一緒の登場であった。この二人は、ジョルジュにふりかかった火の粉の正体を知らない・・・。
安心をして、力が抜けた。今日はマジ疲れた。ああ、でも、よかった。
いよいよ、明日はゲネプロだ。
日本に仕事で行っていた(?)プロモーターのベルトランや、音響、照明さんなども全員集合だ。あ、「パリごはん」制作会社社長のLさん(懐かしい)もパリに初登場なのだった。番組七本目にして、初登場であーる!!!
これで、役者は揃った。
よっしゃ~。

滞仏日記「すわ、ライブは中止か、と眠れない夜が二日続き、目の前真っ暗からの」

※ 今日のスタジオごはんは、こちらでした!!!

滞仏日記「すわ、ライブは中止か、と眠れない夜が二日続き、目の前真っ暗からの」



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※ 「パリごはん」チームのお土産が美味しくて、現在、父ちゃんは睡魔に襲われながら、リラックスしています。クルミっ子と胡麻鼓、というお菓子、どっちもやばかった。ごっつあんです。日本は、うまい!!! 

熱血は、つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
いろいろあるでしょ? ステージが終わるまで何が起こるか、わかりませんが、どんなことがあっても、泰然と受け止め、自分の最高を目指しますね。今日は大きな手ごたえがあったリハーサルでした。明日は、ゲネプロです。1893年開業のオランピア劇場で、父ちゃんはエディット辻になりまーす。☜天然ちゃん。
さて、地球カレッジのサンジェルマン・デ・プレ界隈を散策するオンラインパリツアーもよろしくね。

地球カレッジ

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※ 皆さん、この写真とも、あと、3日でお別れですからね、いつもいつも、ごめんなさいでした。宣伝にお付き合いいただき。多謝。見納めですから、よーく眺めておいてくださいまし。えへ。



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