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滞仏日記 「いよいよクランクイン。辻組の熱い夏が始まった!」 Posted on 2019/07/09 辻 仁成 作家 パリ

 
某月某日、ついに映画「真夜中の子供」がクランクインをした。僕にとっては10本目の監督作品ということになる。まず、先週の金曜日に比叡神社のお祓い(東京)、その後のオールスタッフと呼ばれる最初の全体会議に集まった人数は50名前後、美術部、撮影部、装飾部、照明部、録音部、制作部、演出部、車両部、もろもろ、これに衣装部、メイク部、俳優部、俳優さんのマネージャーさんらが加わり、さらには映画撮影後には仕上げのチームが合流するので、この作品に関わる人は役者までカウントすれば80人とか、それ以上。結構な大所帯だと思う。多くのスタッフが福岡に入り、中洲周辺のホテルに分宿する。今回メインのカメラマンを勤めるのは日本アカデミー賞の蔦井孝洋カメラマン、僕とは初期作品「千年旅人」「ほとけ」「フィラメント「目下の恋人(TV映画)」などでタッグを組んだことがある。長い年月を経て久々の再タッグ。美術は種田洋平さんのところで経験を積んだ杉本君、装飾は蔦井さんと同様初期作品からの仲間、西尾さんという布陣。気が付けば技師さんに僕より年上はいない。だいたい50代、40代という感じか。そのアシスタントさんたちは30代、20代が混ざり合った、老若男女問わずの新辻組ということになる。小宮さん率いる録音部は前作「TOKYOデシベル」でご一緒した、このところの中核メンバー。演出部、制作部がかなり若いね。イキはいいけど、ベテランではない。まだ、その分エネルギーに溢れている。今作は俳優部も老若男女問わず幅広いキャストとなった。群像劇の要素が強いので少年と少女を囲むような恰好で名優さんたちがずらりと並んでいる。ともかく、今日、映画「真夜中の子供」が中洲でクランクインをした。僕にとっては生涯10本目の監督作品になる。秋編もあわせると、11月末までこの撮影は断続的に続くことになる。正直、言って。これだけ人間がいると、頭にくるような事件もしょっちゅう。人間というのはその人の数だけ、対応も受けごたえも、考え方も話し方まで違う。みんな口をそろえて「監督の想い」という言葉を使ってくるけれど、これも、言葉に過ぎない。ただ、怒鳴ってばかりもいられないし、ただ、にこにこばかりもしていられない。映画を作るのは人間であり、その力を一つにするために監督がいる、ということであろう。毎回、制作部を怒鳴っているけれど、がんばれ。知らないことは恥じゃない。僕だって、何も知らなかった。でも、知ったかぶりをするのはよくない。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥だよ。怒られるのは一時の我慢、怒られないと一生の損になる。
 

滞仏日記   「いよいよクランクイン。辻組の熱い夏が始まった!」

 

滞仏日記   「いよいよクランクイン。辻組の熱い夏が始まった!」

さて、今日一日を駆け足で振り返ってみよう。朝の6時に目覚め、台本を精査。10時より、櫛田神社にて参加できるスタッフのみで、日枝神社に引き続き、お祓い。その後、福岡のメディアの取材を受ける。各新聞社、テレビ局など十社ほどの囲み取材が行われる。昼食後、春吉地区に渡り、空撮の準備。ドローンを使って中洲の上空からの撮影。しかし、いい感じだったのに、ドローンの充電が足りず、あと一歩というところで、中断。う~む、悔しい。再び櫛田神社に戻り、山笠振興会の会長、豊田さんにご挨拶。山笠の応援なくして、この映画の成功はない。午後は主役の少年少女たちの演技指導、各種リハーサルなどを撮影地にセットを組んで行う。蓮司、緋真役の子役君たち、めきめきと存在感を高めている。子供は吸収が早い。美術、装飾も想像通りのいい出来栄えだ。その後、中州中心部に移動し、飾り山笠などの情景撮影。夜の19時に撮影がほぼ終了し、録音部、美術装飾部、演出部、制作部、記録さん、など総勢20名を引き連れて屋台を貸し切っての親睦会。屋台貸し切りだから、どんなに盛り上がっても、怒られることがない。21時、宿に戻り台本とにらめっこ。明日の撮影の予習、長い夜のはじまりである。
 

滞仏日記   「いよいよクランクイン。辻組の熱い夏が始まった!」