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GOTOキッチン「日曜日の遅い時間に、美味しいマドレーヌはいかが?」 Posted on 2020/08/02 辻 仁成 作家 パリ

日曜日の夕刻とか、夕食後とか、ちょっと寛いで、明日に備えたい時に、ぼくが食べたくなるのはマドレーヌである。マドレーヌは、日本のボーロだとフランス人に怒られそうなことを、渡仏直後に思ったことがあった。味も触感も違うのだけど、ぼくの母さんがよく作ってくれていたボーロも、小麦粉、砂糖、牛乳、卵を使ったポルトガル発祥の南蛮焼き菓子である。日本には16世紀に入っているので、もはや国民食だが、マドレーヌはもしかしたらボーロの影響を受けて生まれたお菓子かもしれない、だなんて詮索するのはやめておこう。こういうのは、諸説あるのだろうから、そのままがいい。でも、日本だとボーロの方が馴染みがある。ボーロをもっと柔らかくして、甘味、深みを出したのがマドレーヌだな、と若かったぼくは思っていた。今は、マドレーヌはマドレーヌで、比較することもないけれど、母さんにぼくのマドレーヌを生きているうちに食べさせるのが夢でもある。早く福岡に行きたい。ということで、今日はマドレーヌを一緒に作ってみましょう。

なんとなく、外出しにくい昨今、自宅時間を最大限生かして、、お菓子作りの腕を上げるいいチャンスだと思って、今日のGOTOキッチン楽しんでください。

いろんな意味で、キッチンは裏切らない!



焼き菓子のマドレーヌは大変有名だけど、このお菓子の由来というが驚くほど諸説あって、その辺を調べていくと、逆にこのお菓子はフランスの歴史の中から生まれたフランスを代表するお菓子であるということが分かってくる。

まず、マドレーヌの蘊蓄を。17世紀の貴族の館でマドレーヌという女性が客人を飽きさせないために作ったと言われている説のほかに、大食漢のスタニスラス王の料理人が喧嘩していなくなり召使のマドレーヌさんが王のために拵えたとされる説、マドレーヌという名の若い女の子が巡礼者のためにホタテの貝の殻を使って焼き菓子を作ったのが始まりという説などなど、面白い。ただ、共通するのは、ホタテ貝の殻を使って作られたのが最初であろうという点、そして、マドレーヌという女性の名前から由来している点だ。17世紀、18世紀あたりに出現したお菓子だけれど、きちんとしたレシピは19世紀まで待たないと拝めない。

GOTOキッチン「日曜日の遅い時間に、美味しいマドレーヌはいかが?」



そして、フランスを代表する作家マルセル・プルーストの代表作「失われた時を求めて」の中にも出てくる。「主人公がマドレーヌを紅茶に浸してから口に入れた瞬間、その味が幼い頃の思い出を鮮明に呼び起こした」というこの一節が、実はこのマドレーヌを世界的にさせたのである。

このような蘊蓄を語った後に、この焼き菓子を作って食べると、身も心も古き良きフランスに旅することが出来る。誰もがマドレーヌちゃんになったような気持ちになり、ホタテ貝の殻にマドレーヌの生地を流し込むことが出来る。王様や貴族の客人を喜ばせるようないたずら心で、微笑みながら作ってみたらよろしいのである。では、今日はマドレーヌを一緒に作ってみよう。なんと、わずか卵一個で、家族みんなが楽しめる9個のマドレーヌが作れてしまうのだから、素晴らしい。いざいざ。

プルーストのマドレーヌ、材料

卵 1個(50g)
バター 50g
砂糖 40g
小麦粉 40g
ベーキングパウダー 小さじ1
バニラ1/2本、または、バニラエッセンス 2滴

バターは電子レンジなどで溶かしておく。小麦粉とベーキングパウダーは一緒にふるっておく。
オーブンは190度に予熱しておく。ボウルに卵と砂糖、バニラビーンズを入れ、湯煎しながらよく混ぜ合わせる。そこにふるった粉類を加え、粉っぽさがなくなるまで混ぜる。最後に溶かしバターを加え、ゴムベラで生地に艶が出るまで混ぜる。ここで生地を冷蔵庫で30分ほど休ませる。生地を型に入れ、10分くらい焼いたら完成である。えへん。

GOTOキッチン「日曜日の遅い時間に、美味しいマドレーヌはいかが?」

GOTOキッチン「日曜日の遅い時間に、美味しいマドレーヌはいかが?」

GOTOキッチン「日曜日の遅い時間に、美味しいマドレーヌはいかが?」



急いでいて休ませる時間が少なくても十分美味しいが、マドレーヌの生地は一晩休ませるとより美味しくなる。翌日のおやつのため、寝る前に仕込んでおくのがおすすめなのだ。

作家マルセル・プルーストを気取って、紅茶に浸して食べてみるもよし、そこには、フランスの素朴な歴史の味と記憶が詰まっているのだ。さらば。

GOTOキッチン「日曜日の遅い時間に、美味しいマドレーヌはいかが?」

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