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退屈日記「外出制限が続くパリ市内はこんな感じなのだ」 Posted on 2020/03/20 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、外出制限であって、厳密に言えば外出禁止令は出ていない。日本の記事の中に「外出禁止令が出されたパリで」、とよくあるのだけど、実は禁止はされていないのだ。外出許可証(しかも自分で理由を書いたもの)を携帯していれば、外出できる。会社などに行かなければならない人はこれとは別に上司のサインの入った書類も必要になる。外出制限という言葉をぼくらは使うようにしている。正確に言うと、「confinement」とこちらでは呼ばれており、単純に訳すと「封じ込め」となる。

退屈日記「外出制限が続くパリ市内はこんな感じなのだ」

外出禁止令が出ているんですよね、大変ですね、家から出れないんでしょ、といろいろな人から心配のメールやラインが届くので、買い物に行くついでに、よく行くスーパー周辺の人々の様子をお届けしたいと思う。

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犬の散歩をする人は本当に多い。前にも書いたけど、みんな外に出たいものだから、やたら、犬がかりだされている。犬はきっと喜んでいる。

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自転車に乗って移動している人も多いのだけど、たぶん、仕事をしている人だと思う。メトロもバスも動いているのだけど、乗るのはちょっと怖いから。(ちなみに、バスはがんがん走ってるが、どのバスも人は乗ってない)自転車だと安全だから。この人、鼻歌歌いながら、両手離し、で運転中。



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生きて行かなきゃならないからね、みんな、食料は買いに出る。一時期買いだめで消えかかっていたパスタ類、トイレットペーパー、なども棚に戻った。政府がテレビで、十分あるよ、まじ、信用してね、と言ったからだと思う。本当に、ものはたくさんあるので安心。無いのは、マスクと消毒ジェルである。

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そういえば、警察のお回りさんにもあった。
「ボンジュール?」
「ボンジュール」
と笑顔を向けられた。
人によっては厳しく言われたり、何してんだ、と怒られたり、罰金(135~375ユーロ)もとられているという噂を聞いていたので、笑顔で手をふられた時は拍子抜けした。やっぱり、ぼくの日頃の行いがいいのに違いない。笑。実は、若者が多い地区でいまだに外出が多いようで、そこは厳しく取り締まられているようだ。ほんと、一丸にならないと知らないぞ!!!



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魚屋、肉屋、八百屋もあいてる。ここは魚屋さん。昨日はバルべス地区の市場が開いていて、テレビに映っていたので、びっくりした。まあ、さすがに今後は閉鎖であろう。

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黒いマスク、どこで手に入れたのだろう???

退屈日記「外出制限が続くパリ市内はこんな感じなのだ」

スーパーマーケットには人がいる。でも、やはり普段よりはうんとうんとすくない。ガラガラだけど、国の指導であけないわけにはいかないのだろう。みんな人と人の距離を保ちながら、買い物をしている。狭い店などは入場制限をしている店もある。レジ前には一メートル間隔でテープなどでしるしがつけられ、客同士が近づかないよう工夫されている。

このように、封じ込めの外出制限が出されているパリだけど、日常はたんたんと流れている。今日も快晴で、窓をあけると、犬の散歩をする人の姿が見える。もちろん、外出する人の数は通常の数十分の一程度だけど、ゴーストタウン状態ではない。けれども、この緩やかな外出制限も、来週あたりの感染者数、死者数の増加によっては、厳しさも変わってくるに違いない。春がはじまったパリだけど、いつものカフェや、いつものワイン屋や、この地区の仲間たちと、和気あいあいいつも通りの日常が再び送れる日が待ち遠しくてならない。ぼくも外出は二日に一度にしているし、一度の外出時間も30分以内と決めている。

退屈日記「外出制限が続くパリ市内はこんな感じなのだ」

スーパー出たところで大使館で働くカフェ仲間のリコ(大使の運転手をやってる。待機しているのだろうね)に会った。通りの反対側から写真を撮られた。「さすが、日本人、完璧だね」と笑われながら…。やれやれ。ワッツアップにこの写真が届いた。怪しい恰好しているけど、ぼくは毎回、着て出た服さえもシュシュっと消毒しているのだ。完璧である。

がんばろう、フランス!
がんばろう、ニッポン!

自分流×帝京大学