JINSEI STORIES
パリに戻ると次々お仕事、夜は友だちを招いてのアペロ、最後は定食で〆る Posted on 2025/02/13 辻 仁成 作家 パリ
某月某日、パリに戻ると、とたんに忙しくなる。しょうがない。
新刊本の宣伝のために、JWAVEのラジオ収録、そのあと、クウネル、ESSEのインタビューなど、2時間くらい、三四郎について、語らなければならなかった、父ちゃん。あはは。疲れたわ。むかないね。
車の定期健診もあり、ハイブリッドなのだけれど、電気系統の調子が悪いので、修理工場に出しに行き、へとへと。
その後、日本画家の釘町さんと密談、呑もちゃんが元気か、心配だったのでランチを食べに行くと、なんか、顔がむくんでいた。
「読者さんが寂しがっているから、変な顔してよ」
と頼んだら、こんな顔をしてくれた。
どう思います?
ちょっとパワーないですよね?
奥さんのますみさんに「大丈夫かな?」とメッセージをお送ったら、日本のバラエティ番組に取り上げられたようで、その映像が送られてきた。
ミシュランの星付きシェフについて、語る野本さん、「俺は星なんかいらない」と、豪語していたので、仕方なく、出た感、満載だった。
「えらいすんまへん」
釘町氏と食べた「うなぎ弁当」、あいかわらず、うまい。特に、個人的に、炭焼きの鰻弁当、好き。
美味しいな、と褒めてやったら、
「う、うなぎ、でっかい」
と意味不明の日本語が戻って来た。
「そうか、でっかいのか、だからうまいんだね」
「うなぎ、でっかい」
「わかったよ。でかいんだろ」
たぶん、推測するに、普段より大きなウナギが入っている、と言いたかったのだと思う。彼と話をするとき、かなりの想像力が必要になる。
なかなか日本語が上達しないが、ま、元気そうだった。
こういう会話しか、ない俺たちは、友人なんだろうか?
奥さんとは、どんな会話をしているんやろ、ま、どうでもええか。
でも、料理は最高。
夜は英国で活躍するバンドマンのエリックさん家族と事務所でアペロ(アペリティフ)とあいなった。
在仏歴23年、アペロというと頑張っておつまみを作ってきたが、そんなことするのは日本人だけだと最近気づいて、アペロはその辺で買ったものをさらっと出す方式に変えたのだった。
みんな、夕食前に集まり、ちょっとワイン呑んで、おつまみをつつく、という感じ。
19時集合したら、21時には解散となる。(子供がいると、そうなる)
エリックの奥さんと娘さんも来た。
ボンマルシェで買ったパイ生地のおつまみと、チーズ、あ、それから、「ばかうけ」と「ハッピーターン」があったので、それを出したら、ばかうけしていた。
音楽談義に花が咲き、いつか一緒にライブやろうぜ、ということで盛り上がった。
エリックは英国で20年間暮らし音楽活動をやってきたが、友だちが出来ず、パリに戻って来た、のだとか・・・。
20年も住んで友だちができないってことは、そういうことかなって思ったんだ、だって。すごくいいやつなのに、なんでだろう? 英仏海峡のせいだな。
でも、彼はパリにたくさん友だちがいる。ライブも満席!
「辻は?」
「ぼく?」
「なんで、パリにいるの?」
ぼくは、日本ではあまり友だちがいなかったかもしれない。
仕事関係の人ばかりだった。
かっこつけていたし、野心家だったし、まあまあ嫌われていたよ。
でも、パリに移り住んで、友だちがいっぱいできた。
なんでだろ?
何をもって友だちというか、人それぞれだと思うが、言葉があまり通じなくても、心が通じるフランス人はほんとうにたくさんいる。
日本だと変人だが、フランスはみんないい意味で変わり者ばかりだからか、こんなぼくでも、普通になっちゃう。マジで、目立たなくなる。笑。
だから、友だちが増え続けているのかもしれない。
絵の世界に入ってからも、トマや、ロランや、フローリアン、マリエル、アフィーダ・・・、一緒に夢を語り合う友だちが増えた。
今日、うちに遊びに来てくれたエリックも、2年前から、顔見知りで、時々、会って、お互いの音楽を交換していたんだけれど、ついに、今日、家族で、おしかけてきた。あはは。
実に、いい人たちだった。
落ち着いた。それ、大事だね。
今、ぼくが求めているものは、落ち着く人間関係かもしれない。仕事につながらなくても、人間がつながる関係だけ、を大事にしている。
とってもあったかい人たちで、あゝ、この人たちとの出会いは久々に大きい、と思った。
リサ、ロベルト、チャールズ、ミハ、マーシャル、アドリアン、ピエール、ジョルジュ、ベルトラン、マリオ、エリック、エリック、エリック(エリックが4人くらいいる!)、笑、両手じゃ数えきれないくらい、友だちが増えた、す、すごくない?
孤独の帝王だったのに!!!「アローン」が代表曲なのに!!!!
(*`艸´)ウシシシ
ってか、友だちってなに?
仕事に関係なく、お金に関係なく、よく会って、落ち込んでいる時にこそ、親身になってくれる人たち・・・。
落ち着く人たち・・・・。
損得関係ない、関係・・・。
エリックとクリステル夫妻は、ぼくの新しい友人になりました。
いつか、エリックとは一緒にステージに立ちたいなァ。
※ 三四郎がエリックになつきすぎ!!!!
上の生ハムのサンドは、いつもの父ちゃんのアペロ・定番スナックですね。ばかうけ、でした。あはは。
みんなが帰った後、父ちゃんはキッチンに立ち、玉ねぎの味噌汁を作り、サーモンを焼いて(バターレモン醤油味)、豆腐、ルッコラ、白ごはん、を食べたのであった。
野本の鰻弁当にはかなわなかったが、そりゃあ、美味しかった。
日々を丁寧に生きているからこその、こういう生活感ある食事が、身に染みるんだよね。
明日もまた、頑張ろうと思った、父ちゃんでありました。
明日の料理も、お楽しみに!
あ、これは、近くのケーキ屋さんで買ったデザート。みんなで食べようと思って買ったけれど、出すの忘れて、明日、スタッフさんらと分けましょうかね。
つづく。
今日も読んでくれてありがとうございます。
次のラジオは、15日です!