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退屈日記「新型コロナを怖がるあなたへ、ぼくが怖くない理由」 Posted on 2020/07/02 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、東京都の感染者数が107人になったということで、大騒ぎになっているようだが、怖くて外出もできないし、夜も眠れないという皆さんにちょっとだけ聞いてもらいたいことがある。ぼくはロックダウンの最中、「この世は終わったと思い、絶望した」のは事実だが、その後、しっかりとコロナについて勉強を重ねてきて、日本人にとって新型コロナはそこまで神経質になって日々を鬱々と暮らすべき病なのか、という結論に達した。エビデンスのない、思っただけの意見なので、信用しない方がいいけど、こういう考え方もあるのだと思って少しだけ、楽になってもらいたい。みんながぎゃあぎゃあ騒いでいる新型コロナ、アメリカで感染者が毎日4万人も出て、全世界での死者州数が50万人を超えまだまだ拡大中である、ということは恐ろしいことだけど、ぼくは新型コロナはインフルエンザとどれほど違うのか、と考え始めている。インフルエンザの死者数って2018年で3325人、2019年はまだ集計が終わってないみたいだけど、3000人を超えている。感染者数は1000万人、死者が3000人を超えていると書いたけど、これはまだ集計が終わってないので、もうちょっと伸びると思うし、関連死を含めると一万人と言われている。(あえて古いデータを出すけど、アメリカのインフルでの死亡は2014年で5万人、それ以降ももっと多い。あえて古いのを出したのはコロナが含まれていると言い張る人が出そうだから) さらに、交通事故による2019年の日本の死者数が3215人なのだ。で、まだ始まったばかりだけど、新型コロナによって亡くなられた人の数は今日現在だいたい974人となっている。(974人は胸の痛むとっても悲しい数字ではあるが)まだ半年あるので、今後3倍に伸びたとして、インフルエンザと交通事故と同じということになるのであれば、新型コロナばかりをここまで恐れているのはどうなのだろう? 



病気はインフルエンザだけじゃないので、もっと大勢の人がいろいろな病で、それこそ普通の風邪でも亡くなっている。交通事故でさえ年間3000人も亡くなっているのだ。だから気にするな、ということじゃないですよ、誤解ないように。新型コロナが世界の中心じゃなく、風邪やインフルエンザのように、注意を心掛けていればしっかりと抑制できる病だと思い直す機会になればいいと思って言っているのである。もちろん、疾患の無い人で犠牲者もでるのでそこは怖いけれど、がんやエイズでも、それは同じである。あらゆる病に同じようなリスクはある。正しく、普通に恐れることで十分じゃないか、と。そう考えると、この未知の病気だが、必要以上に恐れなくてもいい気がしてきた。



もちろん、リスクはあるけど、交通事故キャンペーンだって、もっとやった方がいいし、他の病気を置いてきぼりにしないでほしい、と思うし、インフルエンザとか風邪だって相手にしてやってほしい、とぼくは思うのだけど、コロナは恐れるべきだし、ここのところの東京の感染拡大は不気味だけれど、恐れ方が極端になっていないか、そのせいで先に心がやられてしまう人が増えることも恐ろしい。もちろん、世界的に猛威を振るう新型ウイルス、ブラジルあたりから飛び込んでくる恐ろしい映像を見ていると、他人事ではないのはよくわかるけど、海外在住のぼくからすると日本人の衛生観念は断トツで、みんな自己防衛をきちんとしていれば、している人に感染者が意味もなくめちゃくちゃな勢いで増えることはないだろう。やれるべきことをやったあとは、暗くなって部屋に閉じこもり続けないで、防備をした上でたまには公園とか海辺で美しい光景を見て過ごしてもらいたい。

ぼくは、コロナは怖くない。怖がるのはやめた。自分がやっている予防対策は完璧だと思っている。ぼくのような神経質な人間がコロナに罹るわけがないのだ。でも、昼カラにはいかない。なぜなら楽しくなって大騒ぎして、盛り上がり過ぎて、マスクとか外しだして歌い出しそうな、マイクを持ったら離さない性格なので…。自分の性格を知りつくすことこそ、一番の予防対策かもしれない。

退屈日記「新型コロナを怖がるあなたへ、ぼくが怖くない理由」

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