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滞仏日記「パリで夏のセールが始まった!」 Posted on 2019/06/27 辻 仁成 作家 パリ

 
某月某日、とにかく暑い。車の温度計を見たら、38度になっていた。でも、湿気がないので東京の38度よりはきつくない。こんな熱波で汗だくなパリだけれど、今日からパリでは夏のソルド(セール)が始まった。年に2回、パリでは大規模なソルドが行われる。夏は6月の最終の水曜日、朝8時から、となぜか決まっている。期間は6週間だ。フランス政府が決めた、らしい。なので一斉にどこの店でもセールがはじまる。パリジャン、パリジェンヌは正規料金の時は買わず、みんなこのソルドを待つ。世界中から買い物好きな人が集まるのでこの時期のデパートはどこも賑わっている。僕は大好きなグランマガザン(デパート)のボンマルシェに出かけることにした。

前日の火曜日に下見をしておいて、朝から並んでお目当ての品をゲットするというママ友がいる。僕はそこまでしないけど、やっぱりソルドが始まるとそわそわしてしまう。ソルド対象商品にはカラフルなシールが貼られているのでそれが目安となる。ボンマルシェの場合、黄色シールが30パーセント引き、緑が40パーセント、黒が50パーセント、だ。毎週、水曜日に新しい値引きが行われる。ちょっとずつ安くなっていく。3週目くらいになるとピンク色の60,紫の70パーセント引きも出てくる。もちろん、欲しいものが減っていくのだけど、70パーセント引き、と言われるとつい買ってしまうこともある。値引き率はロンドンの方がお得らしい。なんと、90パーセントというのもあるのだとか。(原価、いくらだったの?)

もうすぐはじまる映画の撮影用のスニーカーを探した。ブランドもののスニーカーというがずらっと並んでいるので好奇心にそそのかされて物色してみた。バレンティノとか、ジバンシーなどの超高級運動靴があって、10万円もした。それが半額になっていたのだけど、さすがに高い。試着しているのはブルジョアな感じのおじさんたちだった。残念なことに、なんとなく僕には似合わなかった。店員さんにいろいろと条件を伝えて探すのを手伝ってもらった。すると一足、とってもかわいいのを見つけた。ZESPAという聞いたことのないブランドの靴であった。
「これはエクス・オン・プロヴァンス(南フランス)のブランドで、まだ出来て10年という若さなのだけど、すごくデザインがいいでしょ? ボンマルシェで展開しはじめたのよ」
どの靴も、めっちゃかわいかった。南フランスのブランドというのもいい。これは革製品だし、夏の撮影用のスニーカーには適さない。でも、一目ぼれをした。4万円が半額だった。それでも高いけど、清水の舞台から飛び降りる覚悟で、思わず買ってしまった。やっぱり買い物は楽しい。日本に履いて帰ろうかな、と思った。
 

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