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滞仏日記「世界を変えたいと思う人の間違い」 Posted on 2019/07/05 辻 仁成 作家 パリ

 
某月某日、もし、世界を変えたいと思うのなら、まずは自分が変わる、ことが先である。世界は他人の集まりだから世界を変えたいという考え方だけでは世界は変わらない。まず他者と自分との関係を変えるためにも、まず自分自身が今までの自分を改める必要がある。僕はある時、他人に頼ることをやめた。結果として他人に頼るのは仕方がないことだけど、頭から他人に依存しているようではこの世界は変わらない。世界というのはそういうものだと思う。社会が悪いとか、世界が腐ってるとか、文句を言うのは、責任を他人に押し付けているようなもので、批判だけじゃ世界なんか変わらない。それじゃ、いつまでも何も変わらないだろう。そもそも、世界を変えたいというのは、他人を変えたいということだから、ひどい話だ。世界が絶滅を目指すのであればそれは世界が決めたこと。それが嫌ならばまず自分が変わるしかないということであろう。

「自分が変われば出会う人が変わる」という歌詞にはそういう決意が込められている。ものすごくシンプルな話で、自分のことは自分でする、ということだ。自分のことは自分ですると決めるだけでも、そうとうに生きることが楽になる。他人に期待をして僕はいい思いをしたことがない。期待が実らなかった時、他人を恨んでいる自分が嫌いだ。他人というのは自分じゃない。どの他人が人のことを自分のことのように親身になってやってくれるだろう。他人は他人だという考え方は冷たい考え方じゃない。生きることの厳しさをしっかりと持った大人の考え方だと思う。他人に頼んだ時点から、他人に隷属し苦しくなる。これが人生の鉄則である。何かを他人に期待し、ゆだねて、待った瞬間から、自分は他人に属してしまい、他人に振り回されることになる。なんで返事が来ないのだろう? なんで結果が出ないのだろう? とひたすら待つ側になっていく。それが他人に頼るということ。それをやめると人生は楽になる。ならば、自分でやろう、と思って動き出すことが大事だ。それだけで世界は変わる。そうだ、世界は変わる。

世界というのは、僕の都合とは関係のないルールで動いている他人の領域なのだ、と考えるといい。ならば自分でやらなければと思う時、その世界が自分の域と交わる。自分が考え方を変えて、頑張って物事に取り組みだせば、その周囲の世界が影響を受けて動き始める。他人に頼るのではなく、自分でやろうと決意するだけでも意識が変わる。自分の都合を他人に押し付けないことも大事かもしれない。他人に頼らない、と心の中で呟き続けるだけでも、自分の人生は整頓されていく。そうすると不思議なことに冷徹だった他人も変化し、ものごとに流れが生じ、関わり方がシンプルになる。結果、世界が変わったように見えてくる。何事も、まず、自分でやってみる。他人というのは、思わぬ時に助けてくれたりする。それは他人に期待をしない時にやってくる。助けてくれ助けてくれと頼んでばかりいる人には冷静なのが他人という世界なのである。
 

滞仏日記「世界を変えたいと思う人の間違い」