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滞仏日記「家事と仕事のスーパー時間配分法」 Posted on 2019/10/25 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、子育てや家事をしながらどうやってあれだけの仕事をこなせるのですか、とよく質問される。ぼくはシングルファザーになってから今日まで約6年間、仕事と家事の両立だけはきっちりとやって来た。子育てをしながら仕事なんかできない、というのは間違えだ。仕事をしながら子育ては無理、というのも違う。もっといえば、ぼくは仕事(執筆、音楽、演出)をやりながら家事と子育てをこなしてきたし、このウェブサイトも4年目が過ぎたが毎日頑張っている(よね?)。つまり可能なのだ、と言いたい。じゃあ、その簡単なコツをお教えしよう。以下に尽きる。

1、 時間を相手にしない。
2、 時間は作るもの。
3、 時間配分の天才になる
4、 時間を手なずける。
大きく分けるとこの四つを心がけると家事と仕事の両立が可能となる。

時間を相手にしないというのは「時間がない、時間がない」と言わないことだ。時間がないと言ってる人は時間を相手にし過ぎることで自分を失い、犠牲にしている。ぼくはだいたい「時間がない」と大騒ぎしている人を信用しない。そういう人はすでに時間に負けている。時間というのは人間社会が作った人間を縛るための悪しき法則に過ぎない。そんなものに支配されていると一生損することになる。

時間は作るものである。時間がないというのはそもそも誰かが作った時間スケジュールの奴隷になっていることを指す。時間は作る、そうすればできないこともできてしまう。時間がないと言い訳をする前に、ちょっと待って時間作るね、に変えるべき。そう心がけていると時間はどんどん生産されていく。実際、ぼくは必ず時間を作ってやり遂げてきた。人の何倍も生きて楽しむためには同じ時間軸で生きていてもダメだということ。時間を生産していけば人生は何倍も面白くなる。

家事と子育てと仕事をいっぺんにやっつけるためには時間配分の天才になるしかない。無駄を作らないことだ。確かに、無駄がものを生み出すこともあるので、無駄を作る時は頭から無駄を利用すると思って作りだせ。本当の無駄はただの無駄なのでそれはやらない。意味のある無駄だけを心がける。ともかく、無駄のない時間配分を瞬時に組み立てられるようになれば、一日は面白いくらいに回転しはじめる。スケジュール帳など必要ない。朝起きたら瞬時に頭の中に時刻表ができるくらいの配分の天才を目指すのがいい。コツは一つ終わってから次に進むのじゃなく、同時進行で一気にやっつけることだ。歯磨きをしながら新聞を読む、みたいなことである。歯磨きだけだと30秒しか貰えないけれど、新聞を読んでいる時間に歯を磨けば5分も磨ける。ついでに新聞も熟読できる。そのおかげでぼくはこの歳でも失った歯は一本しかない。ラッキー!

時間という概念が人間を固定、固着させるので、まずこれを取っ払う。時間なんてないのだ、と新しい発想に立つ。一日とか午前中とかで物事を区切るからその前後が圧迫されてしまうのだ。そういう枠組みは取り払い、無限の中で仕事も子育てもしていけばいい、と思うようにする。朝の4時に掃除をしたって全然かまわない、と発想を変えることができれば、一日は解放される。赤ちゃんには時間がないから、お腹がすいたら真夜中にだって泣き出す。生まれたばかりの赤ん坊は無限の中にいる。赤ん坊に戻ること、すなわち、概念を捨てること。そうすれば、あらゆる仕事に湯水のように時間を注ぎ込むことができるだけじゃなく、その合間を縫って、または同時間に、家事も子育ても十分にたいらげることができるのだ。煮込み料理をしながら、エッセイを一本書くことなんて、赤子の手をひねるようなものか。普通に生きているとそうもいかないんだよ、と嘆く前に、その普通という概念を変えてしまう。どうしても動かせない人間社会の時間をうまく自分のペースに当てはめることで時間配分の天才になる。ぼくは仕事と家事を両立させているだけじゃない。日仏の時間差も乗り越えてその二つを成立させてきた。可能なのだ。可能だと思えば可能になる。子育てや家事から逃げたら、自分の仕事も駄目になるとぼくは思っている。

時間が無い、は言い訳に過ぎない。時間は必ず作る、と自分に言い聞かせることからはじめてみよう。締め切りを守るコツは、依頼を受けた日にやっつけてしまえばいいだけのことなのだ。これから、dancyu、書きます。はい、頑張ります。笑。

滞仏日記「家事と仕事のスーパー時間配分法」