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滞仏日記「辻家のフランス飯」 Posted on 2019/09/15 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、ぼくは仕事場にいるよりもキッチンにいる時間の方が長い。行きつけの市場でフランスの食材を買い込んで朝昼晩と三食作っている。シングルファザーをはじめてからますますキッチンから出なくなった。料理をしている時間が好き過ぎて、いわばそこはぼくの逃げ場と化している。かつては息子のためにお弁当を毎朝作っていたが、その子ももう高校生、弁当箱は棚の奥深くに仕舞われてしまった。今は二人でキッチンに並んで立ち、父子で料理をすることもある。今日はここ最近、ぼくが拵えた辻家のフランス飯をずらりと並べてみる。最後にちょっとしたレシピもご紹介しよう。

今日は、リサとロベルト夫婦が我が家にやって来たので、豆ごはんと加茂茄子田楽の作り方を教えて一緒に食べた。リサが「信じられない」と大声を張り上げた。フランス人は茄子の食べ方を知っているようで実はあまり知らないのだ。加茂茄子に似た(たぶん、元は日本から入った茄子だと思う)みずみずしい茄子は市場で手に入る。でも、フランス人は田楽を知らない。二人の興奮した顔を日本の皆さんに見せたかった。

ともかく、辻家のキッチンで生まれる数々の料理をご招待しよう。

滞仏日記「辻家のフランス飯」

この時期は茸が美味い。ジロール茸とエシャロットを炒めてクリームのソースを作り、それを仔牛のエスカロップをポワレし、上からかけて食す。バターは使わない。バターを使うと全部バターに負けてしまうからだ。仔牛から出る肉汁だけで十分に濃厚な味わいとなる。

ノルマンディの海岸で早朝に拾ったアサリを砂抜きし、ニンニクとパセリでワイン蒸しにし、タリアテッレにからめた一品。白ワインとの相性が抜群である。

滞仏日記「辻家のフランス飯」

野菜がぼくは大好きだから、ラタトゥイユのカッペリーニ。コツは野菜を一つ一つ別々に手間がかかっても炒めること。時短が味を台無しにするので。ぼくは丁寧に丁寧に料理する。そうすることで野菜たちが生きるんだな。

滞仏日記「辻家のフランス飯」

行きつけのマルシェで手に入れる新鮮なイカをパセリと酒蒸しにした。ワイン蒸し、酒蒸し、どちらもよくやる。唐辛子が重要なアクセントになる。これを焼きたてのバケットで食べる。残ったソースにバケットを付けて、一滴も残さずに胃におさめるのがよい。

滞仏日記「辻家のフランス飯」

まだまだ残暑の厳しいパリだから、じとっと暑い時にはちょっとひんやりとしたパスタがいい。エビを蒸して冷蔵庫で冷やし、たっぷりのレモンとミントとあわせる。冷たいレモンクリームパスタは食欲がなくてもつるっと食べきれてしまう。

滞仏日記「辻家のフランス飯」

そして、リサとロベルトに教えたのは豆ごはんと茄子田楽だ。日本は豆の時期じゃないが、フランスは美味しいのが手に入る。田楽との相性も抜群である。簡単なレシピを紹介したい。(田楽の方は女性自身のウェブで好評連載中のムスコ飯で細かく作り方を解説する予定。来月くらいには・・・)

<茄子田楽>
材料:賀茂茄子、なければ米ナス1本、味噌大さじ1、酒大さじ1、みりん大さじ1、水大さじ1、砂糖小さじ2
作り方。フライパンを熱しサラダ油(大さじ1)をひき、3センチくらいの厚さに切ったナスを焼く。中火でじっくり火が通るように焼き、きれいな焼き色がついたら裏面も同じように焼く。小鍋に味噌ソースの材料を入れ、火にかける。沸騰させ、良く混ざったら火からはずしておく。焼けた茄子の上に味噌ソースをのせ、ネギとゴマをふりかけて完成。

<豆ご飯>
材料:米1合、もち米1合、えんどう豆100g、昆布5cmほど、塩小さじ1、酒小さじ1
作り方。米ともち米を洗い、ざるに上げておく。お鍋に水2カップ半と塩小さじ1を沸騰させ、えんどう豆を入れて5分茹でる。
茹で上がったら火を止め、昆布を投入し、そのまま冷ます。
えんどう豆の茹で汁が冷めたら炊飯器に米なるべく豆が壊れないよう、よく混ぜる。

美味しいぞ、ボナペティ!!!!!

滞仏日記「辻家のフランス飯」